郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
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 岩手ゆかりの高山植物
 きょう(14日)午前8時43分ごろ、東北地方で強い地震がありました。気象庁によると震源地は岩手県内陸南部、震源の深さは約10キロ、地震の規模を示すマグニチュードは7.0と推定されるそうです。被災者の皆様には心よりお見舞い申し上げます。

 さて、お見舞いにはお花、ということで、震源地の岩手県がらみの花の切手ということでこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ナンブイヌナズナ

 これは、1985年2月28日、高山植物シリーズの第4集として発行された「ナンブイヌナズナ」の切手です。

 ナンブイヌナズナはアブラナ科の多年草で、北海道の夕張山、戸鳶別岳と岩手県の早池峰山など、蛇紋岩地帯の高山の小石の多い場所に生育しています。丈は10センほどで、根茎をよく分枝させ密生します。6−7月頃、茎の先にレモンイエローの花を穂のようなかたちでつけ、茎には毛が多いのが特徴です。

 学問的な意味で、ナンブナズナを発見したのは、ロシアの植物学者カール・ヨハン・マクシモビッチで、彼により、Draba japonicaとの学名が付けられました。

 マクシモビッチは、“東亜植物学の父”と呼ばれる人物で、アムール川地方や沿海州などの植物を調査。1860年には函館に来日し、箱館山および近辺の植物を採取して日本産の植物を採集・命名しました。1864年に帰国した後は、帝政ロシアの帝国植物園学術部長を務めています。

 ところで、マクシモビッチは、彼の下働きをしていた須川長之助(岩手県紫波町出身)にも植物の採集整理の技術を教えました。須川は、マクシモビッチの帰国後、幕末維新の混乱期にあった日本国内の採集旅行を続け、その押し葉標本を多数ロシアに送りましたが、そのうちの一つで新種として彼の名前がつけられたのが、おなじく、高山植物シリーズの第4集に取り上げられたチョウノスケソウ(下の画像)です。

チョウノスケソウ

 チョウノスケソウはバラ科の草木状小型常緑性低木で、本州中部以北や北海道の高山の岩場や崩壊地などに生えています。枝は地を這うようにして伸び、葉は広い楕円形で裏側に白い毛が入った特徴あるもので、7−8月に8枚前後の花弁を持った直径3センチほどの白い花を咲かせます。
 
 なお、今回ご紹介の切手を含む高山植物シリーズについては、拙著『近代美術・特殊鳥類の時代』で解説しておりますので、機会がありましたら、ご覧いただけると幸いです。

 もう一度切手を集めてみたくなったら 
 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。
この記事に対するコメント
記事とは関係ないけど、
毎日ブログを更新しているだけでも凄いと思ってますが、今日の地震を予知していたみたいに、素早く岩手のネタが出てくるのにびっくりでした。
【2008/06/14 16:23】 URL | isaac #- [ 編集]

 コメントありがとうございます
 isaac様
 今回の岩手の話は、たまたま、見つけただけで、いつもこう上手くいくとは限らないのが頭の痛いところです。
【2008/06/18 04:38】 URL | 内藤陽介 #- [ 編集]


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プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

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