内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ボルネオの吹き矢
2017-11-07 Tue 11:48
 マレーシアを訪問中のチャールズ英皇太子は、きのう(6日)、ボルネオ島北部サバ州で伝統の武器である吹き矢に挑戦したそうです。というわけで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      英領ノースボルネオ・吹き矢(1939年)

 これは、1939年1月1日、英領ノースボルネオで発行された“先住民(プナン人)の吹き矢”を取り上げた12セント切手です。ちなみに、この切手ではプナン人は長い筒を両手で持って構えていますが、昨日のチャールズ皇太子は、下の写真のように筒の反対側を台に乗せて吹いていました。

      チャールズ・吹き矢

 さて、ボルネオ島北部、現在のマレーシア・サバ州の地域は、かつては、フィリピン諸島とボルネオ島の間に連なるスールー諸島を領土とするスールー王国の支配下にありました。

 1865年、ブルネイ駐在の米領事クロード・リー・モーゼズはノースボルネオの10年間の租借権を獲得しましたが、南北戦争の直後ということもあって、米国政府には植民地経営の余裕がなく、租借権は米国ボルネオ貿易会社に売却されます。しかし、同社はボルネオ経営に失敗し、租借権はオーストリア・ハンガリー帝国の香港領事フォン・オーバーベックに売却されました。フォン・オーバーベックは、当初、本国政府にボルネオ経営を持ちかけたものの失敗し、さらに、イタリアへの売却交渉も不調に終わったため、1880年、ボルネオから撤退します。

 こうした事態を受けて、英系商社・デント商会の係累に当たるアルフレッド・デントが、英国の外交官、ラザフォード・オールコックらの支援を受けて、1881年7月、英国ノースボルネオ会社を設立。翌1882年、ヴィクトリア女王の勅許を得てこの地の統治を始め、1888年7月、ノースボルネオをイギリスの保護領とし、英国ノースボルネオ会社がこれを統治する体制を確立しました。これが、いわゆる英領ノースボルネオです。

 ただし、フォン・オーバーベックとスールー王国のスルタンとの間で結ばれた条約は、あくまでもノースボルネオの賃貸契約であり、売買契約ではないため、その後も、1898年にスールー王国が米領フィリピンの一部に組み込まれるまで、同国がノースボルネオの主権者というのが建前でした。

 第二次大戦中、ノースボルネオを含むボルネオ島北部の英領地域は“北ボルネオ”として日本軍に占領されましたが、戦後、日本軍が撤退すると、ノースボルネオは1946年に英国の直轄植民地となりました。

 その後、1963年、立憲君主制連邦国家マレーシア連邦が建国されると、英領ノースボルネオは同国に編入され、同国のサバ州となり、現在に至っています。ただし、スールーのスルタンの末裔はノースボルネオのスールーへの返還を要求。さらに、スールー王国を継承したとするフィリピン政府もこの立場を支持したため、旧ノースボルネオの帰属をめぐって、フィリピンとマレーシアの対立が生じました。

 ところで、ボルネオ島には数多くの先住民族がいますが、このうち、切手に取り上げられたプナン人は、唯一、伝統的に移動生活をしてきた民族として知られています。吹き矢や銃で狩りを行い(ただし、近年は銃も使用されますが)、植物の採集で食糧を得て、2-3ヶ月に一度、森林資源が減ってくると移動する生活を繰り返してきました。

 その後、1960年代に定住がはじまり、政府の定住化政策や森林資源の枯渇などの理由で、1980年代以降はほとんどのプナン族が定住生活を行うようになりました。現在、約1万人とされるプナン人のうち、移動生活を維持しているのは200人程度とされています。
 

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