内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に見るソウルと韓国:憲法裁判所
2017-01-07 Sat 11:08
 ご報告が遅くなりましたが、『東洋経済日報』2016年12月16日号が発行されました。僕の月一連載「切手に見るソウルと韓国」は、今回は、朴槿恵大統領の弾劾訴追が国会で可決された直後の号でしたので、この切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・憲法裁判所1周年

 これは、1989年9月1日に発行された“憲法裁判所開設1周年”の記念切手で、『経国大典』(朝鮮王朝の法体系がまとめられた法典)をバックにした正義の女神像が取り上げられています。

 韓国の司法制度は三審制が採られており、日本の最高裁判所に相当する大法院(ソウル特別区瑞草区)の下、ソウル、光州、大邱、大田、釜山の5大都市に高等法院(日本の高等裁判所に相当)が、ソウル(4ヶ所)、釜山、大邱、仁川、光州、大田、蔚山、水原、議政府、春川、昌原、清州、全州、済州の各都市に地方法院(日本の地方裁判所に相当)が置かれているほか、家庭法院(日本の家庭裁判所に相当)も置かれています。

 これに対して、憲法裁判所は上述の通常の司法制度とは別に、1987年10月の憲法改正によって設置が決められました。

 現行の大韓民国憲法では、第6章(第111-113条)が憲法裁判所についての規定となっています。

 それによると、憲法裁判所は、①法院の提請による法律の違憲性の審判、②弾劾の審判、③政党の解散の審判、④国家機関相互間、国家機関と地方自治団体間又は地方自治団体相互間の権限争議に関する審判、⑤法律が定める憲法訴願に関する審判、を管轄する、とされています。(第111条1)

 裁判官は、法官の資格を有する9人で構成され、大統領が任命します(第111条2)が、このうちの3人は国会が選出した者を、また別の3人は大法院長(日本の最高裁長官に相当)が指名した者を、大統領は任命しなければいけないことになっている(第111条3)ほか、憲法裁判所の長は国会が同意しなければ大統領が任命できない(第111条4)とされています。

 ちなみに、ここでいう“法官”の資格とは、15年以上の経験のある40歳以上の者のうち、①裁判官、検察官、あるいは弁護士である者、②弁護士資格を有し政府または公定機関で法律問題に従事した者、③弁護士資格を有し大学の助教授以上の地位にあった者です。

 また、憲法裁判所の裁判官の任期は6年で再任は可能(第112条1)で、弾劾または禁錮以上の刑が確定しない限り罷免されない(第112条3)が、政党に加入し、又は政治に関与することはできません。(第112条2)

 さらに、憲法裁判所で、法律の違憲認定、弾劾、政党解散の決定、又は憲法訴願に関する認容決定をするときは、裁判官6人以上の賛成が必要(第113条1)とされており、そのために、憲法裁判所は、法律に抵触しない範囲内で、審判に関する手続き、内部規律及び事務処理に関する規則を制定することができる(第113条2)とされています。

 この規定からもわかるように、憲法裁判所は、理念としては、国民の権利・自由を擁護し、国家権力の濫用を牽制する独立の機関、端的に言えば、大統領の暴走を食い止めるブレーキ役という性質の機関という位置づけになっています。その背景には、長年、軍事独裁政権下で国民の権利と自由が制限されてきたという事情があるのはいうまでもありません。

 実際、憲法裁判所が発足する以前も、3権分立の建前から、大法院には違憲立法審査権が認められていましたが、実際に大法院が違憲判決を下した例は10件程度でした。

 ところが、憲法裁判所の設置後は違憲判決が急増し、2010年までに違憲判断は350件以上にも上っています。なかには、拘置所において腰板しかないトイレは違憲との判決が出るなど、我々の感覚からすると首をかしげざるを得ないようなものもありました。
 
 さらに、憲法の上に“国民情緒法(韓国人の国民情緒に合うという条件さえ満たせば、行政・立法・司法は実定法に拘束されない判断・判決を出せるという概念)”が存在していると揶揄される韓国社会では、憲法裁判所が司法の範囲を大きく超えて“(通常の近代国家の感覚からすると)暴走”し、政治的・外交的にも大きな影響を与えるケースもみられます。2011年に憲法裁判所が出した、韓国政府が“元慰安婦”と原爆被害者らの賠償請求権問題を解決するために具体的な努力をつくさないのは憲法に反するとの決定などは、その典型的な事例と言ってよいでしょう。

