内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:竿燈
2017-08-04 Fri 07:42
 公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』2017年8月号ができあがりました。僕の連載「切手歳時記」は、今回はこの1点を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      大阪万博・竿燈

 これは、1970年6月15日に発行された大阪万博の記念切手(第2次)のうち、竿燈とパビリオンを取り上げた7円切手です。

 毎年8月3-6日に秋田県秋田市で行われる“秋田竿燈まつり”は、竿燈全体を稲穂に、連なる提灯を米俵に見立て、額・腰・肩などにのせ、豊作を祈る祭です。

 秋田には、すでに江戸時代以前から“ねぶりながし”の習慣がありました。“ねぶり”とは“眠り”のことで、黄泉や常夜の意味でもあります。そこから、“ねぶりながし”は「黄泉の穢れを祓いて水に流す行事」として、古くは七夕に笹や合歓木に願い事を書いた短冊を下げ、それを手に練り歩いたうえ、川へ流して邪気を払っていたといわれています。

 その後、宝暦年間(1751-64)になると、蝋燭が普及したこともあって、外町(町人街)の町人が、五穀豊穣や無病息災などを願い、お盆を前に、門前に立てる高灯籠を持ち歩けるようにしたのが、現在の竿燈の原型となりました。

 1789年に津村淙庵が著した『雪の降る道』には、秋田独自の風俗として、陰暦7月6日の“ねぶりながし”が紹介されていますが、同書には、長い竿を十文字に構え、それに燈火を数多く付けて、太鼓を打ちながら町を練り歩くようすが記されています。

 ちなみに、“竿燈”という言葉は、1881年に秋田日報を創刊した大久保鐵作が、中国・北宋の禅僧、道原が11世紀初に編纂した燈史『景徳傳燈録』に記述のある“百尺竿頭須進歩”からヒントを得て命名したもので、江戸時代には、提灯をつけた竿は、作り燈籠、ネブリナガシ、七夕などの名前で呼ばれていました。

 しかし、大久保が竿燈という言葉を考案した頃から、皮肉にも、秋田の竿燈は徐々に下火になっていきます。この頃から、市内に電灯がともり、電線が張り巡らされて物理的に竿燈を掲げることが難しくなったためです。このため、1902年には、発祥の地である外町通りでの竿燈が廃止。翌年からは竿燈は楢山グランドに場所を移して行われたものの、下駄履きで歩き回るためにグランドが荒れることから、グランド側は3年間で竿燈に場所を貸すことを拒否するようになりました。そこで、再び、外町が竿燈の会場となったものの、電線の折損事故が絶えず、1907年には千秋公園二の丸が会場となります。

 こうして、一時は存続の危機に瀕した竿燈でしたが、1908年、皇太子・嘉仁親王(後の大正天皇)の東北行啓の際に台覧の栄に浴し、また、大正時代に入ると他県からの観光客も訪れるようになったことで、次第に活気を取り戻していきます。こうした事情を踏まえて、1931年には秋田市竿燈会が結成されました。

 その後、1937年に日中戦争(支那事変)が始まると、1945年の終戦まで竿燈は中断されましたが、終戦後すぐに早坂吉助会長以下、竿燈会は竿燈の復活に向け動き出し、早くも翌年にはまつりを復活させます。ただし、当時は提灯に必要な紙や油も不足していたため、1946年のまつりの開催は、例年より大幅に遅い、9月29日となりました。

 復活当初は1日だけだった竿燈まつりは、1954年からは2日間、1964年からは3日間に拡大され、1988年以降は、現在と同じ4日間となっています。この間、1970年の大阪万博に際しては、会場内お祭り広場で披露された日本各地の祭りを代表して、記念切手にも取り上げられ、その知名度は全世界に広がることになりました。

 ちなみに、竿燈は大きさにより、大若、中若、小若、幼若に分けられます。提灯の数は、大若と中若が最上段2個、二段目4個、3-8段目6個、最下段(9段目)4個、小若と幼若は最上段2個、2段目-6段目4個、最下段(7段目)2個という構成ですが、今回ご紹介の切手では、デザイン上の都合から、最下段に6個の提灯が下げられています。
 

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 【出版元より】
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 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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