郵便学者・内藤陽介のブログ
 切手というモノを、ちょっと違った角度から眺めてみると、あなたの知的好奇心をくすぐる新たな発見がイロイロあるのです。そんな切手の面白さを綴っていこうと思っています。
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 星条旗と自由の女神
 今日はいわずと知れたアメリカの独立記念日です。というわけで、新刊の拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』の中から、アメリカがらみのストレートな1枚として、こんなモノを持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

 国連軍感謝シリーズ(アメリカ)

 これは、朝鮮戦争中の1951年9月15日、韓国が国連軍参加各国に感謝して発行した“国連軍感謝シリーズ”の1枚で、自由の女神像を中心に太極旗と星条旗が並べられています。

 “国連軍感謝シリーズ”は、1951年9月15日と同年10月25日の2回に分けて、国連軍参加21ヵ国の国旗と太極旗を並べて発行したもので、両国国旗の間には、今回ご紹介しているモノのように自由の女神を配したものと、国連マークと鳩を配したものの2パターンがあります。また、“イタリア“に関しては、当初、誤って旧王制時代の国旗を取り上げた切手を発行してしまったため、1952年2月10日に共和国の国旗を取り上げたものも改めて発行されました。この結果、シリーズ全体の構成は、(21+1)×2=44種類という勘定になっています。

 1950年6月25日に北朝鮮・朝鮮人民軍の奇襲攻撃により朝鮮戦争が始まると、国連安全保障理事会は北朝鮮の南侵を侵略行為と規定し、北朝鮮に対して38度線以北への撤兵を要求します。しかし、朝鮮人民軍はこの安保理決議を無視してさらに南侵を続け、6月28日にはソウルを占領してしまいました。

 このため、アメリカ大統領・トルーマンは、極東海・空軍に対して、38度線以南の朝鮮人民軍への攻撃を指令。国連安保理も、「北朝鮮の侵攻を撃退するため、加盟国は韓国が必要とする軍事援助を与える」との決議を採択して、アメリカの軍事介入を追認しました。

 その後、7月7日になって、国連安保理は北朝鮮の何侵を食い止めるべく、国連軍の創設を決議し、その司令官の任命をトルーマンに委任。これを受けて、翌8日、マッカーサーが国連軍司令官に就任しています。

 これら一連の安保理決議は、当時、ソ連が欠席した安保理(ソ連は、中華人民共和国を中国の正統政府として国連への代表権を与えるように主張し、それが否決されたことに抗議して安保理への出席を拒否していました)で採択されたため、後に、いわゆる“進歩的知識人”たちは、国連軍の創設は国際世論を反映したものではないと批判する余地を残すことになったとされています。

 しかし、当時の国連加盟59ヵ国のうち、国連軍の派遣に賛成したのは52ヵ国と圧倒的多数を占めていました。また、アメリカ以外にも、英連邦5ヵ国を含む総計21ヵ国(この中には、病院船のみ派遣のデンマークや当時は国連未加盟で赤十字のみ派遣したイタリアも含まれる)が兵員を派遣していたことを考えると、国連軍の派遣は、やはり、当時の国際世論を反映したものとみなすのが自然といえるでしょう。

 今回ご紹介の“国連軍感謝シリーズ”は、そうした国連軍参加各国に感謝の意を表するために発行され、国連軍の兵士等に記念品として配布されました。このため、最大の兵員が派遣されたアメリカを取り上げた切手が各5万枚の発行になっているのに対して、デンマークやインド、イタリア(新旧両国旗とも)、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェーといった、小規模参加の国の分は各1万枚の発行というバラつきがあります。

 なお、新刊の拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』では、朝鮮戦争の具体的な経緯のみならず、戦後の韓米関係史の重要なポイントに関しても、その全体像が俯瞰できるよう、さまざまな項目を設けています。機会がありましたら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。

 おしらせ
 あす7月5日、東京・池袋で開催の切手市場にて、午前中・11:30ごろまで、同書の刊行を記念して即売・サイン会を行います。入場は無料ですので、よろしかったら、ぜひ、遊びに来てください。

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この記事に対するコメント

北朝鮮の悪逆非道振りには空いた口が塞がりません。しかし、他者への感謝の念があったなんて、このころの韓国は今よりマトモな国だったんですね。
気のせいでなければ、郵趣界も結構進歩的知識人が幅を利かせている(いた?)ように思います。趣味の世界に政治は関係ないと言う人もいますが、そういう人に限ってイタい発言(日本は北朝鮮と仲良くできるようにもっと努力すべし、とか)をブログに書いちゃったりしています。
内藤先生のように集めたマテリアルから歴史を読み取るのではなく、逆に切手が発するメッセージにまんまと洗脳されちゃってるんですね。
(以上、すみません、不適切だったら削除してください)
【2008/07/04 11:58】 URL | プるプるゼリーちゃん #- [ 編集]

 コメントありがとうございます
 プるプるゼリーちゃん様

 すっかり亀レスになってしまってすみません。

 さて、

≫逆に切手が発するメッセージにまんまと洗脳されちゃってるんですね。

 ということは、プロパガンダの媒体としては出来が良かったということなんでしょうね。褒めてあげないといけないかも(笑)
【2008/07/19 11:19】 URL | 内藤陽介 #- [ 編集]


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プロフィール

内藤陽介 (ないとう・ようすけ)

Author:内藤陽介 (ないとう・ようすけ)
 1967年、東京都生。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。切手の博物館・副館長。切手などの郵便資料から、国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し、研究・著作活動を続けている。
 主著:<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵趣出版、現在、第6巻まで刊行)、『北朝鮮事典』、(竹内書店新社)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『切手と戦争』(新潮新書)、『反米の世界史』(講談社現代新書)、『皇室切手』(平凡社)、『これが戦争だ!』(ちくま新書)、『満洲切手』(角川選書)、『香港歴史漫郵記』(大修館書店)、『タイ三都周郵記』(彩流社)ほか著書多数。最新作は『韓国現代史:切手でたどる60年』(福村出版)

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