内藤陽介 Yosuke NAITO
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 おかげさまで13周年
2018-06-03 Sun 11:10
 外遊中だったのでご挨拶が少し遅れましたが、おかげさまで、2005年6月1日にこのブログをスタートさせてから、13年が過ぎました。日頃、このブログを応援していただいている皆様には、あらためて、お礼申し上げます。 というわけで、毎年恒例、13周年にちなんで額面13の切手の中から、この1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)(画像はクリックで拡大されます)

      キューバ・プラヤヒロン3周年(鷲)

 これは、1964年4月、キューバが“プラヤ・ヒロン勝利3周年”を記念して発行した13センタボ切手で、撃ち落とされる米国の象徴、鷲が描かれています。

 1959年のキューバ革命後、米国とキューバの関係が日に日に悪化していく中で、1961年11月8日、アイゼンハワーからケネディへの政権交代を間近に控えた米国はキューバと断交し、ラテンアメリカ諸国の大半がこれに追随します。

 1960年の米国大統領選挙を通じて、民主党のケネディ、共和党候補のリチャード・ニクソンの両候補はいずれもキューバに対して“弱腰”ではないことを示すため、(その時期は明言しなかったものの)政権悪徳後は軍事介入する意向を明らかにしていましたが、選挙後まもない1960年11月17日、大統領当選者のケネディに対して、CIA長官のアレン・ダレスは、亡命キューバ人がグアテマラ国内でキューバ上陸作戦のための軍事訓練を受けていることを報告。ケネディも計画をそのまま進めるよう指示を出しています。

 この時までに、革命を逃れてフロリダに渡ったキューバ難民の数は10万に達しており、CIAの計画は、そうした亡命キューバ人の中から有志を募り、革命政権転覆の尖兵として利用というものでしたが、じつは、キューバ側もその中にスパイを潜り込ませ、CIAの動きをかなり正確に把握していました。

 はたして、1961年1月20日、ケネディが正式に米国大統領に就任すると、キューバ政府は警戒態勢に入り、ゲバラはキューバ最西部のピナール・デル・リオに移動し、同軍管区を担当することになりました。侵攻が西側から、すなわち、大陸に最も近い海岸から行われるとすれば、彼の担当地域が最初に敵を迎え撃つことになります。

 ピナール・デル・リオに着任したゲバラは、前年の東欧諸国歴訪の体験を踏まえて、「ソ連をはじめ、全ての社会主義国が我々の主権を守るために戦争に入る必要があることは広く知られている」としたうえで、「我々は皆、我々がこれまで最も憎んできた敵、アイゼンハワーの後継者がわずかでも知的であることを望む」とケネディ宛のメッセージを発しました。

 1961年4月初旬、カストロは在米亡命キューバ人の中に潜入したスパイからの情報で米国の侵攻がいよいよ間近に迫っていることを察知し、潜在的な反政府勢力と見なした人々を一斉摘発。後にカストロはテレビ演説で「すべての容疑者、何らかの理由で事を起こす可能性のある者、反革命運動に与する行動あるいは動きを示す可能性のある者を逮捕するしかなかった。こうした手段を取る場合、いくらかの不当な行為があるのは当然だ」と弁明していますが、非常時を口実に、正規の法的手続きを踏まずに、体制にとって害をなす“可能性のある者”を逮捕した恐怖政治の先例は、その後、常態化していくことになります。ただし、この時点では、その点について米国以外の西側“進歩的文化人”が警鐘を鳴らすことは全くありませんでした。

 また、当時のキューバ島内では、中部エスカンブライ山中を拠点に、反政府勢力(その中には、カストロらとともに反バティスタの革命を戦ったものの、革命政府の“左傾化”に反対して、フィデルと袂を分かった人々も少なからずいました)がゲリラ闘争を展開していたため、カストロは、大規模な掃討作戦を展開し、エルカンブライ山中の反政府勢力を完全に包囲しています。キューバ島に上陸した敵が、山中の反政府勢力と提携する可能性を事前に摘んでおくためです。

 さらに、グアテマラ南西部のレタルレウでは、反カストロ軍の“2506部隊”にキューバの工作員が訓練キャンプに潜入し、隊長のペペ・サン・ロマンに対する叛乱も煽ったため、CIAによる上陸計画には遅延が生じ、その間、カストロはじっくりと対策を練ることができました。

