内藤陽介 Yosuke NAITO
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 独立記念切手の子ども
2008-05-16 Fri 10:16
 今月3日に発生した大型サイクロンの被災にも関わらず、一部地域を覗いて、10日に憲法草案に関する国民投票を強行したビルマ(ミャンマー)の軍事政権は、昨日(15日)、投票の結果、賛成が92.4%になったと発表しました。なんだかなぁ…という話ですが、ともかく、ビルマがらみということで、今日はこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ビルマ独立試刷(赤)

 これは、第二次大戦中の1943年8月1日、日本軍占領下でビルマが独立を宣言した際の独立記念切手の試刷です。

 1941年12月の日英開戦後、1942年5月末までにビルマ全土をほぼ制圧した日本軍は、イギリスの支配下で投獄されていた独立運動の闘士、バーモ(バモオ)を行政府長官兼内務部長官として、8月1日、ビルマ中央行政府を樹立します。その際、日本軍は戦勝後のビルマ独立を予定し、即時独立を認めませんでした。また、ビルマ国民には軍政への協力を要求する一方で、批判的な民族主義者や若いタキン党員の政治参加を抑圧したこともあって、ビルマ側の不満が鬱積。

 このため、戦況が悪化する中で、ビルマにより一層の戦争協力を求めるための見返りを用意する必要に迫られた日本政府はビルマ独立の方針を具体化し、1943年3月10日に『緬甸独立指導要綱』を決定。同年8月1日、軍政を廃止し、バーモを首班とするビルマ国としての独立を承認しました。ただし、独立と同時に、日本ビルマ同盟条約が締結され、ビルマは連合国へ宣戦布告することになり、日本軍の駐留はその後も終戦まで続けられることになります。
 
 親日バーモ政権に関しては、日本の傀儡政権に過ぎなかったという見方も根強いのですが、真摯にビルマの独立のために戦っていたバーモ政権の関係者は私利私欲のために国を売ったわけではなく、現在の視点から単純に“傀儡”と断じてしまうのはいささか酷なようにも思います。当時の国際環境の下で、それがかたちだけのものであったとしても、日本の差し出した“独立”の名をとって本格的な独立のための一つのステップとするのか、旧宗主国に操を立てて植民地・占領地という立場に甘んじ続けるのか、そのいずれかを迫られたとき、彼らがどちらを選ぶかは明らかでしょう。

 さて、このときのビルマ“独立”に際しては、ビルマ人を対象に独立記念切手の図案の懸賞募集が行われ、その優秀作品が3種の切手として発行されました。以前の記事では、ビルマ語で“独立”の文字を彫刻する男性を描いた切手をご紹介しましたが、今回は国旗を担ぐ少年を描くデザインのものをご紹介します。独立やその周年記念の切手に子供を取り上げるケースは、洋の東西を問わずしばしば観察される現象ですが、これは、今後の成長が楽しみな子どもの姿に将来の国家の発展を重ね合わせて表現しようとするものとみなすことができます。

 ところで、昨日の軍事政権の発表では、サイクロンによる死者数が4万人に達し、不明者との合計でも7万人(ちなみに、国連の推計では死者・行方不明者合わせて最大10万人)に達したそうです。民間の国際援助団体、セーブ・ザ・チルドレンによると、「少なくとも死者の40%が12歳以下の子ども」と推計されているそうで、被害が深刻なデルタ地帯には救援物資の2割以下しか届いておらず、牛や人の遺体が浮く川で魚をとって飢えをしのぐ子どもが多く、マラリアやデング熱などの伝染病も発生。子どもの5分の1が下痢を起こしているという惨状が報告されています。

 政権の維持を最優先し、国際社会の批判を内政干渉として退けてきたビルマの軍事政権は、14日になって、ようやく、中国、インド、タイ、バングラデシュの4国から医療などでの緊急支援要員160人の受け入れを決めたそうですが(欧米諸国の支援に対しては、依然として断固拒否なのだそうです)、連中にとっては、国の将来を担う子どもたちを救うことよりも、目下の自分たちの権力を維持することの方がはるかに重要ということなんでしょうね。

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