郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
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 モカの木
 日本のモカ・コーヒーの98%以上を占めるエチオピア産のコーヒー豆からから基準値以上の残留農薬が検出され、輸入が事実上ストップしているそうです。というわけで、今日はこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 モカ・カバー

 これは、1958年にイエメンの首都サナアから当時は英領だったアデン宛のカバーで、モカ・コーヒーの木を描く6ブガシュ切手が貼られています。この切手は、1947年に製造されたものの、、1958年6月までは正規に発売されなかったといわれていますが、その理由などは調べきれませんでした。なお、今回は切手の向きを優先して、カバーとしては上下逆の画像になっていますが、ご了承ください。

 “モカ”(アラビア語の発音では“ムハ“に近い)というのは、もともとは紅海に面したサナアの外港の地名です。いわゆるモカ・コーヒーの木はエチオピアが原産ですが、アラビア商人たちがそれを世界に広めたため、いつしか、その積出港であったモカの名がコーヒーの名前となりました。現在では、モカの港はすっかり寂れてしまいましたが、かつてこの港からイエメン産・エチオピア産のコーヒー豆が輸出されていたことから、現在でも、両国産のコーヒー豆は“モカ”と総称されています。

 イエメン産とエチオピア産を特に区別する必要がある時は、イエメン産のものを“モカ・マタリ”と呼ぶことがあります。 かつて、“コーヒー・ルンバ”に歌われたのは、このモカ・マタリで、エチオピア産に比べると値段も高めです。したがって、単に“モカ”とだけある場合には、エチオピア産とみてよさそうです。

 ところで、今回の農薬問題に関しては、すでに業界トップのUCC上島珈琲がモカを使った業務用商品の販売を停止し、ブレンドコーヒーの一部もモカ以外の豆で代替し始めたほか、喫茶店チェーンの珈琲館でも先週17日からモカのネット販売を休止するなど、 そろそろ、影響が出始めています。

 もちろん、業界側もこの問題を放置していたわけではなく、今年6月には全日本コーヒー協会が現地に調査団を派遣し、麻袋から残留農薬を検出するなどしましたが、結局、原因は特定できなかったようです。これに対して、エチオピア側は「日本は細かすぎる。他の国は何も言ってこない」などと主張しており、現時点では輸入再開のめどが立っていません。

 このまま行くと、モカ・マタリとフツーのモカの値段が逆転するようなことになるのかもしれませんが、味の実力という点では、やはりモカ・マタリの方が上ですからねぇ。妙な下剋上にならないといいのですが…。

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アクセス数 (2005年6月1日〜)

プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

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