 いずれにせよ、今回ご紹介の切手に描かれている正義の女神像は、先入観にとらわれず万人に平等に法を適用するものとして目隠しや目をつぶった姿で表現されていますが、その目隠しが、歴史的事実や国際条約の常識を無視し、“国民情緒法”におもねるためのものになっているとしたら、なんとも困った話ですな。


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 切手に描かれたソウル:崇禮門
2013-05-04 Sat 09:52
  ご報告が遅くなりましたが、『東洋経済日報』4月26日号が刊行されました。僕の月1連載「切手に描かれたソウル」では、放火で焼失した崇禮門(南大門)の修復が完了し、きょう(4日)、記念式典が行われるということで、崇禮門の切手の中から、この切手をご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

       韓国・第21回UPU大会議招致

 これは、1992年に発行された「第21回万国郵便連合会議誘致(決定)」の記念切手で、中央に崇禮門が描かれています。

 もともと、崇禮門は漢城(現ソウル)に遷都した李成桂が都城を築いたことにより、1398年に完成しました。その後、世宗時代の1448年と成宗時代の1479年に改築され、2階建てとなりました。これは、ソウル南境の冠岳山が炎の形に似ているため、山からの火気を妨げようという風水思想によるものです。

 1907年、皇太子時代の大正天皇の行啓を機に、ソウル市内の街路整備のため、門の両側に続いていた城壁は撤去されましたが、門だけは道路上に残されました。なお、文化財としての崇礼門の価値が注目されるようになったのも日本統治時代のことで、1934年、朝鮮総督府は、これ以上の市街地の開発により門が取り壊されることのないよう、宝物第1号に指定しています。

 1950年に勃発した朝鮮戦争では、ソウルは計4回、破壊されましたが、崇禮門は奇跡的に一部の損傷にとどまり、焼失を免れました。その後、1961年の大規模な解体・改修工事を経て、1962年12月20日、あらためて、現存する韓国最古の木造建築(当時)として、大韓民国の国宝第1号に指定されました。

 門への立ち入りは、ながらく禁止されていましたが、2005年5月、門の南側に芝生の広場が造成されて間近に見られるようになり、さらに、翌年3月からは門をくぐれるようになっていました。ところが、2008年2月、放火により、石造の門を除いた木造の鐘楼部分の大半が焼失してしまいます。犯人の男は、都市再開発事業による家の立ち退きの件で補償額が少ないことに不満を持ち、大統領府や区役所に陳情したものの受け入れられなかったため、世間の注目を集めたかったと自供していますが、何とも迷惑な話ですな。

 その後、復元工事が開始され、当初予定では2012年末までの工事完了だったものが、作業が遅れ、ようやくこのたび工事完了となりました。ちなみに、どういうわけか、日本国内ではほとんど報じられていないのですが、復元に使われた丹青の顔料と接着用の膠または漆は日本製です。このため、韓国国内には、日本製品を使っての国宝の修復に対する反対論も強かったのですが、結局、韓国の国産品・技術では代替できず、担当者は「国宝で実験はできない」との理由で、反対論をおさえたそうです。

 さて、崇禮門は、ソウルのみならず韓国伝統文化のシンボルとして、大韓民国成立直後の1949年7月に発行された50ウォン切手以来、しばしば、切手にも取り上げられていますが、その中から、今回は、1992年に発行された「第21回万国郵便連合会議誘致(決定)」の記念切手をご紹介しました。

 万国郵便連合の大会議は原則5年に1度、各国持ち回りで、全加盟国を集めて郵便関係の条約改正について討議する会議で、1994年8月の第21回会議はソウル江南のコエックスを会場として開催されました。今回ご紹介の切手は、その会議の開催に合わせて発行されたものではなく、会議の招致が決定したことを記念したものです。日本の感覚からすると、会議が実際に行われ、無事に終了するかどうかも分からない時点で記念切手を発行するというのは、ちょっと気が早いような気もしますが、まぁ、そのあたりはお国柄なのでしょう。

