内藤陽介 Yosuke NAITO
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 『郵趣』今月の表紙:ガンビアのカメオ
2008-06-30 Mon 13:33
 (財)日本郵趣協会の機関誌『郵趣』の2008年7月号は、おそらくできあがっているものと思います。現在、ルーマニアをふらふらしている僕としては現物を確認するすべはないのですが、とりあえず、月が変わってしまう前に7月号の表紙のことを書いておいた方が良いでしょう。

 雑誌『郵趣』では、毎月、表紙に“名品”と評判の高い切手を取り上げていて、僕が簡単な解説文をつけていますが、今月は、こんなモノを取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

 ガンビア・カメオ

 これは、1869年3月にアフリカのガンビアで発行された1番切手です。

 16世紀以降、イギリスはアフリカ大陸西岸のガンビア川の周辺に進出しましたが、気がつくと周囲は次第に仏領に取り囲まれるようになったため、1783年、同川流域の細長い地域を英領ガンビアとして確保することになりました。現在、セネガルの領内にガンビア川の周囲だけ、くさびを打ち込むようにガンビア国家が存在しているのはこうした事情によるものです。

 さて、1866年、ガンビアの行政官だったパティはロンドンの植民地省に切手の使用許可を求めました。植民地側の予算はわずか100ポンドでしたが、この金額では版を作るだけで吹っ飛んでしまいます。当然、偽造防止対策を施した精巧な切手なんてできっこありません。

 ところが、ガンビアに先立ち切手発行が決まっていたヘリゴランドでは、ベルリンの帝国印刷会社が30ポンド弱で切手製造を受注していました。このため、植民地省はロンドンのデラルー社に相談を持ちかけましたが、デラルー社は、ヘリゴランドの切手は偽造対策がなにも施されていないことを指摘。同様のスタイルで作られた旧サルディニア切手を示して、「この切手はその後、多くの偽造が横行し困ったことになりましたよ(だから、こんな切手はおやめなさい)」という趣旨の返答を送っています。そのうえで、「その値段ならこの程度のものしかできませんよ」ということで、シルエットをエンボス(型押し)をしただけの切手制作の見積もりを提出しました。デラルー社としては、植民地省側が相場というものを理解し、まともなビジネスの話を持ってくることを期待していたと思われます。

 ところが、デラルー社の案に相違し、植民地省はヘリゴランドと同様の切手製造を同社に発注。このため、同社はやむなく、茶色に女王の肖像などを型押ししただけの切手を製造することになりました。

 こうして1869年3月18日に発行されたガンビア最初の切手は、刷色とエンボスの組み合わせがカメオのブローチのように見えることから、現在では、“カメオ・エンボス”ないしは“ガンビア・カメオ”の名で収集家に親しまれています。まぁ、切手のことを“紙の宝石”と称することもありますから、ガンビアのカメオというのもそれなりに魅力的なネーミングではありますな。

 お知らせ
 7月1日付で福村出版から刊行予定の『韓国現代史:切手でたどる60年』は、すでに本として出来上がったとの連絡が出版元からメールで入りました。が、いかんせん、ルーマニア滞在中で実物を確認できませんので、詳細は、あさって7月2日に帰国した後で、ご紹介します。

 もう一度切手を集めてみたくなったら 
 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。
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