郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
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 独立前後のジンバブエ
 アフリカ南部のジンバブエで先月29日に投票が行われた大統領選挙は、選管の公式発表はまだですが、野党・民主変革運動のモーガン・ツァンギライ議長が勝利宣言を行い、1980年の独立以来、27年ぶりに政権交代となる公算が強くなってきたようです。というわけで、今日はこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ジンバブエFFC

 これは、ローデシア時代最末期でジンバブエ正式独立直前の1980年4月2日、首都のソールズベリー(現ハラレ)からロンドン宛の初飛行カバー(FFC)です。

 現在のジンバブエの前身となる英領南ローデシアでは、1960年代から黒人による独立運動が行われていました。これに対して、少数の白人による支配体制の維持を主張する植民地政府首相イアン・スミスらは、国際世論の反対を押し切って、1965年、白人中心のローデシア共和国の独立を宣言。人種差別政策を推し進めていきます。

 当然のことながら、スミス政権に対しては黒人の抵抗運動が組織されましたが、ローデシア政府は国民民主党(NDP)の活動を禁止したのをはじめ、黒人による独立運動を徹底的に弾圧していきます。のちの大統領となるロバート・ムガベも、こうした独立運動の闘士で、1964年に逮捕されて10年間を獄中で過ごした後、1974年に釈放されると、中国の軍事支援を受けてジンバブエ・アフリカ民族解放軍(ZANLA)を結成し、ローデシア政府軍に対する武装闘争を展開。ローデシアは内戦状態に突入します。

 これに対して、アメリカの圧力を受けた南アフリカ大統領、バルタザール・フォルスターが内戦の調停に乗り出し、1978年3月3日、スミス政権と、アベル・ムゾレワ司教ら黒人穏健派指導者の間で停戦協定が調印されます。協定の結果、暫定政権樹立を準備するための議会選挙が実施されることになり、暴力を放棄した唯一の黒人政党・統一アフリカ民族会議(UANC)が勝利します。しかし、スミス政権はこの結果を認めず、居座りを図ったため、、1979年9月、イギリス政府の呼びかけで、ジンバブエ・ローデシアの全政党の参加によるランカスター・ハウス協定が調印され、100議席中、20議席を白人の固定枠とすることで合意が成立、1980年2月の総選挙を経て、1980年3月4日、ムガベが初代首相に就任。4月18日、黒人国家・ジンバブエが正式に独立しました。

 今回のカバーは、まさにローデシア→ジンバブエの過渡期にあたる4月2日に差し出されたものですが、4月18日の正式独立後も、このカバーに貼られているローデシア表示の切手はしばらく使われていたようです。
 
 このとき誕生したムガベ政権は、その後、実に27年の長きにわたってジンバブエを支配し続けてきたわけですが、長期政権の常として、近年は政権の腐敗が深刻化し、経済運営の失敗により国民生活は惨憺たる状況と伝えられています。それらを示すマテリアルというのもいくつか思いつくのですが、現時点ではあいにく入手できていません。いずれ、機会があれば手に入れて、ご紹介してみたいものです。
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プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

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