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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ブルネイでハッド刑実施
2019-04-03 Wed 02:11
 東南アジアのブルネイで、きょう(3日)から刑法が改正され、コーランに刑罰の内容が明記された刑罰(ハッド刑)が厳格に実施されます。これにより、同国在住の外国人や旅行者であっても、同性愛行為や不倫には石打ちによる死刑が科される可能性がでてきました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      ブルネイ最初の切手

 これは、1895年にブルネイ最初の切手として発行されたローカル切手です。

 現在のブルネイ王室は、14世紀末、アラク・ベタタール王がイスラムに改宗し、1405年、初代スルターン(イスラムの地方君主)、ムハンマドとして即位したのが始まりです。

 その後、ブルネイはボルネオ島北部の良港という立地を活かして繫栄し、第5代スルターンのボルキア(在位:1473-1521年)の時代には、現在のサバ州サラワク州及びフィリピン南部を統治し、王国として最盛期を迎えます。

 しかし、19世紀に入ると住民の反乱が相次ぐようになったことから、ブルネイのスルターンは、1839年、クチンにやって来た英国人探検家ジェームズ・ブルックに鎮圧を依頼。ブルックは、英国海峡植民地政庁の協力で鎮圧に成功し、サラワクを割譲されて藩王(ラジャ)に任じられました。以後、ブルックは次々と領土を拡大。その結果、ブルネイは国土の大半を失い、1888年には英国と保護条約を結び、外交権を失います。

 こうした経緯を経て、1895年、スルターンのハーシムは、ブルネイの郵便事業と切手発行について民間会社と契約を結び、同年7月22日、英国の貿易銀を額面とするローカル切手を発行しました。今回ご紹介の切手はその1種で、バンダルブルネイ(現バンダルスリブガワン)の港湾風景を背景に、中央に星を大きく描き、その上にアラビア文字の国名が入った三日月がデザインされています。なお、切手は、グラスゴーのマクルール・マクドナルド社で製造されました。

 切手は、ブルネイ国内およびラブアン宛の郵便物にのみ有効で、それより先の外国宛郵便物については、1906年にブルネイがUPU加盟国になるまで、ラブアンで同地発の外国郵便と同額のラブアン切手を貼って対応していました。なお、1906年のUPU加盟以降は、ラブアン切手にブルネイの地名表示を加刷した切手が使われるようになり、1907年には、ブルネイとして独自の正刷切手の発行が始まりました。

 1906年、ブルネイは内政を含め英国の保護領となりましたが、 第二次大戦中の日本軍による占領時代を経て、1959年、内政の自治を回復。 1984年には英国からの完全独立を達成し、現在に至っています。

 さて、独立後のブルネイの政体は、形式上は立憲君主制となっていますが、実際には、法律の最終制定権は国王が有し、司法においても裁判官は国王が任命することになっています。また、独立以前の1967年に即位したハサナル・ボルキアは、半世紀以上に渡り、宗教上の権威であるとともに、国政全般を掌握(現在も国王が首相、国防相、財務経済相、外相を兼任)し続けており、事実上、絶対君主制の国となっています。

 こうした中で、2004年、独立以来停止していた立法評議会(国会)が再開され、憲法改正によって従来の任命議員に公選議員を加えるものとされましたが、その反面、国王は、急激な体制変革を防ぐため、“マレー主義に立つ、イスラム的王政の維持”を国是として掲げ、2014年5月にはハッド刑を導入しています。ただし、2014年の時点では、婚外妊娠や金曜礼拝の怠りを罰金や懲役の対象としたことが国際的な反発を受けたため、ハッド刑の完全施行を3段階に分けて進めるものとされ、今回、それが最終段階に到達したというわけです。

 なお、今回のブルネイの刑法改正については、同性愛者が処罰の対象となっていることから、一部欧米のメディアや人権団体などは“反LGBT法”との表現を使い、人権侵害であるとして激しく非難していますが、ハッド刑が対象としているのは、同性愛や不倫だけでなく、たとえば、窃盗罪には手足を切断する罰則の導入や自宅・ホテル自室以外での飲酒・喫煙の禁止規定など盛り込まれていますので、“反LGBT法”という表現は、かなりミスリーディングです。


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