内藤陽介 Yosuke NAITO
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 佐藤琢磨、インディ500で優勝
2017-05-29 Mon 10:36
 モナコグランプリ、ル・マン24時間レースとともに世界三大レースの一つとされる米国の第101回インディアナポリス500マイル(以下、インディ500)の決勝が、現地時間28日午後(日本時間29日未明)、米インディアナポリスのインディアナポリス・モータースピードウエーで行われ、元F1ドライバーの佐藤琢磨が日本人として初優勝を果たしました。というわけで、今日はこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      米・インディ500

 これは、2011年5月20日に米国で発行された“インディ500・100周年”の記念切手で、1911年の第1回の優勝者、レイ・ハルーンが、黄色と黒のマーモン“ワスプ”(優勝マシン)で疾走する場面が描かれています。

 インディ500の決勝レースは、毎年、米国のメモリアル・デイ(5月の最終月曜日)の前日の日曜日、インディアナ州のインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)のオーバルトラック(500マイル:804.672km)で行われます。IMSは世界で初めて“スピードウェイ”の名を冠したサーキットで、当初のコースはアスファルト舗装ではなく、レンガが敷かれていたため“ブリック・ヤード”と呼ばれていました。その名残は現在でも残されており、スタートラインには1ヤード(0.9144m)だけ、特殊加工されたレンガが敷かれています。

 また、第1回のインディ500が行われた1911年当時は、ドライバーに加えて、メカニックがマシンに同乗し、走行中の故障やパンクの修理、後方や側方のマシンの動向を監視等を行っていましたが、ルイ・ハルーンはメカニックを乗せずに一人で運転していました。このため、他のドライバーから周囲が確認できないのは危険であると指摘され、バックミラーをつけて対応。これが、レーシングカーにバックミラーが付けられた最初の事例で、フィル・ジョーダンのデザインした切手にもそうした特徴がしっかりと描かれています。

 ちなみに、日本人ドライバーがインディ500で優勝したのは今回の佐藤琢磨が最初ですが、エンジンサプライヤー(エンジン製造者)としては、トヨタ(2003年)とホンダ(2004年-2012年、2014年、2016年-2017年)が、それぞれ優勝を記録しています。


 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史” 次回 は1日! ★★★ 

 6月1日(木)16:05~  NHKラジオ第1放送で、内藤が出演する「切手でひも解く世界の歴史」の第3回目が放送予定です。今回は、5月26-27日にG7サミットが行われたシチリアにスポットを当ててお話をする予定です。みなさま、よろしくお願いします。なお、番組の詳細はこちらをご覧ください。

 ★★★ 内藤陽介 『朝鮮戦争』(えにし書房) 重版出来! ★★★ 

      朝鮮戦争表紙(実物からスキャン) 本体2000円+税

 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。

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 米新大統領にトランプ氏
2016-11-10 Thu 18:35
 米国の大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプ候補が民主党のヒラリー・クリントン候補を破って当選を果たしました。というわけで、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      米・トランプ当選記念カバー

 これは、きのう(9日)のトランプ勝利を受けて、クリントンをノックアウトするトランプのイラストが描かれた封筒に、切手を貼って消印を押した記念品です。消印は11月9日付のモンタナ州ドラのモノですが、モンタナ州でのトランプの勝利が確定したのが現地時間の8日20時、主要メディアがトランプ当確を報じたのが同9日0時頃ですから、朝一番で郵便局に行って消印を押して作って、販売サイトに出品したのでしょう。仕事が早いですな。 

 さて、今回のトランプの勝利については、さまざまな要因が挙げられますが、米国の言論空間ではあまりにもリベラルが強く、そのあまりにも極端な主張(たとえば、議長を“チェアマン”と呼ぶのは男女差別なので“チェアパーソン”と呼ばねばならない、“メリー・クリスマス”は非キリスト教徒に配慮して“ハッピー・ホリデー”と言い換えなければならない、など)に対して、善男善女が彼らの“常識”に照らして疑義を呈することさえ、“差別”として糾弾されかねないという現状に対する不満があったことは間違いないでしょう。

 たとえば、今回の選挙戦を通じて、トランプに対しては、移民排斥の差別論者という非難がしきりに浴びせられましたが、トランプの移民政策の主張を冷静に検証してみると、彼が「すべての移民を排斥しろ」と主張したことはなく、あくまでも、「不法移民がいけない」としか主張していません。

 そもそも、移民を受け入れるには、犯罪者やテロリストが紛れ込まないように、きちんとチェックする体制がなければならないし、仮に真面目な働き者であっても、不法な手段で入国するのは、法律に則って移民しようとする人々に対してアンフェアである。不法移民をコントロールできないということは国境を守れないということであり、自国の国境を守れないということは国家としての最低限の要件を満たしていない。また、不法移民を黙認し続けてきた結果、(不当・不法で)安価な労働力が流入し、一般の米国市民の賃金を低下させ、失業率を上昇させた。したがって、米国民のために、きちんと機能する移民制度が必要なのだ・・・

