今日はコロンブス・デイ。コロンブスがアメリカ大陸を発見した日だそうです。
で、コロンブス関連の切手といえば、なんといってもアメリカが1893年に新大陸発見400年記念行事の一環として行われた“コロンブス博覧会”の記念切手が有名ですが、その中から今日はこの1枚をピックアップしてみたいと思います。
この1枚は16種セットの中の4ドル(ちなみに最高額は5ドル)で、コロンブスと彼の航海を支援したイザベラ女王の肖像を並べたものです。
実は、米国切手に女性がとりあげられたのは、この“コロンブス博”が最初のことで、それゆえ、イザベラは米国切手に登場した最初の(実在の)女性ということになります。
我々の感覚からすると、イザベラはアンダルスからイスラム勢力を放逐して“レコンキスタ”を達成し、スペイン統一を成し遂げた鉄の女性というイメージが強いのですが、この“コロンブス博”の切手では、他の額面で宝石を売ってコロンブスの航海を支援した彼女の姿が描かれるなど、ひたすらコロンブスを支援した女性という側面が強調されています。
男女差別の根強かった当時の米国社会では(別に、これは米国に限ったことではありませんが)、切手という国家のメディアを通じて顕彰される女性は、あくまでも男性の成功をサポートする存在でしかありませんでした。このことは、初代大統領夫人をひたすら内助の功で支え続けたマーサ・ワシントン(ジョージ・ワシントンの妻)や、白人とネイティヴ・アメリカンとの“融和”のための人柱となったポカホンタスなどが切手に取り上げられていることからも容易にうかがえます。
ちなみに、19世紀末のアメリカは、スペイン領のキューバを“独立”させて自国の完全な影響下におくことを虎視眈々と狙っていました。この目論見は、1898年、ついに米西戦争というかたちで火を噴くのですが(この辺の経緯については、拙著『反米の世界史 』をご参照いただけると幸いです)、その5年前に、ほかならぬスペインの女王が切手に取り上げられていたというのも、なんだか奇妙な因縁を感じさせます。
PS 10月28~30日の<JAPEX >が終わると、11月1~10日には、東京・白金の明治学院大学 キャンパス内のインブリー館を会場に、「反米の世界史:切手が語るアメリカ拡大の歴史」展を開催します。こちらは、6月に刊行した『反米の世界史 』(講談社現代新書)の実物を展示するというものです。<JAPEX >同様、こちらにも遊びに来ていただけると幸いです。
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