 一方、CIAのプランでは、まず、キューバの空軍基地を爆撃して制空権を確保したうえで、米空母エセックスの掩護を受けた2506部隊2000人がエスカンブライ山麓のサパタ地区に上陸。橋頭保を築いたうえで、フロリダを拠点とする“革命評議会(その首班は、元首相のカルドナです)”が上陸し、臨時政府の樹立を宣言。米国と他のラテンアメリカ諸国が承認するという段取りになっていました。

 こうして、1961年4月10日、CIAに率いられた亡命キューバ人部隊約1500人はグアテマラからソモサ独裁政権下のニカラグアに移動。15日には、「カストロの鬚をお土産に」とのソモサの軽口を聴きながらニカラグアを飛び立ったB26戦闘機8機がキューバを爆撃し、コルンビア、サン・アントニオ・ボラーニョスとサンティアゴ・デ・クーバの空軍基地が爆撃されたほか、首都ハバナでは住宅密集地への爆撃により、病院の入院患者に死者が出ています。ただし、事前に攻撃を予想していたキューバ側は、滑走路にダミーないしは廃棄寸前の飛行機を置き、飛行可能な戦闘機は各地に分散して隠しておいたため、キューバの空軍兵力はほとんど無傷のままでした


 空爆のあった当初、米政府は「爆撃は米国への亡命を希望する元キューバ空軍のパイロットによるものだ」と説明していましたが、真相はすぐに明らかになり、米国の事件への関与も明らかになってしまいます。

 翌16日、カストロは「真珠湾攻撃の時、日本政府は“攻撃していない”という嘘はつかなかった」として米国を非難。そして、米国との対決姿勢を鮮明に示すため、ついに、「キューバ革命は社会主義革命である」と宣言しました。

 これに対して、国際的な非難を恐れたケネディは、2回目以降の空爆を中止するよう、軍とCIAに命令しましたが、キューバ側の防衛力を過小評価し、事態を楽観視していた彼らは、当初の予定通り、4月17日、キューバ島中部南海岸のプラヤ・ヒロン(米側の呼称はピッグス湾)に2506部隊を上陸させます。

 きれが、いわゆる“プラヤ・ヒロン侵攻事件”です。

 しかし、連絡の不備から、エセックスの艦載機が現場に到着したのは2506部隊の上陸から1時間後のことで(CIAが攻撃時間をニカラグアの現地時間で伝えたのに対して、米海軍はそれを1時間の時差があるワシントン時間で伝えるというミスを犯していました)、その間、キューバ側は虎の子のT33ジェット練習機4機で制空権を確保しつつ、民兵を動員して敵の侵攻を食い止めました。上陸部隊とキューバ側民兵の士気の差は歴然としており、19日午後5時半、革命軍はプラヤ・ヒロンを確保し、2506部隊は撤退しました。

 反革命軍の完全撤退を受けて、4月24日、フィデルはテレビに出演して勝利演説を行いましたが、その中には、次のようなフレーズもありました。

 ケネディは「わが国の海岸から160キロのところで社会主義革命が起きるのを許すことはできない」といったが、我々は海岸から160キロのところに資本主義国家があることに耐えている。
 国が大きいからといって小国との紛争を解決するのに実力を用いる権利があるわけではない。

 プラヤ・ヒロン湾侵攻事件は、“アメリカ大陸における帝国主義の初めての敗北”であり、米西戦争以来、百年の恨みを晴らしたカストロの権威は、キューバ国内のみならず、全世界の反米=左派勢力にとって揺るぎないものとなりました。同時にそのことは、キューバ国内において、カストロに対する異論・反論を完全に封じ込める結果ももたらしています。

 さて、現在制作中の拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』では、プラヤ・ヒロン事件とその関連の切手・絵葉書も、いろいろとご紹介しております。正式な刊行日等、同書についての詳細が決まりましたら、このブログでも随時ご案内いたしますので、よろしくお願いします。


★★★ 近刊予告! ★★★

 えにし書房より、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』が7月刊行予定です!
 詳細につきましては、今後、このブログでも随時ご案内して参りますので、よろしくお願いします。

      ゲバラ本・仮書影

(画像は書影のイメージです。刊行時には若干の変更の可能性があります) 

 なお、当初、『チェ・ゲバラとキューバ革命』は、2018年5月末の刊行を予定しておりましたが、諸般の事情により、刊行予定が7月に変更になりました。あしからずご了承ください。


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