内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 試験問題の解説(2008年7月)-1
2008-08-01 Fri 15:13
 僕の本業はモノ書きですが、そのほかに、現在、都内の大学で週に何度か、パートタイム講師をしています。講義の題目は学校によってさまざまですが、基本的には“切手”から歴史や社会を読み解くという話をしています。 そのうち、拙著『タイ三都周郵記』をテキストにした「宗教学」の授業と、「中東郵便学」と題する授業の前期試験を本日(8月1日)行いましたので、これから1週間かけて、毎日1問ずつ、試験問題の解説をしてみたいと思います。しばし、お付き合いください。

 まず最初は、「宗教学」の試験のうち、「この切手(画像はクリックで拡大されます)に押されている消印の地名について説明せよ」という問題を取り上げてみましょう。

 ラーマ5世・バンコク消し
 
 これは、1883年に発行されたタイ最初の切手(1アット)で、バンコクを意味する“クルンテープ”の消印が押されています。

 1767年、ビルマの侵略によってアユタヤ王朝は滅亡。混乱の中、アユタヤの武将、タークシンはビルマの軍の包囲をかいくぐってタイ東南部のラヨーンに脱出。ここから反撃を開始し、同年10月、チャオプラヤー川西岸にあったトンブリー(現在のバンコクの王宮エリアの対岸)の要塞を奪還してビルマ軍を撃退し、トンブリーを都としたうえで、翌1768年にトンブリー王として即位しました。その後、混乱の中で四分五裂に陥っていた国内の統一に乗り出し、約3年で旧アユタヤ朝の版図を回復。さらに、みずからマレー諸国やカンボジアを服属させたほか、部下のトードワンならびにブンマーの兄弟らを遠征させて北方のチェンマイやメコン川岸のラオス諸国を属国としています。

 ところが、1781年、宮廷クーデターが発生。タークシンは逮捕・処刑され、カンボジア遠征中だったトードワン(チャオプラヤー・チャクリーの称号を持っていた)が国王として即位し、現在まで続くラタナコーシン王朝(チャクリー王朝)が始まります。

 新国王は、アユタヤ王朝の理想に沿った国家建設に着手し、タークシン時代の都があったトンブリーの対岸に、アユタヤの理想に沿った新たな王都を建設。その建設に際して、国王はこの土地に“クルンテープ・マハーナコーン・ボーウォーン・ラタナコーシン・マヒンタラーユタヤー・マハーディロクポップ・ノッパラッタナ・ラーチャターニー・ブリーロム・ウドム・ラーチャニウェート・マハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカティッティヤ・ウィッサヌカムプラシット”との頌詞を奉りました。その意味は、「インドラ神がウィッサヌカム神に命じてお作りになった、神が権化としてお住みになる、多くの大宮殿を持ち、九宝のように楽しい王の都、最高・偉大な地、インドラ神の戦争のない平和な、インドラ神の卓越した宝玉のような、偉大な天使の都」となります。

 このうち、“クルンテープ・マハーナコーン・ボーウォーン・ラタナコーシン”は、日本語でいう“インドラ神の卓越した宝石のような、偉大な天使の都”に相当していますが、王宮のある地域をラタナコーシン地区といい、現王朝をラタナコーシン王朝と呼ぶのはここに由来しています。ちなみに、ここでいう“宝玉”はワット・プラケオ(エメラルド寺院)の本尊のことで、その意味では、ワット・プラケオこそバンコクの中心であるといっても良いかもしれません。

 なお、現在でも僕たち外国人はタイの首都を“オリーブの村”に由来するバンコクで呼ぶのが一般的ですが、タイでのバンコク都の行政上の公式な略称は“クルンテープ・マハナーコーン”(大いなる都市・神の都)で、切手の消印の文字も“クルンテープ”となっています。

 試験問題の解答としては、①切手の消印がバンコクのものであることが書かれているか、②消印の表記が“クルンテープ”となっていることが書かれているか、③その意味や由来についてきちんと説明できているか、といった点がポイントになります。

 * 昨日(31日)は、このブログがヤフーの“みんなのアンテナ”で紹介されたため、1万3000を超えるPVがありまして(通常は400前後)、一挙に37万アクセスを突破してしまいました。“拍手”も1日で42個も頂戴し、ありがとうございました。今後とも、よろしくお付き合いください。

 トーク・イベントのご案内
 明日・明後日(8月2・3日)、東京・大手町のていぱーくで開催のサマーペックス会場内にて、拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』の刊行を記念したトーク・イベントを行います。2日は14:00から、いわゆる“竹島切手“についての話題を中心に、3日は14:30から、韓国切手に見る日本時代の“遺産”についての話題を中心に、お話しする予定です。サマーペックスのHPにアクセスしていただくと、無料の招待チケットをプリントアウトしていただくことができます。当日は、会場ならではの特典もご用意しておりますので、よろしかったら、ぜひ、遊びに来てください。

 もう一度切手を集めてみたくなったら 
 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。
スポンサーサイト

別窓 | タイ:ラーマ5世時代 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< 試験問題の解説(2008年7月)-2 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  ウリジナルの典型>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/