郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
06 | 2008/07 | 08
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

 海戦大勝370年
 今日は海の日。というわけで、新刊の拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』の中から、海にちなんでこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 海戦大勝370年

 これは、1962年8月14日に発行された“海戦大勝370年“の記念切手の1枚で、李舜臣の亀甲船が取り上げられています。

 1961年5月のクーデターで政権を掌握する以前から、朴正煕は、経済開発のためには外資の導入が不可欠であり、そのためには日本との国交正常化を急ぐ必要があると考えていました。このため、朴は政権掌握早々、日本との関係改善にむけて積極的に動き出し、“5・16革命”から半年後の1961年11月には、社会的な混乱が続く中で、みずから訪米の途上で日本に立ち寄り、日本の首相・池田勇人と会談しています。

 ところで、韓国の最高指導者となった朴は日本の陸軍士官学校を卒業していますが、このことは、日本側には好感を持って迎えられた反面、韓国国内では“(ネガティヴな意味での)親日派”としてとらえられ、そのことは日韓会談そのものへの反対論の一要因ともなっていました。

 そこで、悪しき“親日派”とのイメージを払拭し、民族主義者としてのイメージを強調することが求められた朴政権は、国内世論への配慮から、1962年8月14日というタイミングで、今回ご紹介している“海戦大勝370年”の記念切手を発行します。

 切手の題材とされた“海戦”とは、1592年の“壬辰の倭乱”(日本でいう“文禄の役”です)に際して、李舜臣ひきいる朝鮮水軍が亀甲船を用いて日本水軍に壊滅的な打撃を与えた戦いのことです。この事件じたいは韓国国民にとってきわめて重要な歴史的意義を持つものですが、370年という半端な年回りで、あえて記念切手が発行されたことについては、やはり、“日本に対する勝利”を強調することで、国民の“親日派”批判に答えようとしたという意図が政府にあったとみることができます。ちなみに、歴史的な事実関係でいえば、朝鮮水軍が大勝利を収めたのは、1592年7月でしたが、切手の発行日は8月14日で設定されており、翌15日の光復節(解放記念日)が意識されているのは間違いないでしょう。

 もっとも、日本との国交正常化を進めようという中での李舜臣の扱いというのは微妙なものがあったようで、今回の切手でも、韓国側の勝利を大々的に宣伝する一方で、悪役としての日本についてはほとんど触れていません。これは、たとえば、1982年の「歴史絵画シリーズ」で、やはり、李舜臣の海戦を取り上げた切手が発行された際に、撃退される日本の水軍が描かれているのとは対照的で、韓国なりの日本に対する“配慮”があったということなのかもしれません。

 いずれにせよ、歴代の韓国政府は、国内問題でトラブルが発生すると、“反日“を持ち出してきて求心力を高めようという悪癖があるのですが、その場合の“反日”の度合いが本音のところではどの程度のものであるのか、我々からはなかなか見えにくいのが厄介なところです。

 トーク・イベントのご案内
 8月2・3日(土・日)に東京・大手町のていぱーくで開催のサマーペックス会場内にて、拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』の刊行を記念したトーク・イベントを行います。2日は14:00から、いわゆる“竹島切手“についての話題を中心に、3日は14:30から、韓国切手に見る日本時代の“遺産”についての話題を中心に、お話しする予定です。サマーペックスのHPにアクセスしていただくと、無料の招待チケットをプリントアウトしていただくことができます。当日は、会場ならではの特典もご用意しておりますので、よろしかったら、ぜひ、遊びに来てください。

 もう一度切手を集めてみたくなったら 
 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。  


アクセス数 (2005年6月1日〜)

プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

月別アーカイブ

最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード

Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