郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
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 カピトリーノの狼・ルーマニア篇
 古代ローマに先立つエトルリア美術の傑作とされ、ローマ市の象徴となっていたブロンズ像“カピトリーノの雌狼”(バーリの狼)が、放射性炭素年代測定の結果、定説とされていた紀元前5世紀の作品ではなく、中世(8〜14世紀)のものだったことが明らかになったそうです。というわけで、今日はこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ルーマニア・エッセン切手展

 これは、1978年にドイツのエッセンで開かれた切手展の記念切手で、“カピトリーノの狼”が取り上げられています。

 伝説によると、イタリア半島の都市、アルバ・ロンガの王プロカは長男ヌミトルに王位を譲って亡くなりましたが、ヌミトルの弟アムリウスは兄の王位を簒奪し、ヌミトルの息子は殺され、娘レア・シルウィアは処女を義務付けられたウェスタの巫女となります。ところが、ある日シルウィアが眠ったすきに、ローマ神マルスが降りてきて彼女と交わり、シルウィアは双子を出産。怒った叔父の王は双子を川に流してしまいますが、双子は狼に育てられて成長します。その後、兄弟は協力して大叔父を討って、祖父ヌミトル王の復位に協力。兄弟は自分たちが育った丘に戻り、新たな都市を築きました。この丘が現在のローマのルーツです。

 カピトリーノの狼は、この伝説をもとに狼の乳を飲む兄弟の姿を現したもので、ローマの紋章にも取り上げられています。“ローマ“との歴史的紐帯にアイデンティティを求めているルーマニアに対しては、20世紀初頭、イタリアが友好のあかしとして“バーリの狼”像を贈りました。先日、ルーマニアに行った際には、その写真もとってきましたので、ご紹介しましょう。

 ブカレストのバーリの狼

 現在、この像はブカレスト中心部に設置され、その南側のロータリー部分は“ロマーナ広場”と呼ばれています。ちなみに、狼像は道の真ん中にあるのですが、そこから南側の広場の景色はこんな感じです。

 ロマーナ広場

 ところで、狼像は、ブカレストだけではなく、ハンガリーとの国境に近い西部の都市、ティミショアラにもありました。こんな感じです。

 ティミショアラ・勝利広場

 像の部分を拡大するとこうなります。

 ティミショアラ・狼像

 ティミショアラの狼像は、大聖堂前の勝利広場に鎮座しているのですが、周囲が芝生と花に囲まれているので、道路の真ん中で直接、排ガスを浴びているブカレストの狼像よりも絵になります。

 ティミショアラは、その地理的な関係からしても、ハンガリー系の多い街で、第一次大戦後にルーマニア領となった都市ですから、ルーマニア当局としても、ローマとのつながりを強調する意味で、あえてこうした像を街中に建設したのでしょう。

 さて、ルーマニアから帰国して早くも半月が過ぎようとしていますが、いろいろとこなさなければならない用事が多くて、なかなか、昨年の『タイ三都周郵記』に続く“切手紀行シリーズ”の第2弾となる、ルーマニア本の制作に取り掛かれないでいるのが実情です。なんとか、やりかけの仕事を要領よく片付けて、記憶が薄れないうちに作業に取り掛かりたいのですが…。

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アクセス数 (2005年6月1日〜)

プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

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