 さて、記念切手には、会場のCOEXとソウルのシンボルとしての崇禮門、さらに南山のNソウル・タワーが描かれているのですが、タワーを背に崇禮門を望む構図だと、COEXはタワーよりも後ろに見えるはずですし、逆に、COEXから崇禮門の方向を見るのなら、タワーはその間に位置しているのが本来の配置です。

 もちろん、切手の図案はデザインの都合上、必ずしも現実の地理に忠実である必要はないのですが、遠くに見えるNソウル・タワーを目印に、ソウルの街歩きをした経験からすると、ちょっと不思議な気分になりますな。

 さて、ソウルの街歩きといえば、4月から、毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。今回は、来週火曜日、7日の開催で、仏誕節(日本の花まつりと異なり、韓国では旧暦で行われるため、ことしは5月17日になります)にちなんで、仏教・仏像関係の話題をいろいろとご紹介する予定です。講座はお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。


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 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。


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 大韓民国臨時政府の法統
2013-01-05 Sat 11:15
 

 2011年12月に靖国神社の門に放火した後、2012年1月、韓国・ソウルの日本大使館に火炎瓶を投げて韓国で逮捕され、有罪判決を受けて服役していた中国人、劉強について、日本政府はかねてから日韓犯罪人引渡し条約に基づき身柄の引き渡しを求めていましたが、3日、韓国のソウル高裁は、劉を“政治犯”として日本への引き渡しを認めない旨を決定。これを受けて、きのう(4日)、劉は韓国を出国し、上海へと帰国しました。ソウル高裁によれば、「政治的罪を犯した劉氏を日本に引き渡すことは、韓国の政治秩序と憲法理念だけでなく、大多数の文明国の普遍的価値を否定するものだ」そうです。というわけで、きょうはこんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

         大韓民国臨時政府72年

 これは、1991年に韓国で発行された“大韓民国臨時政府72周年”の記念切手です。

 大韓民国臨時政府(以下、臨時政府)というのは、1919年の3・1独立運動の後、朝鮮の独立運動家が上海で組織した一種の“亡命政府”のようなもので、初代の“大統領”には後に大韓民国の初代大統領となる李承晩が就任しました。しかし、思想的ないしは路線上の対立から内紛が絶えず、次第に衰退。このため、1927年以降、金九により抗日テロ組織として再建が図られ、東京での昭和天皇の暗殺未遂事件や上海での天長節記念式典への爆弾テロ事件などを実行。その後、指導者の金九はテロリストの頭目として官憲に追われる身となりましたが、南京の国民党政府は臨時政府を協力対象と考え、金九を保護しています。さらに、日中戦争下、上海が日本軍の占領下に置かれると、臨時政府の面々は上海を脱出し、南京や長沙を経て、1940年には重慶に移転。この地で、中国政府から公然と財政支援を受け、1941年12月10日には対日宣戦布告(ただし、日本政府に布告文書は通達されておらず、実効性は皆無)を行いました。ただし、臨時政府の軍事組織が日本軍と交戦したことは一度もありません。

 さて、1988年2月に施行された現行の『大韓民国憲法』は、その前文の冒頭で「悠久の歴史と伝統に輝く我が大韓国民は、三・一運動により建立された大韓民国臨時政府の法統及び、不義に抗拒した四・一九民主理念を継承し(以下略)」と謳っていますので、今回問題となった劉も、金九の薫陶を受けた“抗日義士”という名のテロリストの系譜に連なるという理解なのでしょう。劉は中国人で韓国人ないしは韓国系ではないようですが、ソウルから上海へ移ったというのも、臨時政府にならったのでしょうね。きっと。

 もっとも、劉の行動は過去の“抗日義士”に比べるとずいぶんとちんけなものですし(ほかならぬソウル高裁の決定が“人的被害がなく、物的被害も大きくなかった”と認定しています)、そもそも、現在の日本では政治犯が法的に処罰されるということは制度上ありえませんからねぇ。それに、いやしくも“政治犯”を称するであれば、堂々と日本の法廷で自説を開陳したうえで、従容として下獄するというのが本来のあり方であって、それこそが、劉のいう“大義”と彼の名誉を尊重することになると思いますが…。何よりも劉はメンツを重んじるとされる中国人です。きっと「俺を単なるチンピラ放火犯扱いするな」と言いたいでしょうから、ソウル高裁の決定にはさぞかし不満でしょうな。

