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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ニューカレドニアの独立否決
2018-11-05 Mon 02:15
 南太平洋のフランス特別自治体ニューカレドニアで、きのう(4日)、独立の是非を問う住民投票が実施され、即日開票の結果、独立賛成が43.6%、反対が56.4%となり、独立は否決されました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      ニューカレドニア・50周年加刷

 これは、1903年に仏領ニューカレドニアで発行された“フランスによる領有宣言50周年記念”の加刷切手です。

 オーストラリア東方に位置するニューカレドニアは、1774年、キャプテン・クックによって“発見”されました。1853年、フランスは、英国によるオーストラリア・ニュージーランド領有に対抗して、オーギュスト・フェヴリエ=デポワント提督を派遣してニューカレドニア島の領有を宣言。1864年には、近隣のロイヤルティ諸島も組み込み、仏領ニューカレドニアが成立します。

 当初、ニューカレドニアは流刑植民地でしたが、19世紀後半、ニッケルが発見されたことで鉱業の島となり、第二次世界大戦では、自由フランス側の支配下に置かれ、ガダルカナル攻略などでの米軍の拠点として利用されました。

 第二次大戦後の1963年、フランスは核開発の一環としてCEP(太平洋実験センター)を設置し、1966年から核実験を開始します。CEPはムルロア環礁とファンガタウファ環礁(いずれも仏領ポリネシア)の核実験場を管理していましたが、フランスのニューカレドニア駐屯軍(FANC)は、仏領ポリネシア駐屯軍(FAPF)とともに、CEPの防衛、冷戦下での情報収集、先住民による独立運動、経済の鎮圧なども担当していました。

 1996年、フランスが包括的核実験禁止条約(CTBT)を採択し、南太平洋での核実験が終了すると、FANCとFAPFの任務も、豪、ニュージーランド、島嶼国家とともに災害対処、密漁監視、海難救助などに徐々にシフトしていきます。そうした中で、フランスの南太平洋駐留部隊は、各国軍と連携して、主として中国船による密漁の取締りや災害対応など、地域の非軍事・警察活動において重要な役割を果たすようになりました。特に、ニューカレドニアはインマルサット(国際移動通信衛星ネットワーク)やインテルサット(商業衛星通信システム)などを傍受する世界的通信監視網(フレンシュロン)のアジア太平洋地域における拠点であり、FANCは戦車揚陸艦、哨戒艇や巡視艇、固定翼輸送機やヘリコプターなども配備しています。

 ところで、2000年以降、海洋進出を加速させてきた中国は、国交のあるトンガ、バヌアツ、フィジー、パプア・ニューギニアに寄港して現地の人々を無料診察する“病院船外交”を展開。地元の要人・住民を艦内に案内し、軍事力を見せつける一方で、交通や観光関係のインフラを中心に投資を拡大してきました。

 中国はFANCとFAPFの中間に位置する国・地域を南太平洋上の重要な工作拠点と位置付けており、たとえば、2006年12月にフィジーでフランク・バイニマラマ軍司令官による軍事クーデターが発生した際には、西側諸国が軍事政権に援助停止や入国禁止等の圧力を加えたのに対して、中国のみが援助を急増させ、これを機に、フィジーの政財界にしっかり食い込むことになりました。

 このほかにも、中国は借款などを通じて南太平洋の島国への影響力を強めていますが、当然のことながら、中国の急激な進出に対する住民の不満も強く、各国で反中国人暴動が発生すると、豪軍やニュージーランド軍が鎮圧に派兵するという事態が起きています。

 こうした状況の中で、フランスは東シナ海での中国の野心が南太平洋にも及んでくるのではないかと警戒しており、そのため、2014年春の日仏外相戦略対話では、“日本と同じ太平洋の海洋国家”との表現を用い、“法の支配”の原則を堅持して地域の安定に取り組む利益と責任を共有すると表明。さらに、2017年1月7日には、日仏両政府、外務・防衛閣僚協議で、中国を念頭に、“緊張を高める一方的な行動”への強い反対を表明。自制を求めています。

 特に、2017年5月に発足したマクロン政権は、対中強硬路線への本格的な転換を図り、“航行の自由”を確保するため、同年内に5隻の艦船を南シナ海に派遣。さらに、翌2018年3月、マクロンは訪印してモディ首相との会見で「インド洋や太平洋で覇権はあってはならない」と発言し、海軍基地の仏印相互利用を定めた協定に調印しています。

