郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
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 香港國際機場10年
 現在の香港国際空港(香港國際機場)がオープンして、今日でちょうど10周年です。というわけで、今日はこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 香港国際空港

 これは、1998年7月6日の新空港開港に合わせて発行された香港の記念切手です。6種連刷の構成で、空港のみならず、空港と中心部を結ぶエアポート・エクスプレスやランタオ大橋なども取り上げられています。

 かつての香港の国際空港は、九龍市街地のそばにあった啓徳空港でしたが、同空港は1980年代後半の時点で処理能力の限界を越えて稼働されており、しかも地理的に状況から拡張は不可能な状況にありました。

 このため、香港の中国への返還を控えた1989年10月、新空港ならびに中心部から空港までアクセスのための道路・鉄道、地下鉄新路線、大規模コンテナターミナルなどを中心とするPADS計画が発表されます。

 同年6月の天安門事件を機に、香港内のみならず国際社会からも「イギリスは香港の住民を独裁政権の手に売り渡すのか」という批判が噴出。事件後、香港の景気は急速に冷え込み、香港政庁は新たな対応を迫られていました。

 PADS計画は、こうした状況の下で、総額1270億香港ドルに達する総合的な社会資本整備計画として策定されたもので、香港の将来(=返還後)に向けた投資計画を前面に押し出すことで、景気を回復させ、香港経済に対する信任を回復しようとしたものです。

 これに対して、中国側は、PADS計画は資金の負担が大きすぎ、返還後の香港の財政を悪化させると反発。事前に香港政庁からの説明がなかったことへの感情的な反発もあいまって、以後、この問題は財源問題で大きくもめることになっていきます。結局、英中間の最終的な合意は1994年11月に成立するのですが、それまでの間、PADS計画は過渡期の主権問題の象徴としてくすぶり続けることになりました。

 香港国際空港は、このPADS計画の目玉として大嶼(ランタオ)島沖に建設されたもので、当初は、1997年7月1日の返還に合わせて開港のyていでした。ところが、実際には工事が遅れ、大嶼島へ渡る青馬大橋は返還直前に開通したものの、肝心の空港開港は返還後の1998年にずれ込んでいます。

 なお、このあたりの英中間のやり取りについては、拙著『香港歴史漫郵記』でもいろいろとご紹介していますので、機会がありましたら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。

 * 昨日の切手市場での『韓国現代史』の即売・サイン会は無事終了しました。お越しいただきました皆様には、この場をお借りしてあらためてお礼申し上げます。

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アクセス数 (2005年6月1日〜)

プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

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