 移民問題についてのトランプの主張を要約すると、上記のようになります。

 じっさい、メキシコを中心としたラテン・アメリカからの不法移民・不法滞在者は、現在、米国内に3000万人以上いると推定されており、それに伴い、犯罪者やテロリストの数も急増して刑務所は常に満杯状態です。さらに、不法滞在者であっても、人道上の理由から、病院で無償の診療を受けることができるほか、その子供は教育を受ける権利が与えられ、自治体によっては自動車の運転免許を取得することができます。そして、彼らの社会保障に対して莫大な額の税金が投入され、そのことが、フツーに働いてフツーに税金を納めている善男善女の不満となっていますが、米国内でそうした不満を口にすると“差別主義者”とのレッテルを貼られるのが実情です。また、経済界も、安価な労働力としての不法移民・不法滞在者を重宝しているので、実際には、不法移民の問題については見て見ぬふりをし続けており、既存の政治家の多くも票田を失うことを恐れて、この問題をタブー視してきました。

 じっさい、そうした既存の体制に乗っかった“エスタブリッシュメント”の象徴ともいうべきクリントンは、選挙期間中、シリアからの難民の受け入れを550%増やすと主張していましたが、ここの難民の入国の適格性を審査する方法については一言も触れていません。

 こうした背景があるがゆえに、リベラル色の強い大手メディアや“知識人”がトランプの移民政策を“人種差別”と糾弾すればするほど、現実の社会の中で生活している善男善女の反発が鬱積し、そのことがトランプの勝利につながったという構図がつくられることになりました。

 いずれにせよ、今回のトランプの勝利は、英国のEU離脱に続き、第二次大戦後の西側世界の言論空間を覆っていた“(エリートの)リベラル”に対して、善男善女の“常識”がNOを突きつけたという面は確実にあるわけで、世界史的な文脈では、来年のフランス大統領選挙とセットで考える必要があるかもしれません。

 なお、今回の記事の制作にあたっては、江崎道朗先生の『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』を参考にしましたが、同書については、チャンネルくららの番組で僕もゲストで読んでいただき、じっくりご紹介したことがありますので、よろしかったら、こちらをクリックして動画をご覧いただけると幸いです。


★★★ 講座のご案内 ★★★

 11月17日(木) 10:30-12:00 
 毎日文化センターにて、1日講座、ユダヤとアメリカをやりますので、よろしくお願いします。(詳細は講座名をクリックしてご覧ください) 
  

★★★ ブラジル大使館推薦! 内藤陽介の『リオデジャネイロ歴史紀行』  ★★★ 

       リオデジャネイロ歴史紀行(書影) 2700円+税

 【出版元より】
 オリンピック開催地の意外な深さをじっくり紹介
 リオデジャネイロの複雑な歴史や街並みを、切手や葉書、写真等でわかりやすく解説。
 美しい景色とウンチク満載の異色の歴史紀行!
 発売元の特設サイトはこちらです。

 * 8月6日付『東京新聞』「この人」欄で、内藤が『リオデジャネイロ歴史紀行』の著者として取り上げられました!

       リオデジャネイロ歴史紀行(東京新聞)


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 無事帰国しました。
2016-06-06 Mon 19:22
      ニューヨーク展・APSメンバーと

 さきほど、本日(6日)夕方、無事、ニューヨークから帰国いたしました。現地では、世界切手展<NEW YORK 2016>日本コミッショナーの吉田敬さん、アシスタント・コミッショナーの池田健三郎さん、菊地恵実さん、出品者の井上和幸さん、斉藤環さん、田村邦彦さん、長谷川純さんをはじめ、多くの方々にいろいろとお世話になりました。お世話になった全ての方々に、この場をお借りして、あらためてお礼申し上げます。

 冒頭の写真(以下、記事中の画像はすべてクリックで拡大されます)は、一般社団法人・全日本郵趣連合理事の井上和幸さん(右から2人目)、斎藤環さん(写真撮影に回っていただいたため、残念ながら写真には写っていません)と3人で、切手展実行委員長のウェイド・サーディ氏(中央)、スティーヴン・ロッド氏(左から2人目)らとの会談後に撮影したものです。今回の現地での会談は、今後の郵趣界にも大きな影響を及ぼす内容となり、大変に実りのあるものとなりました。その具体的な成果につきましては、数ヶ月以内には公表できると思いますので、どうぞご期待ください。

 さて、現地では、今回の切手展を記念して会期初日(5月28日)に発行された切手のシートを買ってきました。(下の画像)

       米・ニューヨーク展シート

 切手のデザインは、19世紀の切手や紙幣に用いられていたクラシックな彩紋のパターンを再現したもので、裏面には、赤と青の組み合わせの例として、こんな図も印刷されていました。

        米・ニューヨーク展シート裏面

 切手や紙幣などに用いられる彩紋の印刷には、歯車を組み合わせて複雑な幾何学模様の原版彫刻を行う“彩紋彫刻機”が不可欠ですが、この機械は、19世紀初頭に発明されました。切手のデザインとしては、1843年にブラジルで発行された“牛の目”の切手が、その特徴を活かした名品として有名です。

 彩紋彫刻機のルーツについては、1810年にスイス生まれのヤーコブ・デーゲンが発明した“guillochiermaschine”とする説と、1812年に米国で特許を取得したエイサ・スペンサーの“geometrical lathe”とする説があります。両者の接点やその発明内容の異同については良くわかっていませんが、どちらももともとは時計職人で、時計の文字盤などに装飾模様を彫刻する“ローズ・エンジン”に改良を加えて紙幣の原版彫刻に応用し、偽造防止に役立てるという点では共通しています。