 ところで、第二次大戦以前の世界で、大韓民国臨時政府を国際法上の正規の“亡命政府”として承認した国は中国、フランス(ドゴール政府)、ポーランド(ロンドンの亡命政権)ぐらいしかありませんでした。ちなみに、実質的に日本の属国とみなされていた満洲国でさえ、ドイツ、イタリア、スペイン、バチカンなど23ヵ国から国家承認を受けていましたから、臨時政府の国際的なプレゼンスはかなりお寒い状況だったといってよいでしょう。こうしたこともあって、日本の敗戦後、朝鮮半島の38度線以南に進駐した米軍は(そもそも、国際社会が朝鮮を戦勝国と認知しているなら、朝鮮半島を米ソ両軍が分割占領することはありえません)、臨時政府の正統性を正式に否定していますし、1948年の大韓民国成立後、大統領の李承晩が出した対日講和会議に“戦勝国”として参加したいという要求も米英によって一蹴されています。

 まぁ、“大韓民国臨時政府の法統”を受け継ぐことを憲法理念(のひとつ)と称することはご自由ですが、その結果として、今回のような司法判断が繰り返され、かつての臨時政府同様、国際社会から全く相手にされなくなるというところまで継承するのはおやめになった方が良いのではないかと、『韓国現代史』(韓国語版『우표로 그려낸 한국현대사 』)の著者としては、ひとこと申し上げたいところです。


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 切手に描かれたソウル:オリンピック公園
2012-09-22 Sat 12:43
 『東洋経済日報』8月31号が刊行されました。僕の月1連載「切手に描かれたソウル」では、8月はオリンピック月だったことを踏まえ、オリンピック公園の切手を取り上げました。ブログでのご報告が遅れ、すっかり時季外れの内容になってしまいましたが、きょう・あす(22・23日)、オリンピック公園内では“漢城百済文化祭”が行われるということなので、まぁ、大目に見てやってください。(画像はクリックで拡大されます)

      ソウル・オリンピック公園     オリンピック公園・記念塔

 左側は、1988年9月に発行されたソウル五輪の記念切手のうち、オリンピック公園のシンボルタワー(平和の門)を取り上げた切手です。右側には、実際の“平和の門”の写真を貼っておきました。

 蚕室地区のオリンピック公園は、ソウル五輪を記念して造られた公園ですが、実際のこけら落としは、プレ五輪ともいうべき1986年のアジア大会でした。

 1988年のソウル五輪に際しては、敷地内の蚕室競輪場(自転車競技トラックレース)、体操競技場、レスリング競技場、フェンシング競技場、オリンピックテニスセンター、オリンピックホール、夢村土城(近代五種ランニング)が各競技の会場となり、大会終了後、これらを含む総面積43万坪の敷地が公園として整備されました。

 ソウル五輪当時は地下鉄2号線の蚕室駅を降りてオリンピック路を東へ歩き、公園南西の“平和の門”をくぐって競技場へ向かうというのが一般的なアクセスでしたが、現在は、2号線蚕室駅のあたりからオリンピック路の下を通る地下鉄8号線の夢村土城駅で降りると“平和の門”のすぐ目の前に出ます。なお、地下鉄5号線にオリンピック公園という駅がありますが、こちらで降りると敷地の南東、競技場が集めるエリアが近くなります。

 さて、現在、8号線の夢村土城駅を降りると、いたるところにフィギュアスケートの金妍児をはじめウィンター・スポーツの巨大な写真が掲げられ、2018年に平昌で開催予定の冬季五輪のことが大々的に宣伝されいるのが目につきます。(下は地下鉄の夢村土城駅入口に掲げられた金妍児の写真)

      オリンピック公園・地下鉄夢村土城駅入口

 金妍児の写真は国会議事堂内の“韓国の歩み”といったパネル展示にも登場するのですが、次のソチ五輪(2014年)で新たな韓国人金メダリストが誕生したら差し替えになるのかもしれません。

