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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 井上コレクション
2006-04-16 Sun 23:58
 昨日から東京・大手町の“ていぱーく(逓信総合博物館)”で開催されている<全日本切手展>(全日展)井上和幸さんのコレクション「在朝鮮日本局郵便史」が郵政公社総裁賞(ベスト・アワード)を受賞されたとのこと。おめでとうございます。

 井上さんのコレクションは、1877年に朝鮮の日本人居留地内に日本の郵便局が設置されてから、1910年の日韓併合に先立って1905年に旧韓国郵政が日本に接収されるまでのプロセスをまとめたもので、朝鮮の近代史にご興味をお持ちの方には、ぜひともご覧いただきたいものです。

 展覧会の会期は20日の木曜日までですので(17日の月曜日は休館ですが)、これから見に行ってみようという方は、僕のブログの3月23日の記事4月13日の記事をお読みいただけると、少しは“予習”していただくうえで役に立つかもしれません。(まぁ、切手にご興味をお持ちの方にとっては、目新しい内容は何もないのですが…)

 で、今日は、そうした過去の“予習テキスト”の続編を兼ねて、こんな切手をご紹介してみたいと思います。

日韓通信合同

 この切手は、1905年の“日韓通信業務合同”を記念して日本で発行されたものです。

 日本にとっての日露戦争の最大の目的は、韓国(1897年に国号を朝鮮から大韓帝国に改称)を勢力圏内に完全に取り込むことにありました。

 それゆえ、開戦早々の1904年2月23日、日本軍の威圧の下、日韓議定書が調印され、日本は韓国内の必要な地点をどこでも軍事基地として用いる権利を獲得します。さらに、同年8月22日には、第1次日韓協約が結ばれ、韓国は、日本人の財政・外交顧問を受け入れることとされました。

 この日韓協約に基づき、日本から派遣された財政顧問の目賀田種太郎は、韓国における通信事業が毎年10万円を超える赤字を出していることを指摘し、韓国は通信事業を日本に委託すべきと主張します。

 韓国(朝鮮)の近代郵便事業は、1884年にいったん発足したものの、折から発生した甲申事変のクーデタによって頓挫し(郵便創業の立役者であった洪英植はクーデタに連座し、処刑された)、再開されたのは1895年7月のことでした。このため、再創業から10年弱の1904年の時点では、まだ相当の初期投資が必要な段階で、赤字が出るのはある程度やむをえないことでもありました。

 しかし、日本側は、あくまでも赤字の解消を主張し、韓国の通信事業を日本に委託することを同意させます。当然、韓国側はこれに反発しのですが、1905年4月1日、「韓国通信期間委託ニ関スル取極書」が調印され、5月18日から日本側による韓国側通信機関の接収が開始されました。この“接収”は同年7月1日までに完了し、これにあわせて、“日韓通信業務合同紀念”として、上の画像のような記念切手が発行されたというわけです。

 切手には、中央の円形の枠の中に額面を示す“参銭”の文字が大きく入っています。上下の鳩は、平和の象徴というより、この場合は通信の象徴として取り上げられたとみるべきでしょう。円形の枠の左側には、韓国皇室の紋章である李花と日本の国家である桜の枝を、同じく右側には、菊花紋章と李花の枝が、それぞれ、配されています。李下の紋章と菊花紋章は、左右同じ高さに配されており、従来の日本切手のように、“大日本帝国郵便”の表示がないこととあいまって、今回の通信業務“合同”が、日韓対等の立場で行われたものであったことをことさらに強調するものとなっています。

 もっとも、日本側がどれほど日韓の“対等”の立場を強調しようとも、この切手が発行される前日の6月30日をもって、韓国切手の売りさばきは停止され、韓国の郵便局も日本側に全て接収されていました。なお、合同前に売りさばかれて、一般の公衆が持っていた韓国切手は、通信業務の合同後も、当面は使用が黙認されていましたが、1909年8月末をもって全て使用が禁止されました。さらに、それから1年後の1910年には、韓国そのものが日本に併合され、地上から消滅してしまうのです。

 実は、井上さんには、昨年、全日展と同時期に日韓文化交流基金の助成を得て東京・目白の切手の博物館で開催した「日韓国交正常化40年記念切手展(通称・コーリア切手展)」にコレクションの名品1点を展示していただきました。その結果、昨年の全日展では、目白の博物館に展示されている1品がないことを理由に、彼のコレクションが総裁賞を逃してしまったということがあって、コーリア切手展の企画に関わっていた僕としては、今回、井上コレクションが無事に総裁賞を獲得したことで、なんとなくホッとしたという気分になっています。

 僕自身は、この土日は予定が詰まっていて大手町の会場にいけなかったのですが、この際ですから、なんとか木曜日までの間に時間の都合を付けて、井上コレクションを拝みに行ってみようと思っています。もちろん、井上コレクション以外にもいろいろと見ごたえのある展示が並んでいるとうかがっていますので、いろいろと眼福にありつけそうです。

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