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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手歳時記:南部鉄器
2018-10-07 Sun 01:23
 公益財団法人・通信文化協会の雑誌『通信文化』2018年10月号ができあがりました。僕の連載「切手歳時記」は、今回は、10月6-7日に岩手県奥州市で開催される“南部鉄器まつり”にあわせて、この1点を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      伝統的工芸品・南部鉄器

 これは、1985年8月8日に発行された伝統的工芸品シリーズ第5集のうち、“南部鉄器”の切手です。

 南部鉄器は、鉄に恵まれた北上川沿いの岩手県盛岡市、奥州市水沢区で作られる鉄器の総称で、歴史的には、水沢の方が歴史があります。

 奥州の鋳物は、平安時代後期、江刺の地にいた藤原清衡が近江国より鋳物師を招いて始めたもので、それが南下して羽田(現在の水沢)に伝わりました。当初、鋳物師は“歩き筋”と呼ばれ、必要に応じて各地を転々と移動していたため、清衡に従って平泉に移り、中尊寺の備品なども鋳造していました。

 奥州藤原氏は、三代当主の秀衡が、1185年に源頼朝に追われた源義経を匿っていましたが、四代当主の泰衡は頼朝の圧力に屈して、1189年、義経の起居していた衣川館を襲い、義経と妻子を自害へと追いやりました。

 このとき忠臣の弁慶は降り注ぐ矢を受けて仁王立ちのまま息絶えましたが、この故事にちなんでか、鉄器まつりでは“弁慶鉄下駄飛ばし大会”も行われています。弁慶の鉄下駄といえば、五条大橋で若き牛若丸と戦った時に履いていた話が有名ですが、その下駄は、近江の産だろうと思います。ちなみに、清水寺の“弁慶の鉄下駄”は、明治時代に吉野の修験者が奉納したもので、実は弁慶本人とは無関係。そもそも、弁慶が衣川で鉄下駄を履いていたのかどうか…などとくどくど言い出すと、金剛杖で叩かれそうなので、この辺で止しておきましょうか。

 さて、奥州藤原氏の滅亡後、スポンサーを失った鋳物師たちは日常品を細々と作るだけになっていましましたが、室町時代初期、京都聖護院の鋳物師、長田正頼が黒脇千葉家に養子に入り、羽田に到来しました。千葉家は奥州総奉行の葛西氏に召し抱えられ、正頼の弟子や関西から訪れた鋳物師たちも羽田に住み、地域に鋳物業が定着します。

 江戸時代に入ると、1629年以降、水沢伊達氏の当地の下、鉄器は庇護を受けて発展し、幕末には大砲も鋳造されました。

 一方、盛岡では、慶長年間(1596-1615年)、盛岡藩主・南部氏の築城の頃から鉄器の鋳造が始まり、やはり、歴代藩主の庇護を受けて発展しました。

 1884年の盛岡大火災では鉄器工場も大きな被害を受けましたが、焼け跡から見つかった鉄瓶をとりあえず使ってみたところ、錆がでなかったことから、これにヒントを得て、以後、内部を備長炭で焼き付ける“金気止め”の手法が使われるようになります。

 1890年に東北本線が開通すると、南部鉄器の販路は飛躍的に拡大。さらに、1908年、皇太子・嘉仁親王(後の大正天皇)の東北行啓の際に(八代)小泉仁左衛門が鉄瓶の製造を実演したことが話題を呼び、全国的に有名になりました。

 さて、伝統的工芸品シリーズの切手は、オーソドックスな黒色の南部鉄瓶と“波に鯉文富士形鉄瓶”の組み合わせで発行されました。

 このうち、富士形の鉄瓶は、山形・米沢方面から馬を買いにきた馬喰が土産として好んで買い求めたことから “米沢富士”とも呼ばれました。銀色なのは砂鉄を原料としているからで、湯が沸くとちんちんという音がします。

 ちなみに、黒色の鉄瓶は、本来、“金気止め”に加え、表面には漆が塗られていますが、そうした処理を省略した大量生産の“鉄製ケトル”なら、1万円以下の手ごろな値段で購入可能です。一方、砂鉄の鉄瓶を買うつもりなら、十万円単位の出費を覚悟しないとならないでしょう。

 なお、鉄瓶は高級品になればなるほど、良質の鉄を使い、持ち手も中空の“くるみ”になって軽くなるので、鉄瓶は重いなどと不用意にいうと、財布の軽さがばれてしまうことになるのでご用心。


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