 さて、この発明に即座に目をつけたのが、後に、世界最初の切手ペニーブラックの製造に深くかかわってくるジェイコブ・パーキンスでした。

 パーキンスは、1766年、北米マサテューセッツのニューベリーポート生まれ。10代の頃は鍛冶職人として修業を積んでいましたが、その腕を見込まれて21歳の時にマサテューセッツ造幣局に雇われ、コインの原版彫刻を担当します。

 その後、爪切りから大砲の製造までさまざまな機械製作に携わっていましたが、凹版彫刻用の鋼材を開発したのを機に、彫刻家のギデオン・フェアマンと共に印刷所を創業し、1809年、学校の教科書の印刷を始めました。

 フェアマンが原版を彫刻した挿絵の教科書は、当時としては画期的なもので大いに評判となったことから、パーキンスは印刷事業に本腰を入れるようになります。その一環として、パーキンスは、スペンサーから彩紋彫刻の特許を買い取っただけでなく、スペンサー本人を雇い入れて、彩文彫刻を施した紙幣の製造に着手しました。

 一方、当時の英国では偽造紙幣の横行が深刻な社会問題となっており、英国政府は、1819年、賞金2万ドルを掲げて“偽造不可能な紙幣”を公募します。

 この機会をとらえて、パーキンス、フェアマン、スペンサーの3人は渡英し、ロンドンのオースティン・フライヤーに彫刻凹版印刷にも対応可能な印刷所、パーキンス・アンド・フェアマン社のオフィスを構え、王立協会会長のジョゼフ・バンクス卿をはじめ、関係各方面に自分たちの試作品を売り込み、高い評価を得たのです。

 ところが、パーキンスらの試作品は、品質面では文句なく他を圧倒していたにもかかわらず、ジョゼフ・バンクス卿は、“偽造不可能な紙幣”を作るのはイングランドの出身でなければならないと頑なに主張しており、そのままでは、“外国人”であるパーキンスらが紙幣製造を受注するのは困難でした。

 そこで、パーキンスは、当時、英国を代表する凹版彫刻家であり、出版業者でもあったチャールズ・ヒースを共同経営者として迎え入れ、1819年12月、フリート・ストリートにパーキンス・フェアマン・アンド・ヒース社を開業しましたが、ほどなくしてフェアマンがパーキンスらと袂を分かったため、パーキンス・アンド・フェアマン社として“偽造不可能な紙幣”を製造することになります。

 ここに、1823年、彫刻家のヘンリー・ペッチが入社。さらに、1829年5月、パーキンスの二女と結婚したジョシュア・バタース・ベーコンが共同経営者となったことで、彼らの印刷所はパーキンス・ベーコン社に社名を変更。1834年にはペッチも共同経営者に名を連ねるようになったことで、後に、ペニー・ブラックの印刷を請け負うことになる“パーキンス・ベーコン・アンド・ペッチ社”が誕生しました。

 その意味では、米国人こそがペニー・ブラックを作ったとも言いうるわけで、今回の切手に、19世紀米国の彩紋のデザインが取り上げられたというのも故なきことではないわけです。

 なお、このあたりの事情については、拙著『英国郵便史 ペニー・ブラック物語』でもまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

 
 ★★★ アジア国際切手展<CHINA 2016>作品募集中! ★★★

 本年(2016年)12月2-6日、中華人民共和国広西チワン族自治区南寧市の南寧国際会展中心において、アジア国際切手展<CHINA 2016>(以下、南寧展)が開催されます。同展の日本コミッショナーは、不詳・内藤がお引き受けすることになりました。

 現在、出品作品を6月12日(必着)で募集しておりますので、ご興味がおありの方は、ぜひ、こちらをご覧ください。ふるってのご応募を、待ちしております。

 ★★★ 内藤陽介の新刊  『ペニー・ブラック物語』 のご案内 ★★★ 

       ペニーブラック表紙 2350円+税

 【出版元より】
 若く美しい女王の横顔に恋しよう!
 世界最初の切手
 欲しくないですか/知りたくないですか

 世界最初の切手“ペニー・ブラック”…名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという収集家も多いはず。本書はペニー・ブラックとその背景にある歴史物語を豊富なビジュアル図版でわかりやすく解説。これからペニー・ブラックを手に入れたい人向けに、入手のポイントなどを説明した収集ガイドもついた充実の内容です。

 発売元の特設サイトはこちら。ページのサンプルもご覧いただけます。


 ★★★ 内藤陽介の新刊  『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 

       アウシュヴィッツの手紙・表紙 2000円+税

 【出版元より】
 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。

 出版元のサイトはこちら。各書店へのリンクもあります。

 インターネット放送「チャンネルくらら」にて、本書の内容をご紹介しております。よろしかったら、こちらをクリックしたご覧ください。


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 敏腕の元五輪委員長、敗れる
2012-11-07 Wed 18:37
 アメリカの大統領選挙は、現職のバラク・オバマ候補が共和党のミット・ロムニー候補を下して再選を決めました。というわけで、フツーだったらオバマがらみのマテリアルをもってくるべきなんでしょうが、『大統領になりそこなった男たち』の著者としては、ロムニーのほうを取りあげるのが筋でしょうから、こんなモノをもってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

         ソルトレイクシティ五輪

 これは、2002年のソルトレイクシティ五輪に際してアメリカが発行した記念切手です。

 ユタ州の州都、ソルトレイクシティは、1932年、1972年、1992年、1998年の冬季五輪大会を招致しようとしたものの、いずれも失敗。このため、2002年の大会招致には背水の陣で臨み、1995年に行われたIOC総会で開催を勝ち取りました。

