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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ウイグル問題は人類の恥
2019-02-10 Sun 11:20
 トルコ外務省の報道官は、きのう(9日)、声明を発表し、トルコ系少数民族でムスリムが大半を占めるウイグル族に対する中国の人権侵害について、「100万人以上のウイグル族住民が収容所や刑務所で拷問や洗脳にさらされていることはもはや秘密ではない」と指摘、国際社会や国連に対し「人道的悲劇を終わらせるための効果的措置」を取るよう呼び掛けるとともに、この問題は、“人類にとって大きな恥だ”と批難しました。というわけで、きょうはこの切手です、(画像はクリックで拡大されます)

      限新章加刷(孫文)

 これは、1933年、新疆省内(当時)に限って有効であることを示すため、中国切手に“限新省貼用“と加刷して発行された1円切手です。

 現在の新疆ウイグル自治区に相当する東トルキスタンの地域が中国中央の支配下に入ったのは18世紀のことです。19世紀には各地で反清反乱が相継ぎ、ヤクブ・ベクの乱によって清朝の支配は一時的に崩壊しましたが、その後、清朝はこの地を再征服し、1884年に新疆省が設置されました。

 1912年の中華民国発足後は、漢民族の省主席によって半独立的な領域支配が行われており、通貨も中国中央とは別個のモノが使われていました。

 そもそも、辛亥革命後の中国は、各地に軍閥が割拠し四分五裂状態になっており、通貨も各地の軍閥が独自に発行していたため、各地の通貨間には為替差が存在しましたが、なかでも、新疆(東トルキスタン)や東北、雲南、四川などでは北京や上海、南京など都市部との為替差が大きかったため、為替差損・差益を防ぐため、使用地域を限定した加刷切手が発行されています。今回ご紹介の切手は新疆省でのみ有効という意味で“限新省貼用”との加刷がなされたものですが、1919年の時点での交換レートは北京や南京で流通していた中国元100元に対して、新疆元は260元と2.5倍もの開きがありました。

 このように、中国中央の統制が、かならずしも十分に新疆(東トルキスタン)の地に及んでいなかったなかで、1944年、東トルキスタンの北部、イリ渓谷のグルジャ(伊寧市)で、ソ連軍の支援を受けたウイグル人の武装蜂起が発生。同年11月12日に中華民国からの独立と(第2次)東トルキスタン共和国の建国が宣言されます。

 東トルキスタン共和国は12月までにイリ地区の全域を占拠し、翌1945年にはカザフ系の武装勢力がアルタイ地区、タルバガタイ地区を占領し、東トルキスタン政権に合流。いわゆる三区政権が誕生します。

 1945年9月、東トルキスタン軍がウルムチへの進軍を開始すると、新疆省政府はソ連に和平の仲介を要請。東トルキスタンの頭越しに行われた中ソ交渉を経て、ソ連は東トルキスタン主席のアリハーン・トラを拘束して、東トルキスタンに圧力をかけました。このため、1946年、東トルキスタンはソ連の意を汲んで新疆省政府に合流し、東トルキスタン・イリ専署(イリ専区参議会)と改称。 新疆省政府と東トルキスタン・イリ専署が合同して新疆省連合政府が成立しました。

 しかし、連合政府は内部対立から1947年5月頃に崩壊。副主席アフメトジャンをはじめとする旧共和国派はイリ地方に退去し、旧東トルキスタン共和国の領域の支配を再開。さらに、翌6月には、ソ連の支援を受けたモンゴル人民軍と中華民国軍が新疆で武力衝突しています。

 一方、1949年、国共内戦の帰趨がほぼ明らかになる中で、中国共産党は東トルキスタンに鄧力群を派遣し、イリ政府との交渉を開始。毛沢東はイリ政府首脳陣を北京の政治協商会議に招きましたが、8月27日、北京行きの飛行機に乗った3地域首脳11人は、そのままソ連領内アルマトイに連行・殺害され、東トルキスタン政府は事実上消滅。残されたイリ政府幹部のセイプディン・エズィズィは、陸路で北京へ赴き、政治協商会議に参加して共産党への服属を表明せざるをえなくなりました。また、9月26日にはブルハン・シャヒディら新疆省政府幹部も共産党政府への服属を表明しています。

 これを受けて、1949年末までに中国人民解放軍が新疆全域に展開し、東トルキスタンは完全に中華人民共和国に統合され、1955年には現在の新疆ウイグル自治区が設置されました。

 現在、東トルキスタンはチベットと並んで、中国にとって最も深刻な“民族問題”の一つとなっており、中国共産政府による人権侵害の象徴的な存在となっています。


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