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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 きょう、英国で国民投票
2016-06-23 Thu 15:41
 英国が欧州連合(EU)から離脱するか、それとも残留するかを決める国民投票が、きょう(23日)、実施されます。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      英国・EC加盟
 
 これは、1973年、EUの前身であるECに英国が加盟した際の記念切手です。

 第二次世界大戦後の米ソ二大国の対立という構造の中に埋没することを恐れたヨーロッパでは、フランスと西ドイツの主導により、1952年のヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)、1958年のヨーロッパ経済共同体(EEC)の結成で、部分的にせよ、ヨーロッパ共同市場を形成しました。

 しかし、この段階では、英国は米国との提携を重視してヨーロッパ統合には反対の立場であったことに加え、そもそも、英連邦との経済的な結びつきが強く、ヨーロッパ大陸諸国との経済協力の必要性をさほど感じていなかったという事情があり、ECSC・EECのいずれにも参加しませんでした。それどころか、1960年にはEECに対抗し、ヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)を結成しています。

 ところが、EECの結成により大陸西欧諸国が急激に経済成長を遂げたのに対して、英国主導のEFTAは振るわず、英国は徐々に経済的に追い詰められていきました。このため、1963年、保守党のマクミラン内閣は方針を転換してEEC加盟を申請しています。ただし、この時点でも英国は将来の統一通貨には反対の姿勢を崩していませんでした。一方、英国の加盟申請に対しては、EEC側でもフランスのド・ゴール大統領が“(米国の)トロイの木馬”と非難し、頑強に反対し続けます。

 1967年、EECはヨーロッパ共同体(EC)に改組されると、英国もこれを機に労働党のウィルソン内閣が加盟申請を行いましたが、やはり、フランスの反対により実現していませんでした。

 しかし、1970年に英国のEC加盟に絶対反対の立場だったド・ゴールが亡くなったことに加え、1971年のドル・ショック、1973年の石油ショックで西側経済が大きな打撃を受けたことを機に、欧州経済統合の拡大に迫られたことなどから、同年、ようやく保守党のヒース内閣によって英国のEC加盟が実現。同時に、アイルランド、デンマークの加盟が認められたことから、“拡大EC”と呼ばれるようになりました。

 以来、40年以上にわたり、ECがEUに変わっても英国はその域内にとどまっていたわけですが、通貨としてはユーロを導入せずにポンドを使い続けているほか、また、ヨーロッパ内の国境を廃止し、行き来を自由化するシェンゲン協定にも加盟していません。

 今回、EUへの残留か離脱かを問う国民投票が行われるようになった背景としては、①2004年以降、東欧諸国がEUに新規加盟したことで移民の流入が増加していたところへ、昨年以来の難民危機が追い打ちをかけ、域内のヒトの移動の自由というEUの基本理念そのものへの疑問や反対論が増してきたこと、②2011年以降のユーロ危機への対応に、非ユーロ加盟国の英国が巻き込まれ、結果的に、EUの官僚組織が“焼け太り”になったと英国の目には映ったこと、の2点が挙げられています。

 ただし、実際にEUを離脱してしまうと、英国製品の欧州向け輸出には高率の関税と煩瑣な手続きが必要になるため、EU向け製品の工場を英国に設立している各国企業が英国から撤退することになり、英国経済は大きなダメージを受けることが予想されています。

 こうしたこともあって、英の各調査会社が昨日(22日)発表した世論調査でも、オピニウムが離脱45%で残留44%、TNSが離脱43%、残留41%と離脱、コムレスが残留48%、離脱42%、ユーガブが残留51%、離脱49%と結果が入り乱れています。ただし、傾向としては、投票を前に残留派の女性国会議員が暗殺される事件が起きたこともあって、残留派の比率は徐々に上がってきていますが、さてさて…。


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