 ところが、開催の決定後、ソルトレイクシティ招致委員会による大規模なIOC委員への買収疑惑が発覚。さらに、予算超過による巨額の運営赤字が見込まれたこともあって、五輪の開催が危ぶまれる事態となりました。

 こうした状況の中で、1999年、五輪組織委員会の会長に就任したのが、今回の共和党大統領候補、ミット・ロムニーでした。

 ロムニーは、1947年、デトロイト生まれ。父親は、後にミシガン州知事となるジョージ・ロムニーです。

 スタンフォード大学に進学後、2年間休学し、フランスで末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)の宣教師として活動。帰国後の1971年、ユタ州のブリガムヤング大学を最優等で卒業し、ハーヴァード大学のビジネス・スクール・ロー・スクールでMBA・法務博士(J.D.)号を取得しました。卒業後は、ビジネス・コンサルタントとしての活動を開始。1984年に共同経営者として設立したベインキャピタル社を世界有数のファンドに育て上げています。

 本格的な政治活動は、1994年、共和党からマサチューセッツ州選挙区の上院議員選に立候補したのが最初ですが、このときは、エドワード・ケネディに敗れて落選。その後、企業経営者としての実績とモルモン教徒であることを買われて、1999年にソルトレイクシティ五輪の組織委員会会長に就任し、運営を立て直し、大会を成功に導きました。この結果、経営再建におけるロムニーの手腕に対する評価はゆるぎないものとなり、その知名度も一挙に全米に浸透。五輪終了後の2002年11月に行われたマサチューセッツ州の知事選で当選を果たしました。

 マサチューセッツ州知事としてのロムニーは、州の予算を大幅に削減して財政均衡を実現したほか、法人税を下げることでカリフォルニア州などからのハイテク関連企業の誘致を推進しました。これだけ見ると、単純なコストカッターの財政再建至上主義者のようにも見えますが、州内の全児童に100ドルパソコンを無料配布する法案の提出や、全米で初めて事実上の皆保険制度を州内で導入するなど、彼の政策には、必要な支出は躊躇せずに行うという面があったことは記憶しておいてよいでしょう。

 大統領選挙に関しては、前回(2008年)は、共和党候補の指名をマケインと争って敗れましたが、今回は指名を獲得。現職のオバマに挑みましたが、接戦の末、敗れました。

 なお、現時点では、ロムニーを取り上げたアメリカ切手は発行されていないのですが、いまから何年か後に、ソルトレイクシティ五輪の立役者にしてマサチューセッツ州の名知事として、彼の切手が発行されるようなことがあるかもしれません。そのときには僕も『大統領になりそこなった男たち』の続編を作って、ロムニーについても1章を設けてみたいものです。


 ★★★ イベントのご案内 ★★★

 ・11月10日(土) 11:00- 全国切手展<JAPEX>
 東京・池袋で開催される全国切手展<JAPEX>会場内で、拙著『喜望峰』刊行記念のトークイベントを予定しております。よろしかったら、ぜひ遊びに来てください。なお、詳細は主催者HPをご覧いただけると幸いです。(展覧会の入場料はかかりますが、入場後、トークへはどなたでも無料でご参加いただけます)


 ★★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★★

         『喜望峰』表紙画像
 
  『喜望峰:ケープタウンから見る南アフリカ』

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 なお、本書をご自身の関係するメディアで取り上げたい、または、取り上げることを検討したい、という方は、是非、ご連絡ください。資料を急送いたします。

 
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 ラスベガスの自由の女神
2011-04-18 Mon 17:35
 アメリカで昨年発行された切手に取り上げられた“自由の女神”が、ニューヨークの像ではなく、ラスベガスのホテルにあるレプリカの写真をもとにしたものであることがわかり、話題となっているそうです。というわけで、その切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

     自由の女神

 これは、アメリカで昨年(2010年)12月1日に発行された(ただし、切手には2011と表示されています)ファースト・クラス(いわゆる普通郵便)用の切手で、現在でも44セントで発売されています。また、左側に“FOREVER”と表示されているように、料金が値上げされても、永久にファースト・クラスの郵便に使うことができます。切手は上下が無目打のシール式で、自由の女神と星条旗が交互に印刷された連刷形式で、左右の目打については、81/2、91/2、11の3種があります。

 さて、今回の切手では、自由の女神の王冠や目がニューヨークの像と違うそうですが、比較のために、同じように女神の顔の部分を大きく取り上げた1978年のアメリカ切手の画像をご覧いただきます。

      自由の女神(1978)

 2010年の切手に取り上げられた女神像は、おそらく、ラスベガスのホテル、ニューヨーク・ニューヨークの正面に置かれているものでしょうが、同ホテルの開業は1997年ですので、1978年に発行された切手にとりあげられているのは、ニューヨークの女神像と断定して間違いないでしょう。

 両者を比較してみると、たしかに、ニューヨークの像では王冠の下の部分に縦の筋が入っているのに対して、ラスベガスの像では筋が入っていません。また、王冠部分の窓のかたちも微妙に異なっているようですし、目の雰囲気もたしかに違っています。

