内藤陽介 Yosuke NAITO
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 1ルーブルの航空会社
2013-04-05 Fri 14:04
 ロシアの大富豪アレクサンドル・レベジェフが、きのう(4日)、所有するレッドウイングズ航空を1ルーブル(約3円)で売却することを明らかにしました。と良いわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

        ロシア航空切手(1923)

 これは、ソ連初期の1923年に発行された1ルーブルの航空切手です。4種セットの切手には赤い色の10ルーブル切手もあって、“レッドウィングス”にちなんでそちらを持ってこようかとも思ったのですが、今回は“1ルーブル”を優先させました。

 1917年の革命以前、ロシアは世界有数の航空大国でしたが、革命により、航空界も軍民問わず革命派と反革命派に分かれて戦うことになり、大きな打撃を受けます。

 1922年末、ソヴィエト社会主義共和国連邦が発足して内戦が正式に終結すると、ソヴィエト政府は航空事業の再建に乗り出し、軍事航空として、赤色空軍が拡充されていくことになります。なかでも、赤色空軍のANT-20「マクシム・ゴーリキイ」号は赤の広場上空でプロパガンダ飛行を行うなど、ソ連の“進歩性”を示すシンボルとして活躍しました。

 一方、民間の航空産業に関しては、1923年2月9日、労働・防衛評議会により「航空局への航空路線の管理委任」と「民間航空局設立」に関する政令が採択され、これを受けて、3月17日、民間航空協会“ドブロリョート”が設立されました。この間、3月1日からは、全ソ連規模の「航空週間」が始まり、航空機製造のための募金運動が大々的に行われています。

 ソ連初の定期便は、1923年6月15日に就航したモスクワ=ニージニーノブゴロド線(総飛行距離420km)で、同年12月には、初めての国産旅客機AK-1の飛行実験が成功。同機は後に、モスクワ=カザン間を往復する航空路線に就航することになります。

 一方、切手に取り上げられているのはフォッカー社のF-111機です。フォッカー社は、もともと、1910年にインドネシア生まれのオランダ人アントニー・フォッカーによってベルリンに設立されましたが、第一次大戦でドイツが敗戦国となり、航空産業が全面的に禁止されたため、1919年にオランダに移転して、再出発しました。今回ご紹介の切手は、オランダ時代に製造されたものです。

 さて、今回、1ルーブルで売却されたレッドウィング社は、1999年の設立で、ツポレフ204型機を運航し、かつてサッカーのロシア代表チームがチャーター便として利用していたことでも知られています。しかし、2012年12月にはモスクワの空港で乗員5人が死亡するオーバーラン事故を起こすなど、トラブルが相次いでいたことから、2013年2月、ロシア運輸省が事業認可を取り消していたという経緯があります。したがって、今回の買い物が高いか安いかは、なかなか判断に苦しむところではあるのですが、いずれにせよ、利用者側としては、新オーナーの下で安全な運航を心がけていただきたいものです。


 ★★★ イベントのご案内 ★★★

・4月14日(日) 15:00- 東京五輪と切手
 於 東京国立近代美術館 ギャラリー4(2F)
 現在開催中の展覧会東京オリンピック1964 デザインプロジェクトの4月のギャラリートークに内藤が登場します。展覧会本体も、東京五輪関連の切手原画の展示をはじめ見ごたえのある内容ですので、ぜひ、遊びに来てください。(展覧会へ入場するための観覧券は必要になります)

・4月27日(土) 15:00- 『マリ近現代史』出版記念トーク
 於 東京・浅草 都立産業貿易センター台東館6階特設会場
 スタンプショウのイベントの一つとして、出版記念のトークを行います。書店に並ぶ前の先行販売はスタンプショウ会場内が最初となります。入場は完全に無料です。

 ★★★ 内藤陽介、カルチャーセンターに登場 ★★★   

 4月から、下記の通り、首都圏各地のよみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)で一般向けの教養講座を担当しています。詳細につきましては、各講座名(青色)をクリックしてご覧いただけると幸いです。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。(掲載は開催日順)

・よみうりカルチャー荻窪
 5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日
 (原則・毎月第1火曜日)13:00~14:30
 予算1日2000円のソウル歴史散歩