 地下鉄の駅を出てトーテムポール風の柱が並ぶ広場を通って“平和の門”の前に立つと、なるほど、高さは24m、屋根の幅62mというその大きさを実感できます。かまぼこをひっくり返したような屋根の装飾は、遠目にはただ単にカラフルなモザイクにしか見えなかったのですが、真下で見ると、現代風にアレンジされた四神(青龍・白虎・玄武・朱雀)であることがわかります。

 門の真下には、消えることのない“平和の火”がともされており、台座にはソウル平和宣言がフランス語・韓国語・英語の三か国語で刻まれています。

 今回ご紹介している1988年の記念切手では、門の後ろには何も描かれていませんが、実際には、五輪開催を祝うモニュメントが建てられており、その周囲には万国旗が掲げられています。おそらく、五輪の開会後に設営されたもので、切手の制作時期にはまだなかったのでしょう。

 なお、モニュメントは東西の宥和の始まりとオリンピックの平和精神を表現したものということで、足元の碑文には当時の大統領、盧泰愚の名前も刻まれています。

 ロンドン五輪の男子サッカーで日本との3位決定戦に勝利した後、韓国チームの朴鍾佑が「独島は我々の領土」と書かれた紙を掲げてグラウンドを走り回ったことについて、IOCがメダルの取消を検討しているのは、彼の主張の当否以前に、五輪に領土問題という政治を持ち込むことが、そもそもモニュメントにも刻まれた五輪の精神に違反するからに他ならないのですが、どうも彼らはそのことを理解していないようですな。あるいは、金泳三時代の“歴史の清算”を経て、犯罪者となった元大統領の名の下に刻まれた五輪の平和精神もまた、過去のものとして葬り去られてしまったということなのかもしれません。

 ★★★ 内藤陽介、カルチャーセンターに登場 ★★★
   
 10月から、下記の通り、首都圏各地のよみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)で8月の韓国取材で仕入れたネタを交えながら、一般向けの教養講座を担当します。詳細につきましては、青色太字をクリックしてご覧いただけると幸いです。皆様のご参加を心よりお待ちしております。(掲載は開催日順)

 T-moneyで歩くソウル歴史散歩 
・よみうりカルチャー荻窪
 10月2日、10月30日、12月4日、1月29日、2月5日、3月5日 13:00-14:30

 * 10月2日は公開講座として、お試し聴講も可能です。
 
・よみうりカルチャー北千住
 10月17日、12月19日、1月16日、2月20日、3月20日 13:00-15:00


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 歴史の舞台裏で飛び交った切手たち
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 切手に描かれたソウル:国立国楽院
2011-11-12 Sat 09:55
 ご報告が大変遅くなりましたが、『東洋経済日報』10月28日号が刊行されました。僕の連載「切手に描かれたソウル」では、今回は李明博大統領の私邸問題で話題になった瑞草区の施設ということで、国立国楽院とこの切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

        韓国・国立国楽院40年

 これは、1991年に発行された国立国楽院40年の記念切手で、デザイン化された楽人をバックに国楽院の建物が描かれています。

 国立国楽院は、韓国の伝統音楽である国楽の継承・発展を目的として、1950年1月19日の大統領令によって、組織としては同年4月10日に発足しました。しかし、同年6月、朝鮮戦争が勃発し、ソウルが戦場となったため、常設の施設としては1951年に釜山でスタートし、李王職雅楽部出身の李珠煥が任命されています。

 1953年の休戦後、国楽院はソウル市の鍾路区に移転しましたが、1970年代以降、いわゆる江南地区の開発がすすめられたのにあわせて、1987年、牛眠洞の現在の場所に移転しました。ちなみに、国楽院の所在地は、現在、瑞草区となっていますが、同区は国楽院が移転してきた翌年の1988年に江南区から分区して作られました。

 2つの劇場、事務棟、博物館が連結通路でつながっている国楽院の建物の構造は、寺の伽藍配置を真似ており、石垣で閉じられた外壁には、昔の城郭の強固で端正な線が込められているそうです。また、メインの公演場である礼楽堂は、水原の水原城をモデルに設計されました。