 ちなみに、USPS(アメリカ郵便公社)によると、問題の切手は既に30億枚印刷されており、今後、回収の予定はないそうです。したがって、今後、この切手が“お宝”になる確率は限りなくゼロに近いといえそうです。やまぁ、一獲千金を夢見るのなら、切手に取り上げられた女神像を見にラスベガスへ行くほうが近道ということなんでしょうな。


 * 本日午後、カウンターが84万PVを超えました。いつも、遊びに来ていただいている皆様には、この場をお借りして、あらためてお礼申し上げます。

  ★★★ イベントのご案内 ★★★

     切手百撰ポスター(小)

 以前の記事でも少しお話ししましたが、4月25日付で平凡社から拙著『切手百撰 昭和戦後』を上梓いたします。これにあわせて、下記のイベントに登場します。

 ・4月30日(土) 15:00- 出版記念トーク
 於 東京・浅草 都立産業貿易センター台東館6階特設会場
 スタンプショウのイベントの一つとして、出版記念のトークを行います。また、会場内で『切手百撰 昭和戦後』をお買い上げの方に、素敵なプレゼントをご用意しております。(画像は、会場内に掲示予定のポスターです。こちらもご覧ください)

 ・5月7日(土) 10:15- 切手市場
 於 東京・池袋 東京セミナー学院
 詳細は主催者HPをご覧ください。最新作の『切手百撰 昭和戦後』を中心に、拙著を担いで行商に行きます。

 どちらも入場無料ですので、ぜひ、遊びに来てください。


  ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★

        マカオ紀行・表紙カバー

   マカオ紀行:世界遺産と歴史を歩く
       彩流社(本体2850円+税) 

   マカオはこんなに面白い!
   30の世界遺産がひしめき合う街マカオ。
   カジノ抜きでも楽しめる、マカオ歴史散歩の決定版!
   歴史歩きの達人“郵便学者”内藤陽介がご案内。

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 小さな世界のお菓子たち:クッキーの切手
2009-12-18 Fri 09:17
 ご報告が遅くなりましたが、大手製菓メーカー(株)ロッテの季刊広報誌『Shall we Lotte(シャルウィロッテ)』の第7号(2009年冬号)ができあがりました。僕の連載「小さな世界のお菓子たち」では、今回はクリスマスの時季ということもあって、こんな切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

      クリスマス・クッキー

 これは、2005年のアメリカのクリスマス切手で、クリスマス・クッキーが取り上げられています。

 日本ではクリスマスのお菓子というとケーキが定番ですが、アメリカではなんといってもクッキーが主流です。

 アメリカの子供たちは、クリスマスの2週間ほど前になると、お母さんと一緒にいろいろな種類のクッキーを焼き、フロスティングを使って飾り付けます。また、クリスマス・イヴには、プレゼントを運んできてくれるサンタさんのために、子供たちはツリーの近くにクッキーとコップ一杯の牛乳を置いてから眠ります。翌朝、子供たちはクッキーの代わりにプレゼントが置かれているのを見て大喜び、というのが毎年恒例の風景になっています。

 切手に取り上げられているクッキーは、サンタクロースや雪だるま、天使やジンジャーマンなどですが、片隅にツリーや星などが見えるのも楽しいですね。

 ちなみに、日本では12月25日を過ぎると一斉にクリスマスの飾り付けが片付けられてしまいますが、米国では年が明けて1月6日の公現節(東方の三博士がキリストを訪ねてお祝いを述べたことを記念する日)にツリーを片づける家が多いのだとか。新年を迎えても、ツリーを見ながらクッキーを食べているという人も少なくないのかもしれません。

 なお、雑誌『Shall we Lotte(シャルウィロッテ)』は広報誌として無料配布されています。入手をご希望の方は、発行元の(株)ファミリー(〒160-0023 東京都新宿区西新宿3-20-1 tel:03-5388-5091 fax:03-3373-3815)にお問い合わせください。

 ★★★ 出版記念パーティーのご案内 ★★★

 『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』の刊行を記念して、ルーマニア民主革命20周年の記念日にあたる12月22日、下記のとおり出版記念パーティーを開催いたします。当日は、僕のトークのほか、日本におけるジプシー・バイオリンの第一人者、古館由佳子さん(当日は彼女のCDも販売します)による生演奏もお楽しみいただけますので、ぜひ、遊びに来てください。

      トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行      古館由佳子 古館由佳子さん

 ・日時 2009年12月22日 18:30~

 ・会場 レストラン・ルーマニア(本格的ルーマニア料理のレストランです。)
     *東京都中野区本町1-32-24(東京メトロおよび都営地下鉄中野坂上駅1分)
      tel: 03-5334-5341 地図などはこちらをご覧ください。
      料理は下の画像のようなイメージで、ブッフェ・スタイルです。
      ルーマニアのワイン(もちろん飲み放題)も出ます。

       ルーマニア料理

 ・会費 7000円(『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』1冊つき)
     *当日会場にてお支払いをお願いいたします。

 ・参加ご希望の方は、キュリオマガジン編集部まで、電子メール(info@fujimint.com)にてお申し込みください。たくさんの方々のお越しを心よりお待ちしております。

 
 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★

  総項目数552 総ページ数2256  
  戦後記念切手の“読む事典”(全7巻) ついに完結!