 フランスにとって、ニューカレドニアは、海洋資源、ニッケルが豊富であるだけでなく、欧州の科学技術研究、宇宙開発の拠点でもあるため、ニューカレドニアがフランスから離脱して独立するだけでなく、中国の影響下に置かれることは何としても避けたかったわけで、今回の住民投票を前に、マクロン本人がニューカレドニアを訪問。大統領自ら、植民地支配の“反省”を示すことで、先住民多数派のカナク(独立賛成派が多いとされる)の懐柔に努めていました。

 ちなみに、今回の投票結果について、現地の経営者団体代表は「企業トップの大半は、経済を混乱させないようフランスとの関係維持を望んでいる」と語っていたそうですが、周辺には中国が強い影響力を行使している国も少なくありませんので、今後も油断は禁物です。
 

★★ トークイベント・講演のご案内 ★★

 以下のスケジュールで、トークイベント・講演を行いますので、よろしくお願いします。(詳細は、イベント名をクリックしてリンク先の主催者サイト等をご覧ください)

 11月11日(日) 昭和12年学会大会 於・ベルサール神田
 「昭和切手の発行」 *入場は無料ですが、学会への御入会が必要です。

 11月16日(金) 全国切手展<JAPEX 2018> 於・都立産業貿易センター台東館
 15:30- 「チェ・ゲバラとキューバ革命」 *切手展の入場料が必要です

 12月9日(日) 東海郵趣連盟切手展 於・名古屋市市政資料館 
 午前中 「韓国現代史と切手」

 12月16日(日) 武蔵野大学日曜講演会 於・武蔵野大学武蔵野キャンパス
 10:00-11:30 「切手と仏教」 予約不要・聴講無料


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 フランスで国家非常事態宣言
2015-11-14 Sat 22:40
 パリで、現地時間13日夜(日本時間14日未明)、銃撃や爆弾などによるレストラン、コンサートホール、スタジアムなどへの複数の襲撃が市内各地でほぼ同時に発生し、この記事を書いている時点で、128人が亡くなり、180人が重軽傷を負うという大惨事となりました。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、負傷された方々には心よりお見舞い申し上げます。

 事件について、オランド大統領は前例のないテロ行為と非難し、国家非常事態(l'état d'urgence)を宣言しました。第二次大戦以降、フランス本国での国家非常事態宣言は、2005年10月27日にパリ郊外で北アフリカ出身の3人の若者が警察に追われ逃げ込んだ変電所で感電し、死傷したことをきっかけにフランス全土で暴動が発生したのを受けて、同年11月に発せられたのが最初で、今回が2回目です。いわゆる仏領地域まで含めると、独立戦争時のアルジェリアで1955年、1958年、1961年の3回、1984年のニューカレドニアの事例があるだけです。というわけで、今日はこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      ニューカレドニア・第4回太平洋芸術祭

 これは、1985年7月3日にニューカレドニアで発行された第4回太平洋芸術祭の記念切手です。

 太平洋芸術祭は、オセアニアの国・地域の文化交流を促進するために4年に1度開催される国際イベントで、第1回芸術祭は1972年にフィジーで開催されました。
 
 第4回の芸術祭は、当初、1984年にフランスの海外領土であるニューカレドニアで開催の予定でした。ところが、芸術祭開催の決定後、ニューカレドニアでは、ジャン=マリー・チバウひきいる社会主義カナック民族解放戦線(Front de libération nationale kanak et socialiste:FLNKS)は独立国家“カナキー”の樹立を主張し、独立運動を激化させたため、芸術祭の開催時期は当初予定より1年延期して、1985年7月とされました。こうした中で、1984年、FLNKSの活動家が警察官によって殺害されると、大規模な暴動が発生。フランス政府は、ニューカレドニア全土に非常事態宣言を発しました。

 この結果、ニューカレドニアでの第4回芸術祭の開催は不可能となったため、1985年3月、急遽、フランス領ポリネシアの首府パペーテで、同年6月28日から7月15日の日程で芸術祭が開催されることになりました。

 これを受けて、ニューカレドニアで用意されていた芸術祭の切手は、当初の会期を印刷した部分を抹消し、新たな会期・会場を加刷して、芸術祭期間中の7月3日に発行されました。今回ご紹介の切手については、さらに、パペーテで開催された芸術祭のロゴマークも加刷されています。

 なお、ニューカレドニアの独立運動をめぐる動きとしては、1998年に“ヌーメア協定”が結ばれ、①住民に対してフランス市民権とは別の“ニューカレドニア市民権”を与える、②フランス国旗とは別に、ニューカレドニア“国旗”などの公的なシンボルを制定する、③フランス政府はニューカレドニア特別共同体に段階的に権限を譲渡することなどが決められ、2018年までに、独立かフランス残留かの住民投票を行うことになっています。


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