内藤陽介 Yosuke NAITO
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 春来たる
2008-03-20 Thu 22:21
 今日は春分の日。日本ではお墓参りの日ですが、イランを中心とした中央アジアの国々では今日から新年というところもあります。というわけで、今日はこんな切手を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

 ノールーズ1965

 これは、1965年3月6日、イランで発行された年賀切手で、チューリップの花を小麦の苗で囲み、ケーキのようにリボンを結んだデザインが、いかにも春の訪れを寿ぐといったデザインになっています。

 ご承知のように、イスラム世界では預言者ムハンマドと信徒たちがメッカからメディナに移住し、イスラムの共同体を作った“ヒジュラ”のあった年を紀元とするヒジュラ暦が使われています。

 このヒジュラ暦は完全太陰暦で、かつての日本の旧暦のように閏月を入れて調整するということは行われていませんから、毎年、11日ずつ、太陽暦の日付とズレが生じます。 この点について、ムスリム(イスラム教徒)たちは、信徒の義務であるラマダン月(ヒジュラ暦の9月)の断食が、毎年、少しずつ季節を移動していくことによって、地域ごとの断食の負担の格差が是正されるメリットがあると説明しています。たとえば、ラマダン月が真冬の時期に当たると、熱帯の国では比較的楽に断食が行えますが、寒冷地域の断食は非常に厳しいものがあります。逆に、ラマダン月が真夏にぶつかると、熱帯と寒冷地域では、その負担の重さは逆転します。

 したがって、全世界の信徒にとって、断食の負担の平準化を図るためには、ラマダン月が毎年季節を移動していくことは良いことであり、それゆえ、ヒジュラ暦は調整なしの完全太陰暦なのだ、というロジックが導き出されることになります。

 とはいえ、いくら宗教的に重要な意味があるとはいえ、毎年、暦の日付と季節がずれていけば、農作業などでは不便も多く生じます。このため、イスラム世界の各地では、イスラム暦とは別に、太陽暦に連動した農事暦が用いられることも多く、イランの場合は、イスラム以前から使われていたイラン暦として春分を元日とした太陽暦も用いられています。

 この元日が、いわゆる“ノウルーズ”(直訳するとペルシャ語で“新しい日”の意味)と呼ばれるもので、今回ご紹介の切手も、この元日を祝う“年賀切手”として発行されたものです。

 なお、ノウルーズは、イランを中心に中央アジアの5共和国でも祝日になっているほか、トルコでもクルド人に対する宥和政策の一環として国民の休日になっていますが、イスラム圏全体に共通の行事ということではなく、アラブ世界ではほとんど無視されているよいようです。ちなみに、イスラム世界全体としては、イスラム教徒としての新年はヒジュラ暦のムハラッム月(第1月)1日に祝うのが主流ですが、こちらは上述のように年によって季節は一定していません。

 まぁ、日本でもかつては“立春”から1年が始まったわけで、イランのノウルーズを持ち出すまでもなく、春の訪れというのはめでたい出来事のはずなのですが、花粉症に悩まされている僕としては、素直に春が来たことを喜べないのがちょっと辛いところです。
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