       昭和終焉の時代 『昭和終焉の時代』 日本郵趣出版 2700円(税込)

 2001年のシリーズ第1巻『濫造濫発の時代』から9年。<解説・戦後記念切手>の最終巻となる第7巻は、1985年の「放送大学開学」から1988年の「世界人権宣言40周年年」まで、NTT発足や国鉄の分割民営化、青函トンネルならびに瀬戸大橋の開通など、昭和末期の重大な出来事にまつわる記念切手を含め、昭和最後の4年間の全記念・特殊切手を詳細に解説。さらに、巻末には、シリーズ全7巻で掲載の全記念特殊切手の発行データも採録。

 全国書店・インターネット書店(amazonbk1JBOOKlivedoor BOOKSなど)で好評発売中!

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 米・加州の財政非常事態宣言
2009-07-02 Thu 23:57
 アメリカ最大の州であるカリフォルニア州のアーノルド・シュワルツェネッガー知事が1日、同州の財政危機を受け、財政非常事態を宣言しました。というわけで、カリフォルニアがらみのモノの中から、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 アメリカ・ディズニーカバー

 これは、つい2-3日前に届いたアメリカの切手商から僕の自宅あてに届いたカバーで、ディズニーランド50周年にあたる2005年にアメリカで発行されたディズニー・キャラクターのシール式切手が貼られ、カリフォルニア州ロサンゼルスのバイセンテニアル・ステイション局の消印が押されています。アメリカのディズニーランドはカリフォルニア州アナハイムにありますから、まぁ、ご当地消しのカバーの一種といってもよいでしょう。ちなみに、切手商の住所は、芸能人が多数住んでいることで有名な“ビバリーヒルズ”です。

 カリフォルニア州というと、サンフランシスコとロサンゼルスの2大都市を抱え、ディズニーランドやビバリーヒルズのほかにも、ハリウッドがあり、シリコンバレーがありと非常に豊かな州というイメージがあります。実際、カリフォルニア州の経済規模は国に置き換えた場合、世界8位という巨大なものです。

 しかし、州の財政は決して順調ではなく、特に、昨年9月以来の金融恐慌の影響で税収が急激に落ち込み、今年1月以降これまで財政が苦境に陥っていました。2月には知事と議会は最悪の事態を回避しようと増税案を提示したものの、5月に州住民投票で否決。このため、州政府と議会の間で次年度予算の危機を解決するための包括案についての交渉が行われていましたが、年度末の6月30日までに合意に達せず、7月1日の新年度を迎えてしまい、州として28億ドル(約2700億円)の現金不足に陥ったことから、今回の財政非常事態宣言となったわけです。ちなみに、現地時間の2日以降、現金の不足を補うため、州政府は“借用書“を発行するそうです。

 今回の非常事態宣言の中で、シュワルツェネッガー知事は宣言で、教育から貧困層支援までさまざまな公共サービスでの歳出削減を議会で決定しない限り、9月までに現金の不足高は65億ドル(約6290億円)まで膨らむと警告。支払い不能に陥った場合、「基本的な公共サービスがまったく提供されないという深刻な事態に置かれる」と理解を求める一方で、今後1年間(2010年6月まで)、職員給与削減のため、州立病院と刑務所、カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールを除き、毎月第1、2、3金曜を州政府機関の休業日とする行政命令も発表しました。それでも、州の財政赤字は今後2年間で240億ドル(約2兆3200億円)に達することが見込まれるのだそうです。

 最近、我が国の一部では景気回復の兆しが見えてきたかのような論調も見受けられるようですが、僕のような零細個人事業主には、どうも実感がわきませんねぇ。こういうときこそ、日本でも政治がしっかりしてもらわないといけないのですが、どうもここ最近の麻生内閣の迷走ぶりを見ていると非常に不安を覚えてしまいます。
 
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 大統領はフットボーラー
2008-10-13 Mon 21:55
 きょうは体育の日です。麻生首相がモントリオール五輪の際のクレー射撃の日本代表だったり、ロシアのプーチン首相が柔道の達人だったり、政治指導者にはスポーツマンが少なくありませんが、僕の最新作『大統領になりそこなった男たち』にからめてアメリカ大統領に関して言えば、なんといっても、この人が一番のスポーツマンということになるでしょう。

 ジェラルド・フォード

 これは、2007年9月に発行されたジェラルド・フォード元大統領の追悼切手です。

 フォードといえば、1974年8月、当時の大統領リチャード・ニクソンがウォーターゲート事件で辞任したことを受けて副大統領から大統領に昇格した人物として有名ですが、彼が副大統領になったのは、前年の1973年10月、当時の副大統領だったスピロ・アグニューが、メリーランド州知事時代の収賄罪が確定したため」辞職したことを受けて、ニクソンの指名を受けたことによります。それ以前のフォードは、1965年いらい、共和党下院の院内総務を務めていました。

 1913年、ネブラスカ州に生まれたフォードは幼い頃に両親が離婚し、母親の再婚相手を継父として育ちました。その際、前の実父につけられたレズリー・リンチ・キング・ジュニアから、ジェラルド・ルドルフ・フォード・ジュニアに改名しています。その後、彼はミシガン州で成長し、ミシガン大学に入学。大学時代はフットボールの名選手として鳴らし、卒業後はNFLのグリーンベイ・パッカーズやデトロイト・ライオンズから誘いを受けたほどでした。このとき、プロ・フットボーラーになっていたら、後の政治家フォードはなかったかもしれません。