 今回ご紹介の切手では、竹笛のテグムを吹く楽人の衣装に、銀色の線描で国楽院の建物が描かれているのですがが、『東洋経済日報』に掲載のモノクロの図版ではちょっとわかりにくかったかもしれません。


 ★★★ トーク・イベントのご案内 ★★★

 11月19日(土)13:10より、東京・目白の切手の博物館3階で開催の(財)日本郵趣協会コーリア部会例会にて、拙著『ハバロフスク』の刊行を記念して、以下のトークを行います。

 ・題目 金正日生誕の地、ヴャツコエを訪ねて
 
 現在、北朝鮮当局は、金正日が北朝鮮内の白頭山中で生まれたと主張していますが、これは事実と異なり、金日成・金貞淑夫妻がソ連領内で軍事訓練を受けている間に生まれたことが確認されています。その具体的な生誕地については諸説がありますが、最も有力視されているのは、ハバロフスク近郊のヴャツコエです。

 拙著『ハバロフスク』では、本編とは別の“付録”として、近郊のヴャツコエを訪れた体験記も収録しておりますが、今回のトークでは、現在のヴャツコエのようすなどもご紹介しつつ、お話ししたいと思います。

 * 今回のコーリア部会例会は特別例会ということで、部会の会員でなくとも、どなたでも自由にご参加いただけます。また、トークのみのご参加の場合、博物館の入館料はかかりません。 


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 節電しませう②
2011-03-14 Mon 23:31
 きのう(13日)に引き続き、きょうも“節電を訴える切手”をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

        韓国・省エネ切手

 これは、1991年11月に韓国で発行された省エネキャンペーンの切手で、こまめにスイッチを消す電球が描かれています。

 きょうの輪番停電は当初、午前6時20分から約3時間を目安に1都8県を5つのグループに分け順次実施する予定でしたが、実際には午後から夕方に予定していた5番目のグループのうち、千葉・茨城・山梨・静岡各県の一部地域のみでした。これは、電力需要が、東京電力側が予測していた4100万キロワットに対し、電力使用のピーク時となる夕方の時間帯でも3400万キロワットにとどまったためで、東電側は「節電などの効果で、需給のバランスが良い方向に動いた」と説明しているそうです。

 もっとも、今回の停電では、実施の直前にならないと発表が行われず、情報も二転三転したほか、被害の大きかった茨城県や千葉県(特に、旭市では避難所3カ所も停電になったそうです)なども停電になるなど、今後改善すべき課題も多かったようです。

 ただ、いずれにせよ、現状では電力事情が改善されていないことには変わりありませんから、今後とも、引き続き節電に努める必要がありますな。

 なお、韓国で発行された各種のキャンペーン切手については、拙著『韓国現代史』でもいろいろとご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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 火の用心
2009-02-10 Tue 15:21
 昨年2月10日にソウルの崇禮門(南大門)が放火に遭ってからちょうど1年になります。というわけで、今日はこの切手をもってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 韓国・防災

 これは、1989年11月1日に韓国で発行された“防災”キャンペーンの切手で、家屋に近づく炎を断ち切るハサミが描かれています。

 韓国・消防防災庁の集計結果によると、2008年に発生した火災は4万9000件余りですが、そのうち、放火による火災や放火が疑われる火災は約4200件で、全体の8.5%を占めています。さらに、消防署や警察が放火による火災として断定したのは799件(残りの約3400件は“放火が疑われる火災”ということになります)ですが、これは前年(2007年)比81%増という結果だそうです。

 放火の動機としては、単純偶発が396件で最も多く、不満解消が214件、家庭不和が193件なんだとか。昨年、南大門に火をつけた男は、再開発に伴う立ち退きの補償が少ないとして社会に恨みをうだいていたということですから、上記の項目の中では、“不満解消”に分類されているのでしょう。また、家庭不和で放火してしまうというのは、たとえば、夫婦喧嘩ないしは親子喧嘩の末、自分の住んでいる家に火をつけてしまったというケースが該当するのでしょうが、日本ではあまりないケースじゃないかと思います。

