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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 本田圭佑、実質的なカンボジア代表監督に
2018-08-13 Mon 00:31
 サッカーW杯ロシア大会の日本代表MFで、オーストラリアの強豪メルボルン・ビクトリー入りする本田圭佑は、きのう(12日)、プノンペンで記者会見を行い、サッカー・カンボジア代表の実質的な監督に就任(登録上の監督にはフェリックス・アウグスティン・ゴンザレス・ダルマスが就任)することを発表しました。ちなみに、本田は2016年以降、カンボジアのクラブの経営に参画し、1部チームの“ソルティーロ アンコールFC”を実質的に保有しています。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      仏印・アンコールワット(1927)

 これは、1927年にフランス領インドシナ(仏印)で発行されたアンコール・ワットの切手です。

 カンボジアの北西部、トンレサップ湖北岸のシェムリアップの北側にあるアンコール遺跡群は、かつてのアンコール王朝の王都跡で、9世紀頃から建設が開始され、12-13世紀に絶頂期を迎えました。

 このうち、アンコール・ワットは、12世紀前半、アンコール王朝のスーリヤヴァルマン2世(在位1113-45)によって、ヒンドゥー寺院として建立されました。ちなみに、アンコールは、サンスクリットの“ナガラ(都市)”に相当するクメール語で、ワットは“寺院”を意味しています。

 アンコール・ワットの境内は東西1500m、南北1300m、幅190mの濠で囲まれており、正門は西側に位置しています。伽藍は、主として砂岩とラテライトで築かれており、前庭の南北には経蔵と聖池があり、前庭の奥には三重の回廊に囲まれ5つの祠堂がそびえています。

 第1回廊の壁面には精緻な彫刻が施されていますが、その題材は、西面南がインド古典文学の『マハーバーラタ』および『ラーマーヤナ』の場面、南面西が施主のスーリヤヴァルマン2世の行幸風景、南面東が天国・地獄図、東面南が乳海攪拌(ヒンドゥーにおける天地創造神話)です。なお、東面北と北面には、16世紀頃のアンチェン1世の時代に彫られた、クリシュナ(ヒンドゥーの最高神の1人、ヴィシュヌの化身)が怪物バーナの討伐する場面の像があります。

 第1回廊と第2回廊の間には、かつては、信者から寄進された無数の仏像が置かれており、それゆえ“千体仏の回廊”を意味する“プリヤ・ポアン”と呼ばれていたが、ポルポト政権時代に破壊され、芝が生い茂っています。なお、第2回廊には彫刻などはなく、ここを抜けて急勾配の石段を登って第3回廊に入る構造になっています。

 第3回廊は中央と四隅に須弥山(古代インドの神話で世界の中心とされた山)を模したトウモロコシ型の祠堂がそびえ、本堂となる中央の祠堂の高さは65m。かつて本堂にはヴィシュヌが祀られていたとされていますが、現在は壁で埋められ4体の仏像が祀られています。また、第3回廊の壁面には数多くの天女アプサラスの像が数多く施されており、華を添えています。

 さて、アンコール王朝は、13世紀半ばからアユッタヤー朝の信仰を受けて次第に衰退。1431年頃には、ポニャー・ヤット王はこの地を放棄し、プノンペンに遷都しました。その後、1546-64年にアンチェン1世がアンコール・ワットの改修を行い、1586年にはポルトガル人のアントニオ・ダ・マダレーナが西欧人として初めて参拝。1632年には日本人の森本右近太夫一房も参拝しましたが、その後はシャムの勢力圏に置かれ、半ば忘れられた存在になっていました。

 その後、19世紀に入り、フランスがインドシナに進出すると、アンコール遺跡の“再発見”も進み、1860年、フランス人アンリ・ムーオはアンコール・ワットを広く西欧社会に紹介します。

 1907年、アンコール一帯も仏印の支配下に組み込まれると。フランス極東学院によって遺跡の調査と保存修復作業が進められるとともに西洋人観光客の誘致も進み、1953年のカンボジア王国の完全独立後も観光地として繁栄しましたが、1972年に内戦が勃発すると極東学院はカンボジアから撤退。さらに、1975年にポルポト派がカンボジア全土を支配すると、遺跡は“迷信”を助長するものとして破壊の対象となり、仏像の多くは頭部を破壊されて敷石に転用されました。

 1979年、ポルポト派は政権を追われたものの、彼らはアンコール遺跡を拠点に抵抗を続けたため、遺跡はさらに荒廃しますが、
内戦末期の1992年、アンコールの遺跡群はユネスコの世界遺産に登録され、翌1993年の内戦集結後、本格的な修復作業が始まり、周辺の地雷の撤去も進められて、現在は世界各国から参拝客・観光客が戻っています。


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