 さて、フォードが大統領に在職していた期間は、ウォーターゲート事件の影響で、大統領の権威が地に落ちた時代でした。このため、フォードは政権運営に相当苦労しましたが、彼個人の清廉潔白で素朴かつ誠実な人柄は、大統領としての能力はともかく、ホワイトハウスへの信頼の回復には大きく役立ったと評価されています。

 その反面、フットボールの全米代表という前例のない経歴だけに、階段でつまづいたり、大統領専用機のタラップでこけたりすると「フットボーラーの割には不器用」とか「落ちたり何かを壊したりせずには一歩も進むことができない人」などと揶揄される気の毒な面もありました。

 ちなみに、フォードは大統領在任中の1975年、2回の暗殺未遂事件に遭遇していますが、大事には至らず、2006年12月、93歳165日の天寿を全うしています。これは、歴代大統領としては最長寿の記録です。このあたりは、やはり、若いころスポーツで鍛えていた貯金の賜物ということなんでしょうね。


 イベントのご案内

 以下の通り、トークイベントを行います。よろしかったら、ぜひ、遊びに来てください。

 10月17日(金) 在日本大韓民国民団記者懇談会
  「韓国現代史:切手でたどる60年」(福村出版)をめぐって
  18:30~ 於・在日本大韓民国民団中央会館8階会議室
  (地図などはこちらをご覧ください)

 激動の韓国現代史は、切手や郵便物にもさまざまな痕跡を残しています。切手や郵便物を通じて国家と歴史、時代や社会を読み解く“郵便学者”内藤陽介が、今年7月に刊行した『韓国現代史:切手でたどる60年』を題材に、切手というモノから見える韓国現代史のリアルな諸断面についてお話しします。参加は無料で、どなたでもご参加いただけます。なお、会の終了後、懇親会(会費5000円)を実施予定。


 10月18日(土)  「大統領になりそこなった男たち」刊行記念トーク
  18:00~ 於・日本郵便文化振興機構(東京・用賀)
  資料代として500円(ワイン・ソフトドリンク・軽食含む)を申し受けます。あしからずご了承ください。
  詳しくは、主催者の告知ページをご覧ください。


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 ギヴ・ミー・チョコレート
2008-02-14 Thu 13:00
 今日はバレンタインデー。というわけで、定番ネタですが、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 キスチョコ

 これは、昨年(2007年)、アメリカで発行されたキスチョコの切手です。アメリカでは毎年、グリーティング切手のひとつとして“love”切手を発行していますが、去年は、ハーシーのキスチョコ100周年にちなんで、このデザインになりました。なお、ご承知のように、アメリカにはバレンタインデーにチョコを贈る習慣はありませんので、キスチョコが“love”切手に取り上げられたのは、単純に“kiss”にからめてのことでしょう。

 アメリカを代表するチョコレート・メーカーのハーシー社は、1894年、キャラメル・コーティング用のチョコの製造を目的として設立されました。場所は、創業者ハミルトン・ハーシーの出身地、ペンシルベニア州ディリータウンシップです。この地域は、ニューヨークとフィラデルフィアの港に近いため輸入品の砂糖やカカオの入手に便利で、しかも、近郊に酪農地帯があるため牛乳の入手にも便利という地の利がありました。じっさい、現在でも近隣の酪農業者に対するハーシー社のプレゼンスは相当なもので、1930年代の恐慌の時代、ハーシー社で労働者のストライキが起こった際、これに猛反発した地元酪農業者の圧力により、労働側は早々に交渉妥結を余儀なくされています。

 ハーシー社最初のヒット商品は、20世紀早々に作られたチョコ・バーで、これにより、彼らはそれまで贅沢品だったチョコの大衆化に成功します。現代の日本では、いくつかの高額商品があるとはいえ、チョコが贅沢品という感覚はなかなかわかりづらいのですが、空港の免税店でチョコが売られていることを想像していただけるとお分かりかと思います。ハーシー社は、それを、一挙に駅のキヨスクで売るレベルの商品として開発したのですから(もちろん、20世紀初頭には空港の免税店はありませんが)、当時としてはそのインパクトはかなり大きかったことでしょう。

 切手に取り上げられたキスチョコは、1907年に登場した新商品で、このチョコを製造する機械がベルトコンベアーにキスしているように見えることから、この名前がつきました。そういえば、切手の印刷でも、印刷後に版面がもう一度軽くふれてできてしまったものを“キス”といいますな。もっとも、日本に入ってきたときには、名前の由来についてはあまり説明されませんでしたので、見た目から、銀チョコとか栗チョコと呼ぶ人が多かったようです。このあたりは、文化の違いなんでしょうね。

 さて、当初のキスチョコは、四角い銀紙に手作業で包まれていたようですが、1921年に包装用の機械が導入され、小さなフラッグをつけた現在の形のものができあがります。このフラッグには“I LIKE YOU(君のことが好き)”とか“I MISS RECESS(休みたいです)”といった類のメッセージが印刷されていますので、注意してみると面白いかもしれません。なお、金色のキスチョコが登場したのは1962年のことで、アーモンド入りのものが登場したのは1990年のことでした。

 ところで、第二次大戦の影響で、1942年から1949年までは原料のアルミが不足していたため、キスチョコの製造が中止されていた時代があります。ただし、この時期もキスチョコ以外の板チョコなどは従来どおり使われており、相当量のチョコが米軍に納められていました。占領下の“ギブ・ミー・チョコレート”のチョコでは、ハーシーの板チョコが圧倒的なシェアを占めていたことは広く知られているとおりです。

