郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
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 韓国の制憲節
 きょう(7月17日)は、韓国では、いまから60年前の1948年に最初の大韓民国憲法が公布されたことにちなみ、“制憲節(憲法記念日)”になっています。というわけで、今日はこの1枚を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

 憲法公布

 これは、1948年8月1日、アメリカ軍政下の南朝鮮(大韓民国の発足は2週間後の8月15日です)で発行された「憲法公布」の記念切手の1枚で、中央政庁(旧総督府庁舎)を背景に家族が描かれています。

 大韓民国の正式発足を控えて、1948年7月17日、政府組織法とともに公布された大韓民国憲法は、制憲憲法ないしは第1共和国憲法とよばれており、前文と103条の条文から構成されています。ちなみに、アメリカ軍政終了後の国号を“大韓民国”とすることは、1週間前の7月10日に国会で正式に決めらました。

 当初、憲法の草案では、大韓民国の政体は国務総理を置く議院内閣制とされていましたが、制憲国会議長の李承晩が米国式の大統領制を強硬に主張し、調整は難航。このため、8月15日に予定されていた新国家発足に間に合わせるべく、大統領の下に国務総理を置き、大統領は国会議員の間接選挙で選ぶとする妥協案が出され、ようやく決着しました。

 ところで、今回ご紹介の切手の印面には、憲法公布当日の7月17日の日付が入っていますが、実際の発行日は8月1日までずれ込んでいます。こうした事例は、当時の南朝鮮切手では珍しいことではなく、初代大統領就任の記念切手も8月5日の発行であるにもかかわらず、切手上には7月24日との日付が入っています

 なお、この切手では、日付表示の年号が西暦ではなく、“檀紀(伝説上の朝鮮の始祖・檀君に由来する暦年。西暦に2333年をプラスする)4281年”となっています。制憲憲法の前文は、「悠久の歴史及び伝統に光輝く我が大韓国民は〜」との文言で始まり、「檀紀4281年7月12日この憲法を制定する」との一節で終わっていますので、切手もこれと平仄を合わせた形になっています。これは、アメリカ軍政の終了と新国家のスタートに合わせて西暦を廃し、自国の伝統とナショナリズムをより前面に押し出すことが必要と判断された結果といえましょう。

 なお、1945年の“解放”後、1948年に大韓民国が正式に発足するまでの、アメリカ軍政下の南朝鮮に関しては、いろいろと面白いマテリアルがあるのですが、その一部については新刊の拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』でもいくつかご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。

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アクセス数 (2005年6月1日〜)

プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

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