郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
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 地中海連合発足
 地中海沿岸と欧州の43カ国の代表が参加する首脳会議がパリで開かれ、沿岸国を中心に構成する新たな枠組み「地中海連合」が創設されました。というわけで、なにか“地中海”ネタはないかと思って探してみたら、こんな切手が出てきました。(画像はクリックで拡大されます)

 レバノン・ユスティニアヌス法典

 これは、1967年にレバノンが発行した切手で、首都のベイルートがローマ法学の拠点だったことが表現されています。中央の人物は、ローマ法の集大成『ローマ法大全』の編纂を命じたユスティニアヌス帝で、背後には、ローマ法の影響下にあった地中海世界の地図が描かれています。

 ベイルートのルーツは、古代地中海の交易で栄えたフェニキア人の都市、ベリトスです。この都市は、ローマ時代には東地中海における交易の中心地であると同時に、文化的にも重要な都市となりました。現在のようベイルートと呼ばれるようになったのは、西暦7世紀、イスラム世界に編入されてからのことです。(ただし、アラビア語の発音はバイルートとなりますが…)

 今回の地中海連合の発足にあたっての目玉の一つは、シリアがレバノンとの国交樹立に合意したことにあります。

 さて、第一次大戦以前、東地中海のアラブ地域は“シリア”(歴史的シリア)と呼ばれていました。もちろん、現在はレバノンの首都になっているベイルートも、以前は“シリア”の領域に含まれていました

 ところが、大戦の結果、この地を支配していたオスマン帝国が崩壊すると、歴史的シリアは英仏によって分割されます。このうち、フランスの支配下では、キリスト教徒が人口の過半数を占めるように“大レバノン”が分割され、フランス委任統治領としてのシリアの領域は大きく制限されてしまうことになります。こうした、シリアとレバノンの分割は、1940年代に両国が相次いで独立した後も維持されました。それゆえ、シリア側はレバノンは歴史的にシリアの一部であり、レバノンを“外国”として認めないという姿勢をとってきたわけですが、今回の地中海連合発足にあたって、そうした従来の政策を大きく転換することになったというわけです。

 なお、シリアは、今回、トルコを介してイスラエルとも接触するなど、独立以来の大きな転換点にあり、しばらくは目が離せない状況が続きそうです。

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アクセス数 (2005年6月1日〜)

プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

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