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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ロバート・ケネディ没後50年
2018-06-06 Wed 01:43
 ジョン・F・ケネディ元米大統領の弟、ロバート・ケネディ上院議員(当時)が、1968年の米大統領選の民主党候補指名選のキャンペーン中の6月5日、ロサンゼルスで狙撃され、翌6日に亡くなってから、きょうでちょうど50周年です。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      フィリピン・ケネディ兄弟(1968・不発行)

 これは、1968年、フィリピン名義の“国際人権年”の切手として企画されたものの、結果的に日の目を見ずに終わった“ケネディ・モスデン切手”の1枚で、ジョンとロバートのケネディ兄弟の肖像が取り上げられています。

 1968年4月、フィリピンの公共事業・運輸・通信長官のアントニオ・ラクィザは、高速道路建設のための資金援助を受けるべく、渡米して米政府と交渉を行っていましたが、その過程で、ニューヨークで切手商のエッゼ・モスデンを紹介されます。モスデンは、ラクィザに対して、外貨獲得のために世界の収集家をターゲットとした“輸出用”の切手を制作・発行することを提案。その費用を彼が負担する代わりに、切手の製造と販売権を独占できないかとラクィザに持ちかけました。

 モスデンは、切手の輸出によりフィリピン政府は年間2‐300万ドルの収入が得られるとの見通しを示したため、ラクィザはこの提案に大いに興味を抱き、個人的にこの提案を受け入れ、モスデンがベン・ダンビーと共同経営していたパルコ・インターナショナル社とフィリピン切手の制作・販売についての契約を結びました。その内容は、フィリピン政府はパルコ・インターナショナルを、今後5年間にわたり、フィリピン切手の印刷、プロモーション、フィリピン国外での切手の販売を独占的に扱う代理店とするというもので、パルコ・インターナショナルがフィリピン切手の販売によって得られる手数料は売り上げの20%とされていました。なお、契約の日時については、資料によって、1968年6月24日、同26日、8月19日と諸説がありますが、いずれにせよ、ラクィザの米国滞在中に署名が行われたとみられています。

 ところが、ラクィザが帰国すると、当時の郵便長官、エンリコ・パロマーがパルコ・インターナショナルとの契約に対して、以下の理由を挙げて強硬に反対します。すなわち、

 1)フィリピン切手の製造・販売に関する契約は、いかなるものであっても、公共事業・運輸・通信長官ではなく、郵便長官が署名しない限り無効である
 2)フィリピン切手の製造・販売業者の選定は、公開入札によらなければならない
 3)フィリピン切手のデザインは、フィリピン郵政の切手・郵趣課が制作するか、または妥当なものであると承認したもののみを、正規の手続きを経て印刷しなければならない

 上記の理由から、フィリピン郵政はラクィザがパルコ・インターナショナルと結んだ契約は無効であるとして、これを拒絶しました。

 一方、そうしたフィリピン側の事情を知らないモスデンは、早々とフィリピン切手の製造・販売を請け負う会社として“フィリピン郵趣代理部( Philippine Philatelic Agency Inc:PPA)を設立し、同年のメキシコ五輪および“世界人権年”の記念切手の制作を開始しました。

 このうち、世界人権年の記念切手は、“公民権と人権のために戦った闘士”として、世界的に人気のあるケネディ元大統領とその家族が題材として選ばれました。これがいわゆる“ケネディ・モスデン切手”で、今回ご紹介のモノを含む5種セットと小型シートで構成されています。

 その後、モスデンのPPAは、最初の切手として、10月12日にメキシコ五輪の記念切手を発売しようとしましたが、フィリピン郵政はあくまでも、①ラクィザが結んだ契約はフィリピン郵政の承認を得た正式のものではない、②フィリピン郵政が件の切手の製造に関与していない、③件の切手の印刷枚数について、フィリピン郵政は何も知らされていない、ことを理由にPAAの切手を頑として認めず、最終的に、“ケネディ・モスデン切手”は正規の切手として発行されることのないまま終わりました。

 その後、モスデンらは、これらの“切手”を“不発行切手”として収集家向けに販売することでコストの一部を回収しましたが、実際には、上記のような経緯から、“切手もどき”というのが実態に近いと思います。

 なお、ロバート・ケネディの生涯については、拙著『大統領になりそこなった男たち』で詳しくまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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