内藤陽介 Yosuke NAITO
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 パレスチナ独立宣言記念日
2017-11-15 Wed 11:14
 きょう(15日)は、1988年11月15日にアルジェで開催されたパレスチナ国民評議会(PNC)で、PLOがテロを放棄し、イスラエルの存在を認めたうえで、東エルサレムを首都とする“パレスチナ国”の独立宣言が採択されたことにちなみ、“パレスチナの独立宣言記念日”です。というわけで、こんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      パレスチナ・ダルウィーシュ(2008)

 これは、2008年7月29日、パレスチナ自治政府が発行したマフムード・ダルウィーシュ(1988年のパレスチナ独立宣言の起草者)の切手です。

 マフムード・ダルウィーシュは、1,941年3月13日、英委任統治下のガリラヤ地方のビルワで生まれました。彼の故郷は、1948年の第一次中東戦争で壊滅的な打撃を受けたため、一時的にレバノンに避難します。1950年、一家はイスラエル支配下のガリラヤ地方の別の村に帰還しましたが、法的には“不法滞在の外国人”として扱われました。

 ダルウィーシュは10代から詩作を始め、当初はイスラエル共産党の文芸誌『アル・ジャディード』に自作の詩を投稿していましたが、ほどなくして同誌の編集に携わるようになり、次いで、イスラエル労働党の文芸誌『アル・ファジュル』の編集者となります。1960年、19歳の時に発表した第一詩集『翼のない鳥』を皮切りに、1960年代には何冊かの詩集を出版。「書き留めてくれ/私はアラブ人」のリフレインで知られる詩「身分証明書」、故郷パレスチナを恋人に見立てて愛を謳った詩「パレスチナの恋人」などで、パレスチナを代表する詩人として高く評価されました。

 しかし、そのことは、パレスチナ人の民族意識を高揚させ、反イスラエル世論を煽動するものとしてイスラエルからは危険視され、投獄や自宅軟禁等の処罰を受けることになります。

 彼の作品は世界的にも高く評価され、1969年、アジア・アフリカ作家会議が創設したロータス賞の第一回受賞者となりましたが、1970年、事実上の国外追放処分を受け、ソ連のミハイル・ロモノーソフ・モスクワ国立総合大学に一年間、留学。その後、カイロを経てベイルートに入り、1973年、PLOに参加。詩作を続ける傍ら、執行委員会のメンバーとして反イスラエル闘争に積極的に関与しました。

 PLOのテュニス移転とともにテュニスに移り、第一次インティファーダを経て、1988年にアルジェで開催されたパレスチナ民族評議会ではアラファトが読み上げた「独立宣言」を起草しました。

 その後、1993年のオスロ合意の内容に失望し、PLOの役職を辞職しましたが、1995年、パレスチナ自治政府の暫定自治がヨルダン川西岸地区の主要都市にまで拡大され、自治政府がラマッラーに移ると、PLOと和解し、ラマッラーに“帰還”しました。晩年はパレスチナと米国を往来しながら、ファタハとハマースの抗争を批判し、特に、ハマースの奉じるイスラム原理主義を激しく批判しています。

 晩年は毎年のようにノーベル文学賞の有力候補の一人としてメディアに名前が挙げられましたが、2008年8月9日、心臓病の治療のため入院していた米ヒューストンで亡くなりました。享年67歳。その葬儀は、アラファトに次いでパレスチナ自治政府として2人目の“国葬”とされ、大統領のアッバースは自治政府として3日間の服喪を決定しています。

 今回ご紹介の切手は、当初、2007年に発行が予定されていたもので、切手にもその旨の表示がありますが、実際には、彼の死の直前、2008年7月29日に発行されています。切手の背景に岩のドームが描かれているのは、彼の起草した「独立宣言」が、パレスチナ国家の首都はエルサレムに置くとしていたことを示したものと考えられます。

 なお、今回ご紹介の切手を含め、パレスチナの切手と郵便については、拙著『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』でも詳しくご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。
 

★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史” ★★★

  11月9日(木)に放送の「切手でひも解く世界の歴史」の第11回は無事に終了しました。お聞きいただいた皆様、ありがとうございました。次回の放送は、大相撲のため1回スキップして、11月30日(木)16:05~の予定です。引き続き、よろしくお願いいたします。 

 なお、9日放送分につきましては、16日(木)19:00まで、こちらの“聴き逃し”サービスでお聴きいただけますので、ぜひご利用ください。


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