内藤陽介 Yosuke NAITO
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World Wide Weblog
 世界の国々:アジュマーン
2016-08-14 Sun 11:52
 アシェット・コレクションズ・ジャパンの週刊『世界の切手コレクション』2016年8月10日号が先週発行されました。僕が担当したメイン特集「世界の国々」のコーナーは、今回はアラブ首長国連邦(UAE)のうちアジュマーンの特集です。その記事の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      アジュマーン・日本宛カバー

 これは、UAE発足後の1972年、移行期間として暫定的に有効だったアジュマーン切手を貼って差し出された日本宛の書留便です。宛先は大阪の著名な切手商ですから、フィラテリック・カバーであることは明らかなのですが、“アジュマーン国”表示の切手に“アジュマーン UAE”の消印が押されているところが、移行期間内のカバーであることをはっきり示しており、良い感じです。

 UAEの構成国であるアジュマーン首長国(以下、アジュマーン)は、ペルシャ湾に面して三方をシャルジャに囲まれており、2008年の人口は約36万人。面積は、UAEを構成する首長国のうち最小の260平方キロで、都市国家に近いといえます。年間平均気温は25.5℃ですが、30℃を越える6-9月と、20℃弱の12-3月で寒暖の差があり、年間降水量は101ミリです。

 現在のアジュマーンに相当する地域には5000年以上前から人間が生活していたことを示す遺跡が見つかっていますが、首長国としての歴史は、1810年、アラビア半島東北部のシャムス族の内紛を経て、ラーシド・ビン・フマイド・ヌアイミー(ラーシド1世、在位1810-16年)がシャルジャから自立してペルシャ湾岸に建国したのが原点とされています。

 1823年、アジュマーンが英国と休戦協定を結んでその保護下に入った当時の状況について、現地を視察した英国人は、①ペルシャ湾岸でも有数の良港だが、首長の邸宅しか大きな建物はない、②他の湾岸首長国同様、人口は季節ごとの変動が大きく、毎年4-9月の真珠取りの季節には1400-1700人の人がいるが、それ以外の季節はナツメヤシの収穫のために域外に出稼ぎに出てしまい、コアな人口は750人程度である、③住民の大半は厳格なワッハーブ派のムスリムである、との報告を残しています。

 アジュマーンにおける近代国家建設は、1928年に即位した第9代首長、ラーシド4世の時代によって急速に進められました。1902年生まれのラーシド4世は、1981年に亡くなるまで、53年の長きにわたって首長の座に君臨。この間、1947年にマスフート城を、1961年にマスフート門を、1976年にハッサ・ブワイド城を建設しただけでなく、1967年には、アジュマーンに近代警察制度を導入しました。また、アジュマーンとして最初の切手が発行されたの、彼の治世下のことです。

 すなわち、1963年、英国がアジュマーンを含む休戦協定諸国に現地の郵政権を移譲すると、米国の切手商フィンバー・ケニーは、この機会をとらえて、翌1964年、アジュマーン政府に対して、一定の金額を納入する代わりにアジュマーン名義の切手を制作し、全世界に販売する独占権を獲得。その後、ケニーは休戦協定諸国のフジャイラ首長とも同様の契約を結んでおり、その他の首長国も他のエージェントを使うなどして、輸出商品としての切手を続々と発行し始めました。

 さらに、1966年7月5日にマナーマに郵便局が開設されると、この地域の人口はきわめてわずかで郵便の需要もほとんど認めなかったにもかかわらず、アジュマーン本土とは別に、“アジュマーン属領マナーマ(バハレーンの首都と同名ですが、シャルジャ本土とフジャイラ本土の境界地帯に位置する別の土地です)”名義の切手も発行されています。

 ケニーの制作した切手は、首長国域内で使うためというよりも、諸外国のコレクター向けに輸出して外貨を稼ぐことを第一の目的としていたため、宇宙探検や東京オリンピック(1964年)など、アジュマーンやフジャイラとはほとんど無関係の内容のものが大半を占めており、ラベルまがいの“いかがわしい切手”として多くのコレクターからは敬遠されました。なお、1971年末にUAEが発足し、アジュマーンもそれに加盟すると、各首長国の郵政は統合され、連邦としての統一切手が発行されることになり、各首長国による“いかがわしい切手”の発行も停止されることになります。

 さて、『世界の切手コレクション』8月10日号の「世界の国々」では、アジュマーンの歴史をまとめた長文コラムのほか、鷹狩文化、ナツメヤシ、ハジャル山脈、現首長フマイド5世の切手などもご紹介しております。機会がありましたら、ぜひ、書店などで実物を手に取ってご覧いただけると幸いです。

 なお、「世界の国々」の僕の担当回ですが、次回は、1週お休みをいただいて、8月24日号でのルーマニアの特集になります。こちらについては、発行日以降、このブログでもご紹介する予定です。

 *  リオデジャネイロ五輪9日目(現地時間13日)は、残念ながら、日本選手のメダル獲得はありませんでしたので、メダル獲得競技の切手のご紹介はお休みです。


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