 実際に米兵からチョコをもらったという僕の母親(1943年生)によると、ハーシーのチョコとリグレーのチューインガムを始めて食べたときには、当時、世の中にこんなに美味しいものがあるのかと感動したそうで、その記憶があまりにも強烈なためか、いまだに、チョコはハーシーに勝るモノはないと主張しています。余談ですが、当時幼かった母は、姉(僕から見ると伯母)たちから「板チョコってのは食べると歯が痛くなるから“イタ・チョコ”っていうんだよ。処分してあげるからこっちへ寄越しなさい」といわれて、せっかくのハーシーを巻き上げられて悔しい思いをしたのだとか…。なんとも時代を彷彿とさせるエピソードですな。

 ところで、進駐軍の時代は、アルミ不足でキスチョコも製造されていなかったぐらいですから、板チョコの包装にもアルミ箔は使われていなかったんだろうと思います。というと、やっぱり、ロウ紙のようなもので包まれていたんでしょうかねぇ。まぁ、ドラマの小道具なんかでは、このあたりの時代考証は、おそらくいい加減でしょうけど、個人的にはちょっと気になってみたりもします。
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 ディクシー・チックスといえば
2007-02-13 Tue 00:34
 アメリカの音楽界最高の栄誉とされる第49回グラミー賞の授賞式が11日午後(日本時間12日午前)、ロサンゼルス市内で行われ、テキサス州出身の女性3人組カントリーバンド、ディクシー・チックスが最優秀レコード賞・最優秀楽曲賞・最優秀アルバム賞と、主要3部門を制覇したのだそうです。というわけで、今日はこんなモノを持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

イラク戦争愛国カバー

 これは、2003年3月19日に始まったイラク戦争にさきだち、アフガニスタン作戦(Operation Enduring Freedom)の野戦郵便局から差し出された軍事郵便のカバーで、余白にはこれから始まる“イラク征伐”を示唆するかのようにイラク地図が描かれています。開戦直前の高揚した雰囲気が伝わってきます。

 イラク戦争については、開戦以前から、アメリカ国内でも批判的な声が少なくありませんでした。今回、グラミー賞を受賞したディクシー・チックスのリード・ボーカル、ナタリー・メインズもイラク戦争には批判的で、開戦直前の2003年3月10日、ロンドンでのコンサートで「みんなは知っていると思うけど、私たちはテキサスから大統領がでたことを恥ずかしく思うわ。」と発言してブッシュJr大統領を批判し、物議を醸しています。

 この発言が、3月12日(今日のカバーの消印の翌日ですな)にアメリカ国内でも報じられると、メインズに対しては、①外国でアメリカの最高指導者を批判すべきではない、②戦争かどうかの瀬戸際にアメリカ軍の最高指揮官を批判すべきではない、③ビジネスとしての利益を考えれば政治な立場を表明すべきでない、との批判が浴びせられました。まぁ、今回ご紹介しているカバーに見られるような“我々の軍隊をサポートしよう”というスローガンを奉じている人たちからすれば、メインズはとんでもない非国民ということになるのでしょう。

 批判に対してメインズは、性急な開戦には反対との立場は撤回しなかったものの、「アメリカ国民であり続けるために、私はブッシュ大統領を尊敬していないと述べたことを謝るわ。私は誰もが最大の信頼を大統領の職務に抱くべきだと感じています」と弁解しましたが、世論の批判は収まらず、彼女たちの身の安全を守るために24時間の警護がつき(メンバーの一人は自宅のドアを壊されたそうです)、コンサートのスポンサーであったリプトンに対しては大規模な不買運動も展開されました。ちなみに、マドンナはメインズを擁護して「ミュージシャンにも自由な意見を表現する権利がある」と主張したものの、彼女が4月1日にリリースする予定だったブッシュのように見える人に向けて手榴弾を投げつける“American Life”のビデオに関しては、世論を考慮して、発売の延期と手直しを余儀なくさせられたほどです。

 その後、この問題については、大統領が自ら「ディクシー・チックスには話したいことを言うことが権利がある… 発言によってレコードを買いたくないと思う人たちのために損害を与えられるべきではない…。思ったことをすることはアメリカ国民のための権利であると思う。ある音楽家やハリウッドのスターが発言したいと感じたなら、それは素晴らしいことだ。それこそがアメリカ人の偉大なことだ。それは荒涼としたイラクの地にも表現される」と発言して事態の鎮静化を図ろうとしましたが、その後も、彼女たちをめぐる論争はしばらく続きました。

 まぁ、グラミー賞そのものは(少なくとも建前としては)純粋に音楽的に優れたミュージシャンや楽曲、アルバムなどに与えられるわけですが、こうした“事件”の記憶がまだ生々しいだけに、イラク戦争の継続に対するアメリカ国民の批判が高まっている中で、今回のディクシー・チックスがグラミー賞の主要3部門を受賞したということには、なんとなく、時代の流れを感じずにはいられません。

 なお、湾岸戦争からイラク戦争にいたるアメリカとイラクの関係については、拙著『反米の世界史』でもまとめてみましたので、ご興味をお持ちの方は、是非、ご覧いただけると幸いです。

 *本日19:30から、東京・新宿のロフトプラスワンでのトークライブ“北鮮祭”に藤本健二さんや宮塚利雄先生とともに出演します。よろしかったら、遊びに来てください。
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