郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
08 | 2008/09 | 10
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -

 おかげさまで1000回
 2005年6月からスタートしたこのブログですが、毎日1回ずつ更新していたら、今日の記事がちょうど1000回目になりました。日頃、このブログを応援していただいている皆様には、あらためて、この場をお借りしてお礼申し上げます。

 というわけで、“1000”に絡めて、こんなモノを持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

 1000円小型シート

 これは、1975年4月22日に発行された1000円切手の小型シートです。1000円という額面は、現在なお日本の通常切手の中では最高額ですが、当時は書状の基本料金が20円の時代でしたから、そこから比例計算すると、現在の感覚では4000円くらいの価値に相当すると考えてもいいかもしれません。印刷物としての出来栄えも、グラビアと凹版のかけあわせによる見事なもので、最高額面の切手にふさわしい貫禄があります。

 なお、通常のシート切手とは別に小型シートが発行されたのは、1975年4月に全日本切手展が25回という節目の年を迎えるため、その記念の意味合いを込めたものとも言われています。これは、1950年の切手趣味週間にあわせて宇治平等院鳳凰堂の通常24円切手を収めた小型シートが発行されたのと似たようなケースといってもいいでしょう。

 さて、切手に取り上げられているのは、京都・浄瑠璃寺の吉祥天立像です。

 浄瑠璃寺は京都府木津川市加茂町にある真言律宗の寺院で、1047年、当麻(現・奈良県葛城市)の僧・義明上人が薬師如来を本尊として創建されたものといわれており、寺の名前の“浄瑠璃”は本尊である薬師如来の居所である東方浄瑠璃世界(東方浄土)にちなんでいます。なお、創建当時の本尊は薬師如来像のみでしたが、1107年、九体の阿弥陀如来像を安置する現在の本堂が建立され、現在ではこちらもともに本尊になっています。

 この本堂と薬師如来像を安置している三重塔はいずれも国宝で(ただし、薬師如来像は国宝ではなく十分です)、1976年から発行が始まった第2次国宝シリーズで平安時代の国宝のうち切手に取り上げるものの候補にもなりました。ところが、切手の制作期間中、浄瑠璃寺では池を掘り返しての工事が行われていてデザイナーによる現地取材ができず、さらに、工事後に景観が変化する懸念があったため、結局、切手には取り上げられずに終わりました。

 1000円切手に取り上げられた吉祥天立像は、鎌倉時代の1212年の作品で、本堂に安置されており、毎年、1月1日-1月15日、3月21日-5月20日、10月1日-11月30日の期間限定で公開される秘仏です。吉祥天は五穀豊穣と天下泰平を授ける幸福の女神で、しばしば、当時の理想的な美女の姿を投影した絵画や彫刻の題材となっています。切手の木像も、袖口から出た白い手の柔らかい感じなどはなんとも官能的な雰囲気をかもし出しており、国宝にこそ指定されていないものの、日本の仏教彫刻を代表する一体と評されるのも十分にうなずけます。

 1970年代後半から1980年代初頭にかけての時代は、切手印刷の技術が飛躍的に向上したことに加え、凹版彫刻では戦後の名人・押切勝造が一番脂の乗っていた時期にあたっています。このため、いわゆる切手ブームの時代ではないため、1950年代のビードロや写楽のように目立った存在感はないものの、純粋に印刷物としての完成度という点で見ると、なかなか良い切手が多いように思います。昨年、刊行した<解説・戦後記念切手>シリーズの『沖縄・高松塚の時代』では、その前半部分をとりあげましたが、4月に刊行予定の『近代美術・特殊鳥類の時代』では、その後半部分を取り上げることにしています。『近代美術・特殊鳥類の時代』については、追々、このブログでもご案内していく予定ですので、よろしくお願いいたします。
この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://yosukenaito.blog40.fc2.com/tb.php/1021-d63c9f08
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

[編集日誌][記念事業][日本天文学会]2008-02-29(Fri): 学会と切手−「日本天文学会創立100周年」切手の発行

日本天文学会が創立100周年を迎えるという。 ・日本天文学会創立百周年記念講演会並びに祝賀会のご案内 http://www.asj.or.jp/news/080101.html ・日本天文学会公開講演会−学会創立百周年を記念して http://www.asj.or.jp/news/080121.html ・日本天文学会 http://www.asj. ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版【2008/03/02 12:51】

アクセス数 (2005年6月1日〜)

プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

月別アーカイブ

最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード

Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