内藤陽介 Yosuke NAITO
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World Wide Weblog
 世界の国々:ホンジュラス
2015-11-26 Thu 10:26
 アシェット・コレクションズ・ジャパンの週刊『世界の切手コレクション』2015年11月25日号が先週刊行されました。僕が担当したメイン特集「世界の国々」のコーナーは、今回はホンジュラスの特集です。その記事の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      ホンジュラス・国家団結の年(狙撃兵)

 これは、1972年に発行された“国家団結の年”の切手のうち、“祖国防衛”の文言とマシンガンを撃つホンジュラス兵が描かれています。切手状には1970年の文字がありますが、これは、この切手が発行された背景としての“サッカー戦争”の起きた年です。

 ホンジュラスと隣国エルサルヴァドルとの間には、建国以来、さまざまな対立要因がありました。

 まず、両国の国境は河川を起点としていたため、乾季と雨季では地形が変動し、そのことが境界線の画定を困難にしていたという事情があります。

 また、エルサルヴァドルに比べると人口が少なく、6倍の国土面積を有するホンジュラスは、歴史的にエルサルヴァドルからの移民を数多く受け入れてきましたが、1960年代に入ると、ホンジュラス国内の人口増加やバナナ農園の近代化・機械化に伴う労働需要の激減、牧畜や綿花農園の拡大による農地不足が問題となり、移民の制限を求める声が国内でも高まっていました。

 その反面、当時のエルサルヴァドルはホンジュラスに比べて工業化が進んでおり、ホンジュラスの国内市場はエルサルヴァドル製品が席捲していることに不満をもつホンジュラス国民も少なくありませんでした。

 こうした諸問題を解決する手段として、ホンジュラス政府は1969年4月に農業改革法を実施し、エルサルヴァドル移民の強制退去に踏み切ります。

 こうして両国の国民が互いに相手国への不満と反感を募らせていく中で、1969年6月、1970年のサッカーW杯の予選として、ホンジュラスとエルサルヴァドルの試合が行われます。

 第1戦はホンジュラスが、第2戦はエルサルヴァドルが勝ち、1勝1敗のタイで第3戦のプレーオフが行われることになりましたが、第2戦の後、ホンジュラス在住のエルサルヴェドル移民が襲撃を受けたことから、約1万2000人の移民がエルサルヴァドル領内に避難。激昂したエルサルヴァドル国民の間でホンジュラスとの国交断絶を求める声が高まり、エルサルヴァドル政府は6月23日に国家非常事態宣言を発し、国交を断絶しました。これを受けて、ホンジュラス政府も同27日、エルサルヴァドルとの国交を断絶します。

 緊張が高まる中で、7月14日、エルサルヴェドル空軍がホンジュラスの首都テグシガルパ郊外のトンコンティン国際空港をはじめ、飛行場と軍事施設を攻撃し、両国は交戦状態に突入しました。これが、いわゆる“サッカー戦争”です。

 戦闘は7月18日、米州機構の調停により停戦合意が成立し、8月3日までにエルサルヴァドル軍はホンジュラス領内から撤退。これを機に、ホンジュラスでは国民の間の国防意識が高まり、ナショナリズムを強調する観点から、今回ご紹介の切手も発行されたというわけです。

 ちなみに、戦争の発端となったサッカーの試合は、エルサルヴァドルが第3戦で勝利を収め、1970年のW杯にも出場を果たしています。

 さて、 『世界の切手コレクション』11月25日号の「世界の国々」では、ホンジュラスの世界遺産として有名なコパン遺跡やジェフロイクモザル、ハリケーン・ミッチの被災現場、マリンバ、清子内親王ご訪問の切手などもご紹介しています。機会がありましたら、ぜひ、書店などで実物を手に取ってご覧ください。

 なお、今週発売の12月2日号では「世界の国々」はモザンビ-クの特集で、僕が原稿を書いていますが、こちらについては、来週以降、このブログでもご紹介する予定です。


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 ホンジュラスでクーデター
2009-06-29 Mon 21:52
 きのう(28日)、中米のホンジュラスで軍がセラヤ大統領を拘束し、国外に追放するクーデターが発生しました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ホンジュラス・大統領官邸

