郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
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 世界のダム:昭陽ダム
 ご報告が遅くなりましたが、(財)建設業振興基金の機関誌『建設業しんこう』の7月号が出来上がりました。僕が担当している連載「切手の中の世界のダム」では、『韓国現代史:切手でたどる60年』の刊行にあわせて、今回はこの1枚を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

 昭陽江ダム

 これは、1973年10月15日に発行された昭陽江ダムの切手です。

 ソウルの東、約80kmの地点にある江原道の道庁所在地、春川というと、日本ではドラマ「冬のソナタ」の舞台として紹介されることが多いのですが、韓国では、郊外の昭陽江ダム(あるいはそのダム湖である昭陽湖)とダッカルビ(鉄板鳥焼肉)を連想する人のほうが圧倒的に多いようです。このため、日本での“冬ソナ”ブームを知らなかった地元の人たちが、なぜ、日本人観光客が突如として押し寄せるようになったのか、理由がわからず、当初は戸惑いを隠せなかったとか。もっとも、現在では、彼らもしっかりと“冬ソナ”ブームに便乗しているのですが…。

 さて、春川のランドマークともいうべき昭陽江が完成したのは、1973年10月のことでした。

 昭陽江ダムは、漢江水系の支流にあたる昭陽江に建設された韓国最大の多目的ダムで、春川駅からバスで30分ほどのところにあります。その規模は、堤高123メートル、堤頂長530メートル、総貯水量は29億トン。完成すれば日本最大規模となる予定の徳山ダムが総貯水量6億6000万トンであることを考えると、かなり巨大なものです。

 昭陽江ダムの建設事業は、1967年に着工となりましたが、その建設資金の一部は、日韓国交正常化の一環として1970年6月22日に東京で署名された「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」(日韓請求権・経済協力協定)に基づき、日本から78億円の借款を得てまかなわれています。

 今回ご紹介の切手は、ダムの完成に合わせて発行されたもので、左側には、ダムの風景と送電線が描かれています。これは、発電施設としての昭陽江ダムに対する韓国政府の期待が表現されたものと考えてよいでしょう。一方、右側には、ソウルとダムの位置を示す地図が描かれています。

 昭陽江ダムは軍事境界線から50キロ程度しか離れていない(実際、朝鮮戦争の際には、春川の市街地は戦闘により壊滅的な被害を受けている)場所にあるため、韓国当局もダムのセキュリティには神経質になっており、建前としては、許可なくダムの写真を撮影することは禁じられています。もっとも、実際には、紅葉の時期などには写真撮影をして帰る観光客も多く、当局もそれを黙認しているようですが…。

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アクセス数 (2005年6月1日〜)

プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

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