 7日にオーストラリアで発生した大規模な山火事はいまだ鎮火せず被害が拡大していますし、中国では北京の高層ビル火災が発生しています。なんだか、ここのところ火事のニュースばかりという感じがしますが、空気が乾燥している時節柄、くれぐれも火の元にはご用心ください。


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 クマ子の入院
2008-09-05 Fri 23:11
 今月に入ってから、富山県砺波市庄川町の集落で、民家の屋根裏などにある蜂の巣を目当てとみられる熊がたびたび侵入しているとのニュースをネットで読みました。というわけで、今日は現時点での僕の最新作『韓国現代史:切手でたどる60年』にちなんで、こんな熊の切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 韓国・交通安全

 これは、1990年7月25日に韓国で発行された“交通安全”のキャンペーン切手で、交通事故で怪我をして入院中の熊が描かれています。パジャマの色などからすると、この熊はどうやら雌のようですな。

 一昨日の記事でも少し書きましたが、朝鮮民族の始祖とされる檀君は、熊から人間になった熊女と天帝の息子・桓雄が交わって生まれたということになっています。

 そもそも、熊と虎が人間になることを願って、地上の神檀樹に降臨した桓雄のもとを訪ねた際、桓雄は彼らにヨモギ一握りとニンニク20個を与え、それを食べて100日間、太陽の光を見なければ人間になれると言い渡し、その約束を守った熊は21目に人間の女性(熊女)になったとされています。

 ところが、熊から人間になった熊女には結婚してくれる人間の男性はおらず(まぁ、そりゃそうでしょうねぇ)、彼女は神檀樹の下で人間の子どもを産むことを願っていたため、同情した桓雄が人間の姿に変じて彼女と交わり、子どもを産ませた、というのが檀君誕生の物語ということになっています。

 そう考えると、韓国人の感覚では、熊を擬人化する場合には、やはり男性よりも女性の方がイメージしやすいということで、こうした切手のデザインになったのかもしれません。

 なお、韓国では1973年以降、さまざまなテーマのキャンペーン切手を発行していますが、それらは、その時々の時代を反映した内容となっています。そのいくつかについては、拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』でもご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。

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 五輪開幕
2008-08-08 Fri 10:59
 2008年8月8日の午後8時という8の4並びということで、今夜、北京オリンピックの開会式が行われます。お騒がせの聖火が紆余曲折を経ていよいよオリンピック会場にともされるわけですが、それにちなんで、今日はこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ソウル五輪成功

 これは、1988年のソウル五輪(そういえば、ソウル大会も88オリンピックと言われてましたな)終了後の同年12月20日、“ソウルオリンピック成功”と題して韓国が発行した小型シートで、オリンピック開会式の模様が取り上げられています。

 ソウル五輪の開会式は、1988年9月17日、ソウルの松浪区にあるソウル蚕室総合運動場(通称・ソウル・オリンピック・スタジアム)でおこなわれました。開会式ではソウル芸術団による民俗舞踊をはじめさまざまなパフォーマンスが行われましたが、客席が一番沸いたのは、聖火リレーのランナーとして孫基禎が満員のスタジアムに入ってきた瞬間でした。

 孫は、南昇龍とともに日本統治下の1936年にベルリン・オリンピックのマラソン代表として出場。孫が金メダル、南が銅メダルという好成績を残しましたが、当時の朝鮮は日本の植民地であり、孫と南は“日本代表”としての出場であったため、表彰台では彼らの望む太極旗ではなく、日章旗を見上げることになりました。このため、孫は悲劇の英雄として、ベルリンでの金メダル獲得から約半世紀後の1988年、祖国で開催されたオリンピックの聖火ランナーとしてトラックを半周した後(当時の孫は76歳という高齢ですからね。ハードな走りは無理です)、聖火を若い選手に渡して退場します。

 ところが、その選手が聖火台に聖火を点火した瞬間、聖火台の縁にとまって羽を休めていた鳩の群が一瞬にして炎に巻き込まれて一部が焼け死ぬというハプニングが発生。平和のシンボルが聖火で丸焼けになるとは何事かという韓国国民のクレームが相次ぎ、孫による“ウィニング・ラン”の感動もいささか水をさされた格好となりました。ちなみに、今回ご紹介の切手では、当然のことながら、聖火に焼かれている鳩の姿は分からないよう、トリミング処理が施されています。

