内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ネパールとエベレスト
2008-05-29 Thu 12:39
 昨日(28日)、ネパールの制憲議会が招集され、新しい政体として連邦共和制の導入を宣言し、約240年続いた王制は終了しました。また、今日(29日)は1953年5月29日にニュージーランドのエドモンド・ヒラリーとネパール人シェルパのテンジン・ノルゲイ がエベレストの東南稜で世界初登頂に成功したことにちなみ、“エベレストの日(エベレスト登頂記念日)”なんだそうです。というわけで、この1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ネパール・エベレスト

 これは、昨年(2007年)、ネパールが発行したエベレストの切手です。

 現在、一般にエベレストと呼ばれているこの山は、かつてはサンスクリット語でデヴギリ(神聖な山)またはデヴァデュルガと呼ばれていました。

 この山が、ベンガル出身のインド人数学者・測量技師、ラダナート・シクダールによって世界最高峰であることが確認されたのは1852年のことで、その後、1865年になって英国インド測量局のアンドリュー・ウォーが、局長のジョージ・エベレストにちなんで、この山を“エベレスト”と命名。局長本人は、現地名を重視すべきとの考えで、自分の名がつけられるのを嫌っていましたが、本人の死後にこの名前が定着してしまいます。

 一方、現地ネパールでは、この山はサンスクリットで“世界の頂上”を意味するサガルマーターと呼ばれていますが、これは、1960年代になってから、ネパールの歴史学者、バブラム・アチャリャが命名したものです。それ以前は、ネパールの人口が集中している首都のカトマンドゥとその周辺の人々は、そもそもこの山のことを知らなかったそうで、この山は忘れられた存在だったといわれています。

 なお、日本ではこの山をチョモランマと呼ぶことも多いようですが、これは“大地の母”を意味するチベット語で、シェルパ族の間では用いられているものの、ネパール国家としてはこの名称を正式なものとは認めていません。

 ところで、日本ではこの山のことを“中国名・チョモランマ”として紹介することも多いのですが、既に述べたように、チョモランマというのはチベット語であって中国語(北京語)ではありません。チベット語の名称を、わざわざ“中国名”として紹介するというのは、チベットは中国の不可分の領土であるという中国側の主張を追認することと表裏一体なわけですが、その点について自覚している日本人がどれほどいるのか、いささか怪しいところです。

 さて、昨日、王制を廃止したネパールの議会では、現在、ネパール共産党毛沢東主義派(マオ派)が第一党となっています。宿願の王制打倒を果たしたマオ派ですが、毛沢東主義の看板を掲げているものの、中国共産党とのつながりはほとんど無く、また思想的には毛沢東思想よりもむしろ南米の共産主義勢力に近いとされています。このため、既存の王室と外交関係のあった中国は、反体制派としてのマオ派のことを「毛沢東とは無関係」、「毛沢東の名を汚す利敵行為」として王室を支援していました。

 とはいえ、現実にマオ派がネパールの実験を握ってしまった以上、中国としても、かつてのようにマオ派を敵視すれば事足れりというわけにはいかなくなっているのが現状です。まぁ、「お前らは毛沢東主義者なんだから、チベット同様、“偉大なる祖国”である中華人民共和国に復帰すべきだ」というロジックを掲げて人民解放軍がカトマンドゥに武装進駐するということは…ないと思いたいですけどね。

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この記事のコメント
#2440 エベレストの呼称について
山が好きでヒマラヤにも出掛け、現地の人からサガルマタとチョモランマそしてエベレストと、三つの呼称を耳にしましたが、各々の名についてこの文章ほどしっかりとまとめたものを他に知りませんでした。
どうもありがとうございました。
2017-03-28 Tue 16:44 | URL | ヒマラヤ雪男(ゆきお) #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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