内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ドイツマルクの復活なるか
2013-04-15 Mon 16:17
 9月に総選挙が予定されているドイツでユーロの廃止と独自通貨の導入を目指す新政党“ドイツのための選択肢”が結成され、きのう(14日)、ベルリンで初の党大会が開かれました。彼らが導入を目指している独自通貨としては、同党内では、旧通貨マルクの再導入が多数意見ということなので、今日はこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

        米英占領地区・ポストホルン加刷

 これは、1948年の“ドイツマルク”導入に伴って発行されたポストホルン加刷切手です。ドイツの公式通貨としてのマルクには、1871年のドイツ帝国統一以来、さまざまなバリエーションがありますが、1999年1月1日のユーロ導入により廃止されるまで使われていたのが、今回ご紹介のドイツマルクです。

 1945年5月、第二次大戦に敗れたドイツは、米ソ英仏の4カ国によって分割占領されました。その後、東西冷戦の進行とともに、米軍占領地区と英軍占領地区は占領円滑化のため合同してバイゾーンを形成。さらにこれにフランス軍占領地区が加わってトライゾーンを形成し、ソ連軍占領地区との亀裂が深まっていきます。

 ところで、占領下のドイツではハイパー・インフレが進行していたため、1948年6月20日、米英仏の3国は、英米仏各占領地区で独自に発行されていた通貨を統合してトライゾーンでの統一通貨(ドイツマルク)を発行。これに対して、ソ連側も6月24日に東ドイツマルク(オストマルク)を発行するとともに、ドイツマルクを使用する西ベルリンを経済封鎖することで対抗しました。これが、いわゆるベルリン封鎖です。

 さて、ドイツマルクの導入に伴い、西ベルリンを除く西側占領地区では、6月21日から、旧通貨が10分の1に切り下げ、6月23日までは旧通貨時代に発行された切手・葉書の額面も10分の1の価値で有効とされました。これに対して、新通貨に対応した新図案の切手発行は間に合わなかったため、とりあえず、米英占領地区では、旧通貨の切手にポストホルンを加刷した切手を暫定的に発行することで対応することになりました。今回ご紹介の切手は、その1枚です。なお、新通貨対応の正刷切手としては、1948年8月15日発行のケルン大聖堂再建700年の寄附金つき切手が最初となります。

 今回旗揚げをした“ドイツのための選択肢”が、仮に、秋の総選挙で圧勝し、ドイツがユーロ圏から離脱して旧ドイツマルクが復活するということになったら、切手の額面も再びマルク表示に戻ることになるはずで、そうすると、ユーロと新ドイツマルクの切手の混貼使用例というのが生まれることになりますな。まぁ、そういう事態になったら経済的には大混乱で、勘弁してくれというのが常識的なところでしょうが、収集家としては、ついつい、妙な期待をしてしまいます。


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 戦時下・占領下のクリスマス:ドイツ-1946年
2005-12-21 Wed 14:51
 第二次大戦に敗れたドイツが米英仏ソの4カ国によって分割占領されたことは広く知られています。占領下の常として、国民生活にはさまざまな制約が加えられていましたが、郵便もまた例外ではありませんでした。そんなことを見せ付けるようなマテリアルが↓の1枚です。

 ドイツクリスマス返戻

 この葉書は、1946年のクリスマスに際して、ベルリンの米英占領地区から差し出されたもので、“メリー・クリスマス(ドイツ語ではFroehliche Weihnachten)”の文字も大書されています。

 しかしながら、この葉書は「絵葉書の使用は認められていない」との理由で差出人に返戻されてしまい、相手には届けられませんでした。そのことを示しているのが、デカデカと押されている紺色の印です。

 ちなみに、占領当局からお叱りを受けた絵葉書というのは、こんな感じです。

 ドイツクリスマス返戻裏面

 僕には、ごくごく平穏な雪景色のようにしか見えないのですが、あるいは、「この絵はアルプスをイメージしており、独墺両国の合邦を永遠に禁じた占領国の意図に反する!」なんて強引な言いがかりをつけられてしまったんでしょうか。

 いずれにせよ、こういうものまで“絵葉書はダメ”という理由で差し出せないところに、占領下の悲哀というものがあるわけで、あらためて自由にクリスマスを祝う(僕の場合は、どちらかというと“楽しむ”かな)ことができるありがたみを感じさせられます。
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 解放後の収容所
2005-10-26 Wed 14:19
 第二次大戦を語る際に避けて通れないのが、ナチス・ドイツによるホロコーストの問題ですが、今週金曜日(28日)からスタートの<JAPEX >に出品する僕の作品「“戦後”の誕生」では、↓のカバーを持ってきて、「戦後、収容所の実態が明らかになり、世界は戦慄した」というかたちで表現することにしました。

ベルゲンベルゼン

 これは、ベルゲンベルゼン強制収容所(アウシュビッツから移送されたアンネフランクが亡くなった収容所です)から解放されたユダヤ系元収容者のために、米軍が提供した無料郵便のカバー(封筒)です。宛先はニューヨークのユダヤ系団体です。角型の赤い印は薄くて読みづらいのですが、“PAID”の表示(実際には無料ですが)は画像でも見えることと思います。9月9日の記事 でご紹介した上海の事例と似たようなものとお考えいただいても良いかもしれません。

 ナチス・ドイツによる強制収容所の実態は、ドイツの敗戦まで、なんとなく囁かれてはいたものの、外部ではうかがい知ることのできないものでした。それだけに、終戦と同時に、悲惨な実態が明らかになるにつれ、世界は戦慄し、欧米ではホロコーストの被害者に対する贖罪意識が社会全体に浸透していくことになります。

 そのことじたいは、人間として当然の反応だと思いますが、問題は、そうしたホロコーストに対する贖罪意識が、安直に“パレスチナでのユダヤ人国家建設は善である”というロジックと結び付けられたことにあります。その際、イギリスの委任統治下にあったパレスチナには、もともと多くのアラブ系住民が住んでおり、ユダヤ系移民の急増で、アラブ系とユダヤ系の軋轢が深刻な社会問題となっていたという事情は、ほとんど顧慮されることがありませんでした。その結果、国連では、実際にパレスチナに住んでいるパレスチナ人の意向を完全に無視して、パレスチナをユダヤ国家とアラブ国家に分割する決議案が採択され、中東戦争につながっていくことになるのです。

 その意味では、ヨーロッパでの第二次大戦の終結は、東西冷戦を生み出したのと同時に、アラブ世界にも極めて大きな影響を与えたという点も見落としてはならないのですが、今回の「“戦後”の誕生」では、割り当てられたスペースの都合や僕の能力的な問題もあり、残念ながら、そこまで踏み込むことはできませんでした。他日を期したいところです。
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