 まぁ、韓国の場合は、開会式が生放送でそのまま中継されていたため、全世界の人々が“鳩の丸焼き”の瞬間を目撃することになったわけですが、今回の北京の場合は、実際よりも10秒間送らせて映像を配信するそうですから、こうしたハプニングを見ることはまず不可能でしょうな。もっとも、“鳩の丸焼き”なら単なる笑い話ですみますが、五輪開催の陰で、民主活動家や、チベットやウイグルの独立運動家たちが“丸焼き”にされたり、焼きごてをあてられるなどの拷問を受けたりしているとなると、笑いごとではありません。

 なお、いまから20年前の“88オリンピック”については、拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』でもいろいろとご紹介しています。20年前、“先進国”の入口に立ったばかりの韓国でも、オリンピックの開催をめぐっては、西側諸国では考えられないような事件がいろいろと起こっていますが、当時の韓国と似たような立場にあるとされる中国でも、きっと、トンでも事件がいろいろと起こるんじゃないかと思います。比較のためにも、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。

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 女神に導かれるのは…
2008-07-14 Mon 14:25
 今日はパリ祭の日です。というわけで、新刊の拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』にちなんで、韓国切手の中からこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 フランス革命200年(韓国)

 これは、1989年7月14日、韓国が発行したフランス革命200年の記念切手で、ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」の一部が取り上げられています。

 「民衆を導く自由の女神」は、1830年7月のフランス7月革命を題材に制作されたもので、フランスの象徴である女性・マリアンヌは自由を、乳房は母性すなわち祖国を表しているとされています。オリジナルの作品では、マリアンヌの脇に、ドラクロワ本人と思しきマスケット銃を手にしたシルクハットの男性をはじめ、マリアンヌに導かれる多数の男性が描かれていますが、今回の切手ではそれらは思い切ってカットされています。

 こうした構図になったのは、基本的には、デザイン上の都合だろうと思うのですが、もしかすると、男性が女性に導かれるという構図に対して抵抗感があったということもあったのかもしれません。

 韓国社会には、良くも悪くも儒教的な価値観が染み付いており、現在でも「男女有別」「女必従夫」「夫唱婦随」などの男尊女卑的な考え方が根強いことは広く知られています。

 たとえば、韓国民主化の成果ともいうべき1987年の憲法では、男女の平等という原則の下、女子の労働は、特別の保護を受け、雇用・賃金及び勤労条件において、不当な差別を受けない(第32条第4項)、国は、女性の福祉と権益の向上のために努力しなければならない(第34条第3項)、国は母性の保護のために努力しなければならない(第36条第2項)など、国として男女平等を推進するための方針が盛り込まれました。しかし、この時点では、まだまだ“男女平等“に対する国民の心理的な抵抗感は根強かったようで、共働きの女性に「ご主人が失業した場合、あなたはどうしますか」というアンケートを取ったところ、一番多い回答は「自分も仕事を辞める」という結果が出ています。その理由は、「一家の長である夫よりも自分の収入が多いのは申し訳がたたない」というのだそうで、実利ではなく“朱子学的(といっていいのかどうかは分かりませんが)”な名分や“秩序”を重要視する彼らでなければ出てこない発想だと言ってよいでしょう。(まぁ、実際には、夫が失業したら、妻が働いて家計を支えるというケースが多いのでしょうけど)

 したがって、おそらく、この切手が発行された1989年の時点では、国家の名前で発行される切手に、“女性に従う男性”という構図の絵画が取り上げられることに抵抗を感じる人も少なくなかったのではないかと思います。

 もっとも、最近では朴正熙の長女、朴槿恵がハンナラ党の代表となり、大統領選挙の有力候補として名前が挙がるなど、韓国社会でも、以前に比べれば、女性指導者に対する抵抗感はだいぶ薄まってはきたようですが…。

 ちなみに、日本でも、いまから10年前の1998年、“日本におけるフランス年”の記念切手に「民衆を導く自由の女神」が取り上げられたことがありましたが、こちらは、オリジナルの作品を忠実に再現したデザインとなっています。

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