内藤陽介 Yosuke NAITO
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 バルフォア宣言100年
2017-11-02 Thu 09:04
 1917年11月2日、アーサー・バルフォア英外相名義で、英国が大戦後にパレスチナにユダヤ人の国家を建設することを認めた“バルフォア宣言”が発せられてから、きょう(2日)でちょうど100年です。というわけで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      イスラエル・バルフォア宣言50年

 これは、1967年にイスラエルが発行した“バルフォア宣言50年”の記念切手のうち、バルフォア外相の肖像を取り上げた40アゴロット切手です。タブの部分には、エレミヤ書第31章17の一節「あなたの子供たちは自分の国に帰ってくると主は言われる。」との文言が印刷されています。

 第一次大戦中、ロンドンではシオニズム(世界各地に離散したユダヤ人が“民族的郷土”であるシオンの丘=エルサレムに結集し、ユダヤ人国家を再建しようという政治的主張)の運動を展開していたシオニストたちが英国政府の支援を取り付けるべく工作を展開していました。

 そうしたなかで、シオニスト評議会の議長で、英海軍省の技術顧問だったハイム・ヴァイツマンは、第一次大戦の勃発後、英国に協力し、自らが開発したバクテリア発酵法(無煙火薬の原料となるアセトンをデンプンから合成する技術)の工業化に成功。この結果、年間3万トンのアセトンが英国軍に供給されることになり、その功績から、英政府・軍とのコネクション築きました。

 ヴァイツマンは、そうした人脈を最大限に活用し、アーサー・バルフォア外相から、ユダヤ系貴族院議員ライオネル・ウォルター・ロスチャイルド男爵宛の書簡というかたちで、「英国政府は、ユダヤ人がパレスチナの地に民族的郷土を樹立することを好意的に見ており、その目的の達成のために最大限の努力をいたします。ただし、すでにパレスチナに在住している非ユダヤ人の市民権、宗教的権利、及び他の諸国に住むユダヤ人が享受している諸権利と政治的地位が、これによって害されるものではないことは明確に了解されます」との表明させることに成功しました。

 これがバルフォア宣言です。

 しかし、この時点で、英国はアラブに対して、英国とともにオスマン帝国と戦えば、大戦後、中東地域にアラブの独立国を樹立することを約束していた(フサイン・マクマホン書簡。ただし英国はアラブに対して“独立国”の範囲を明確にしていません)ほか、フランスとは、東地中海のアラブ地域の分割案であるサイクス・ピコ協定をまとめていました。

 こうした中で、1917年11月7日、ロシア10月革命が発生すると、社会主義政権の外相に就任したレフ・トロツキーは旧政権の悪事を暴くとして、サイクス・ピコ協定の内容を暴露。この結果、バルフォア宣言と併せて、中東における英国の“三枚舌外交”が明らかになり、国際世論は騒然となります。

 そこで、釈明を求められたバルフォアは、

 ①メソポタミアは英国の自由裁量(保護国としてのアラブ国家イラク誕生)
 ②レバノンは“純粋なアラブの地”ではなく、フランスの植民地
 ③シリアはフランスの保護下でアラブ人国家となる。ただし、ダマスカス周辺については、“純粋なアラブの地”なのかフランスの勢力圏なのかは不明確
 ④パレスチナは“純粋なアラブの地”の範囲外で、サイクス・ピコ協定で定めた“共同統治”とユダヤ人居住地を意味する“民族的郷土”は矛盾しない、

 とする議会答弁を行い、フサイン・マクマホン書簡、サイクス・ピコ協定、バルフォア宣言の三者は矛盾しないと主張しました。

 これに対して、アラブ側は英国に対して強い不信感を抱きましたが、戦時下においてはともかくもオスマン帝国に対する勝利を優先し、英国と行動を共にしました。しかし、当然のことながら、大戦後、それらの矛盾が噴出。英国によるパレスチナの委任統治が始まると、バルフォア宣言に基づいてパレスチナへの移住を求めるシオニストと、それを拒否するアラブ、そして両者の間で右往左往する英国という3者により、パレスチナは混乱の渦に巻き込まれていくことになります。

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