内藤陽介 Yosuke NAITO
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 天安門事件から25年
2014-06-04 Wed 09:39
 1989年6月4日に(第2次)天安門事件が起こってから、今日でちょうど25年です。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      マーシャル諸島・天安門事件

 これは、2000年1月15日、マーシャル諸島が発行したミレニアム切手の1枚で、1989年の天安門事件で民主化要求の学生デモが弾圧される場面が取り上げられています。

 マーシャル諸島は、南太平洋のミクロネシア連邦の東、キリバスの北に位置する島国で、米国との自由連合盟約(国家としての独立を承認し、経済援助を与える代わりに、安全保障に関しては米国が統轄)による独立国です。台湾との国交を維持して中国と国交を断絶しているという気骨のある国としても知られています。小国のミレニアム記念切手は、基本的には、外国人収集家に販売して外貨を稼ぐものという色彩が強いのですが、切手に天安門事件を取り上げることが国際社会の理解を得られるという見識は、大いに、称賛すべきことと言えましょう。

 1989年4月8日、胡耀邦(中国共産党の総書記として言論の自由化を推進し、国民からは「開明的指導者」として支持を集めていたものの、保守派との権力闘争に敗れて失脚した)が亡くなると、その死を悼むかたちで、民主化を求める学生運動が北京を中心に発生します。運動の背景には、政府・党幹部の腐敗と汚職、鄧小平による人治(超法規的な君臨)への不満がありました。

 学生を中心とした民主化や汚職打倒を求めるデモは、4月22日には西安や長沙、南京などの一部の地方都市にも拡大。西安では車両や商店への放火が、武漢では警官隊と学生との衝突が発生します。これに対して、首相の趙紫陽は5月3日の“五四運動”70周年記念式典で、学生・市民の改革要求(この日、北京では約10万人が民主化を求めるデモと集会を行っていました)を“愛国的”であると評価し、事態は沈静化の方向に向かうかと思われました。

 ところが、5月13日、民主化を求める学生側がハンガーストライキに突入したことから当局側は態度を硬化。これに反発するかたちで、中国全土から天安門広場に学生・労働者などのデモ隊の数は50万人近くに膨れ上がっていきます。

 両者のにらみ合いが続く中で、5月15日、ゴルバチョフが中ソ対立の終結を表明するために訪中。世界のマスコミは自国の民主化を進めるゴルバチョフの訪中と中国における一連の民主化運動を絡めた報道を行い、天安門広場をはじめ北京市内の要所要所が民主化を求めるデモ隊で溢れ、当局による交通規制さえ不可能となった状況が世界に配信されました。

 このため、メンツを完全につぶされたと考えた当局側は、ゴルバチョフ帰国後の5月19日、北京に戒厳令を布告。23日には戒厳令布告に抗議するために北京市内で100万人規模のデモが行われ、30日には天安門広場の中心に、ニューヨークの自由の女神を模した“民主の女神”像が作られるなど、緊張が高まっていく中で、ついに6月3日深夜から4日未明にかけて、北京の天安門広場前に集まっていた学生・市民に対して人民解放軍が無差別に発砲。民主化運動を力ずくで鎮圧されることになりました。

 軍隊によって民主化運動を圧殺した天安門事件については、国際世論が厳しくこれを指弾し、中国は国際的な孤立に追い込まれます。しかし、中国国内では、事件については徹底した報道管制が敷かれており、現在なお、その実態は明らかにされておらず、一種のタブーのような扱いになっています。ちなみに、僕は以前、中国のご機嫌を伺うことに敏感とされる某社の媒体で中国モノの原稿を書いた際に、天安門事件の影響について触れたところ、担当の編集者から「“3つのT(台湾・チベット・天安門)”には触れないようにお願いします」と言われて書き直しを命じられたことがあります。外国メディアでさえも、これだけの締め付けがあるわけですから、ましてや、国内においては…というところでしょうか。

 ちなみに、今回ご紹介の切手を発行したマーシャル諸島は、第二次大戦以前は、日本の委任統治領でした。以前の記事では、同じく日本の委任統治領だった南太平洋のパラオが台湾と国交を結び、天安門事件の切手を発行したことも紹介しましたが、こうした小国の矜持を見ていると、旧宗主国の日本こそ、もっとしっかりしないといけないと深く恥じ入るばかりです。


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