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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 W杯開幕
2010-06-11 Fri 07:39
 きょう(11日)から、サッカーのFIFAワールドカップ南アフリカ大会が開幕します。きのうから滞在中のソウルでも、さすがにワールドカップ一色という雰囲気ではないのですが、そこそこ、関連の広告や赤いシャツを着た人たちの姿なども見られます。というわけで、韓国のサッカー切手の中から赤シャツが目立つこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      第10回大統領杯サッカー

 これは、1980年8月に発行された“第10回大統領杯サッカー”の記念切手です。

 韓国の大統領杯サッカーは、もともと、朴正煕政権下の1971年、“朴大統領杯争奪アジアサッカー大会”との名称でスタートしました。世界的に見れば、故人の名を冠したスポーツイベントは珍しいものではありませんので、“朴大統領杯”の名称がそのまま続いても問題はなさそうなのですが、朴の名前は削除されています。それなら、朴の後継大統領となった崔圭夏にちなんで“崔大統領杯”となってもよさそうなものだが、実際にはそうなってもいません。

 1979年12月、いわゆる粛軍クーデターで軍の実権を掌握した全斗煥は、1980年5月17日の非常戒厳令の布告と翌18日から27日にかけての光州事件を経て、軍と政府における最高実力者としての地位を実質的に確保しました。こうした状況を受けて、5月31日に設置されたのが国家保衛非常対策委員会(以下、国保委)です。

 国保委は、本来、非常戒厳下で国家を保衛するための国策事項を審議し・議決するとともに、大統領の諮問に応じて、大統領を補佐するための機関で、重要閣僚10名、軍幹部14名の計24名で構成されていましたが、行政・司法の全般にわたって指揮・監督・統制・調整の機能を持っており、実質的には国政の最高機関となっていました。その中核を担っていたのが常任委員会で、中央情報部長代理だった全は、大統領の崔からその委員長に任じられます。これにより、全斗煥の権力は制度的にも担保されることになりました。

 さて、国保委は、6月13日、“権力型不正蓄財者”への処罰を行い、金鐘泌(前共和党総裁・元国務総理)や李厚洛(元中央情報部長)など、朴政権時代の実力者たちをあいついでパージ。すでに、金大中ら民主運動家は、5月17日の非常戒厳令の布告と同時に、内乱陰謀を企てたとして逮捕されていましたから、これにより、全が大統領に就任する上での障害は完全に除去されたことになります。

 はたして、8月5日、大将に昇格した全は、「困難な国運を切り開き、福祉国家を子孫に残すべきだ」と演説し、政界進出への意欲を正式に表明しました。

 これに対して、8日には、在韓米軍の司令官ウィッカムが「全斗煥将軍が大統領に就任した場合、アメリカはこれを支持する用意がある」と発言。さらに、8月16日、「この国における平和的な政権交代の模範を示すため、大統領を辞任する」として崔圭夏が大統領を辞任。つづけて、崔は、21日、「全斗煥国保委常任委員長の大統領就任を支持する」と表明します。こうしてお膳立てが整ったところで、翌22日、全は軍を退役し、27日の統一主体国民会議による大統領選挙によって、正式に第11代大統領に選出されました。

 こうした経緯があったため、全の大統領就任が時間の問題となっていた6月以降、大会の主催者と韓国郵政は、8月の大会当日までには、いつ大統領の交代があってもおかしくないと考え、大統領の個人名を大会から外したのではないかと考えられます。

 なお、朴正熙の暗殺から全斗煥時代にいたるさまざまな動きは、切手や郵便物にもいろいろな痕跡を残しています。それらについては、拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』でもいろいろとご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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