 これは、1927年にホンジュラスで発行された6センタボ切手で、大統領官邸が取り上げられています。1929年、印刷所から目打が施される前のこの切手のシートが大量に盗まれる事件が起こり、犯人グループはその一部にミシンで私製目打を施して売りさばいています。今回ご紹介のマテリアルも、その過程で1列分の目打を漏らしたものなのかもしれません。なお、盗まれた切手が使われるのを防ぐため、ホンジュラス当局は1929年10月以降、郵便局の窓口から正規に発売したモノには“1929 a 1930”と加刷しています。

 さて、切手に取り上げられた大統領官邸を追われたセラヤ(前)大統領ですが、2006年1月の大統領就任時は中道右派の立場を取っていましたが、その後、急速に左旋回。ベネズエラやキューバなどとともに、中南米の反米左派陣営の一角を担っていました。このため、大統領の“変節”に対してはホンジュラス国内でも批判の声が強く、一部で軍によるクーデター待望論もあったようです。

 特に、今年3月、セラヤ大統領が、大統領の再選を禁止している憲法を改正して長期政権を目指す意向を明らかにすると、反大統領派は一斉に反発。最高裁も大統領の求める憲法改正のための国民投票は違憲であるとの判断を下していましたが、大統領側は、あくまでも6月28日に国民投票を行うと主張。直前の24日には改憲反対派の軍参謀長を解任するなど、緊張状態が続いていました。

 今回のクーデターは、こうした状況の中で、何としてでも国民投票を阻止すべく、軍が大統領を追放したという構図になっているわけですが、現時点では、アメリカはクーデターを非難するとともに、追放されたセラヤ大統領の即時無条件復帰を求める決議を採択し、クーデターによって誕生した新政権の正統性を否定する立場を取っています。もっとも、セラヤ政権は合法政権とはいえ、アメリカも本音では、“裏庭”である中南米の反米左翼政権が一つでも崩壊することは好ましいと思っているのは言うまでもありません。まぁ、アメリカにしてみれば、セラヤが最高裁の判断を無視して国民投票を強行し、反発した国民によって“民主的に”セラヤが政権から引きずりおろされる(ないしは11月の選挙で落選する)というのがベスト・シナリオだったのでしょうから、今回のクーデターに対しては「早まったことをしやがって」と苦り切っているというところですかな。


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 ご結婚おめでとうございます!
2005-11-15 Tue 15:29
 今日はいよいよ、紀宮内親王殿下のご結婚の日です。一人の日本人として、純粋に殿下のご結婚を寿ぎ、お2人のお幸せをお祈りしたいと思います。

 というわけで、今日は難しい理屈は抜きにして、この切手をご紹介しましょう。

ホンジュラス

 この切手は、今年(2005年)の8月、ホンジュラスが日本との外交関係樹立70年を記念して発行したセットの1枚で、同時に発行されたものの中には、小泉首相の所信表明演説ですっかり有名になった「米百俵」の演劇も取り上げられています。

 ホンジュラスがこの切手を発行したとき、一部のマスコミでは、ジャパン・マネーを狙った外貨稼ぎの“いかがわしい切手”の類であるかのような報道がなされました。たしかに、ホンジュラス側に、この切手を内親王殿下のご結婚にあわせて日本人に買ってもらおうという意図が全くなかったといえば嘘になるでしょう。

 しかし、殿下は2003年にホンジュラスをご訪問されており、両国の友好親善に功績を残された方です。純粋に両国の友好親善のシンボルとして、ホンジュラス側が殿下の肖像を切手に取り上げたいと考えても、それは自然な発想のように思われます。ちなみに、「米百俵」は、現地の日本大使からこの物語のことを聞いたホンジュラスの大統領がいたく感激し、大統領の肝いりで同国でスペイン語版の劇が上演され、ホンジュラスをご訪問になった殿下ご本人も現地でこの芝居を鑑賞されており、やはり、両国の友好親善の象徴として切手に取り上げられたというわけです。

 なお、2003年、殿下はホンジュラスとあわせてウルグアイも訪問されていますが、この辺の事情については、8月25日の記事 をご参照いただけると幸いです。

 10月に刊行した拙著『皇室切手 』では、制作期間中には、今日のブログでご紹介しているホンジュラスの切手は実物の手配が間に合わず、泣く泣く、報道資料のカラーコピーを図版として利用しましたが、今日は、実物からの画像をお見せします。拙著を補うものとしてご覧いただけると幸いです。
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