内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界の国々:フランス植民地帝国
2016-08-03 Wed 08:34
 アシェット・コレクションズ・ジャパンの週刊『世界の切手コレクション』2016年8月3日号が先週発行されました。僕が担当したメイン特集「世界の国々」のコーナーは、今回はフランス植民地帝国の特集です。その記事の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      フランス植民地帝国(1862)

 これは、1862年に発行されたフランス植民地共通の1サンチーム切手です。

 日本語の“帝国”は、もともとはオランダ語で神聖ローマ帝国を意味する“Keizerdom”に対して江戸時代の蘭学者があてた訳語で、この語では、皇帝を国家元首としていただく国という意味になります。

 これに対して、明治以降、英語の“Empire”などに対しても“帝国”の訳語があてられましたが、こちらは、必ずしも、国家元首が“皇帝”を称している国ということではなく、本国とは別に、通常であれば一国を形成しうるレベルの他民族・領域を支配している国家を意味しています。したがって、本国の政治体制としては、君主制に限定されず、共和制もありうるわけです。いわゆる“帝国主義”というのは、後者の用例で、共和国であるフランスがその植民地・海外領土を含めて“フランス植民地帝国”と呼ばれるのはこのためです。

 フランス人の海外進出は、1534年、フランソワ1世の命によりジャック・カルティエが北米・セントローレンス川を探検したのが最初で、17世紀初にはカナダのアカディアとケベックに植民地が建設されました。さらに、1699年にミシシッピ川流域にルイジアナ植民地が樹立されたほか、カリブ海や南米にも植民地が建設されました。一方、1673年のシャンデルナゴル植民地の創設以降、フランスはインドにも進出。しかし、1756年に始まる7年戦争から19世紀にいたるナポレオン戦争を経て、フランスは海上覇権を英国に奪われ、南北アメリカの植民地の大半を喪失しました。

 19世紀に入ると、フランスはアルジェリアを皮切りにアフリカ進出を本格化。こうした状況の中で、1859年から、右向きの鷲を描くフランス植民地共通切手の発行が開始されます。今回ご紹介の切手はそのうちの1862年に発行された1サンチーム切手です。

 ヨーロッパの伝統では、鳥の王である鷲は“皇帝”の象徴として、ローマ帝国以来、しばしば紋章のデザインに用いられており、紋章学の世界では動物は左向きに描くのが原則でしたが、フランス革命を経て1804年にフランス皇帝となったナポレオン1世は既成概念を打破するため、あえて右向きの鷲を帝国の紋章として採用しました。1852-70年の第2帝政の皇帝、ナポレオン3世は、偉大なる叔父の威光に倣い、右向きの鷲を帝国の紋章として踏襲したため、1859年から発行が開始されたフランス植民地共通の切手でも、このデザインとなりました。

 その後、1871年の普仏戦争敗戦を経て、フランスはインドシナへの進出を本格化するとともに、アフリカ北部・西部・中部の横断政策を進め、第一次大戦後はシリアとレバノンも獲得しました。しかし、第二次大戦後はインドシナ戦争アルジェリアの独立闘争を経て、1960年にはアフリカの植民地の大半が独立。現在では、海外県5、海外準県4、海外領土2が残るのみとなっています。

 さて、『世界の切手コレクション』8月3日号の「世界の国々」では、アフリカを中心としたフランス植民地帝国の歴史をまとめた長文コラムのほか、フランコフォニー、仏印の米作プランテーション、サハラ南部のサヘル地域、探検家ルネ・カイエの切手などもご紹介しております。機会がありましたら、ぜひ、書店などで実物を手に取ってご覧いただけると幸いです。

 なお、「世界の国々」の僕の担当回ですが、次回は、本日発売の8月10日号でのアジュマーンの特集になります。こちらについては、発行日以降、このブログでもご紹介する予定です。
 

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 於 東京・日本橋富沢町8番地 綿商会館
 詳細は主催者HPをご覧ください。

 新作『リオデジャネイロ歴史紀行』の奥付上の刊行日は8月9日ですが、8月3日頃には現物ができあがってくるとの連絡がありました。そこで、さっそく、同書を中心に拙著を担いで行商に行きます。実物の販売は、この日が初売りとなる予定です。ぜひ遊びに来てください。


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