*よみうりカルチャー川崎での講座「切手で歩く世界遺産」の受付は終了いたしました。ありがとうございました。

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 切手収集の労働者への支援
2010-09-29 Wed 17:43
 きのう(28日)、ロシアのメドベージェフ大統領は“信頼できなくなった”として、モスクワのユーリー・ルシコフ市長の更迭を決定しました。経済無策と尖閣問題で“信頼できなくなった”政府が居座り続けている国の国民としては、ある種のうらやましささえ感じますな。もっとも、こういう独裁的な政権の主を国民が真に信頼しているかどうかは全く別の問題ですが…。というわけで、きょうはロシア切手の中からこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

         切手収集の労働者への支援

 これは、ソ連発足直後の1923年に発行された“切手収集の労働者への支援”の加刷切手です。

 1917年11月、ロシアで社会主義革命が勃発し、ソヴィエト労農臨時政府(ボリシェヴィキ政権)が誕生します。

 そもそも、私有財産制度と階級秩序を否定し、無神論を掲げる社会主義・共産主義とその信奉者は多くの国々で既存の体制と衝突しており、ロシア国内でもボリシェヴィキ政権に抵抗する白軍がシベリア各地で蜂起し、ロシアは内戦状態に陥りました。

 一方、ボリシェヴィキ政権が、1917年12月、帝政時代の債務を一方的に破棄し、外交上の密約を曝露したうえ、翌1918年3月、無併合・無賠償の原則を掲げてドイツと単独講和を結んだことで、列強諸国は激怒。ボルシェヴィキ政権に対する敵意をあらわにし、白軍を支援する干渉出兵を行うとともに、同政権に対する経済封鎖を発動します。

 こうした状況の下で、ボリシェヴィキ政権は、戦時共産主義と称して、あらゆる企業を国営化するとともに、農民から“余剰”農産物を強制的に徴発。私企業を禁止して、国民に対しては食糧・日用品を配給し、反対者は容赦なく処罰してました。しかし、強引な社会主義化政策は既存の社会を疲弊させ、貨幣は事実上無価値となり、経済は停止状態に陥ります。このため、1921年3月21日には、穀物の強制徴発を廃し、中小企業の民営化を認めるなど、市場原理を部分的に許容する新経済政策(ネップ)が導入されました。

 ネップの実施による経済再建政策の一環として、ボリシェヴィキ政権は、飢餓救済などの名目でさかんに寄付金つき切手を発行しましたが、内戦に勝利を収め、1922年12月にソヴィエト社会主義共和国連邦(ソ連)の成立を宣言した後の1923年5月1日には、今回ご紹介しているような“切手収集の労働者への支援”と題する寄付金つき切手も発行しています。

 切手は、既存の切手に発行日の日付と“切手収集の労働者への支援”の文字、さらに、額面と寄付金(額面と同額)を加刷したもので、モスクワのみで5月1日に限って発売されました。

 ソ連に限らず、共産主義諸国における切手収集家の立場には微妙なものがありました。というのも、彼らは、切手を政治宣伝(および資金獲得)の手段としてとらえ、自国の切手の収集を国民に奨励する一方で、切手の売買や交換などにより収集家が海外と接触したり、入手した外国切手を通じて当局が秘匿している情報を得たりすることに対しては強い警戒感を抱いていたためです。

 したがって、“切手収集の労働者への支援”の切手には、切手を通じた寄付金の献納というかたちで、一般国民に対して切手収集が国策に適うものであることを示すとともに、切手収集家に対して国家に対する忠誠と協力を要求するという意味が込められていたとみることもできます。

 さて、ロシアではプーチン前政権時代の2004年以来、自治体の首長が公選制から大統領による事実上の任命制となっており、2012年の大統領選に向けて、メドベージェフ大統領は最近、ベテラン首長を相次ぎ辞任に追い込むことで、地方に忠誠を誓わせようとしているとされています。どうやら、体制が代わっても、上の者が下の者に忠誠と協力を露骨に要求するといのが、ロシア人の気質のようですな。

 なお、この切手を含め、旧ソ連の切手政策の一端は、拙著『事情のある国の切手ほど面白い』でもご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

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 カッコよすぎる独裁者や存在しないはずの領土。いずれも実在する切手だが、なぜそんな“奇妙な”切手が生まれたのだろう?諸外国の切手からはその国の抱える「厄介な事情」が見えてくる。切手を通して世界が読み解ける驚きの1冊!

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