内藤陽介 Yosuke NAITO
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 カシミールの切手
2008-07-29 Tue 19:48
 インドとパキスタンの双方が領有権を主張しているカシミール地方で、昨日(28日)から今日(29日)にかけ、両国軍が12時間以上にわたり衝突。一部報道によると、2003年の停戦合意以降、最悪となる死者(パキスタン側4人、インド側1人)が発生した模様です。というわけで、今日はこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 カシミールの切手

 これは、1866年にジャム・カシミールで発行された1/2アンナ切手です。独立以前のインドでは、英領インド帝国の切手は別に、各地の藩王国では独自の切手が発行されていたケースがあります。ジャンムー・カシミールもその一例で、この切手はランヒール・シンの時代に発行されたものです。

 1846年、イギリスは、現在のカシミール地方を含む広大なギルギットやラダック地方を含む広範な領土を治めていたシーク教徒の藩王(マハラジャ)と戦い、これを撃破しました。戦後、イギリスは、このときの戦いで自分たちに協力したジャンムー地方の藩王に土地を売却。これが、藩王国としてのジャムー・カシミールのルーツとなります。  

 それから1世紀後の1947年8月、英領インド帝国は解体され、インドとパキスタン(当時は、現在のパキスタンに相当する西パキスタンと、現在のバングラデッシュに相当する東パキスタンから構成されていた)が分離・独立すると、各地の藩王はインドとパキスタンのどちらに帰属するかを自分の意志で決めることができましたが、その際、カシミールの藩王は両国とは別に独立することを企図していました。

 これに対して、住民の70%がムスリムであったという事情もあって、パキスタンはカシミールが自国に帰属するのは当然と考えており、藩王に決断を迫ります。しかし、色よい返事が得られなかったため、1947年10月、ムスリムの山岳部族をカシミールに侵入させます。このため、藩王はインド帰属の文書調印と引き換えに、インド軍の支援を仰ぎ、カシミールの帰属をめぐる第1次印パ戦争が勃発しました。

 戦争は1949年1月、国連の仲介で停戦となり、カシミールは、インド寄りの3分の2をインド領「ジャンムー・カシミール州」、パキスタン寄りの3分の1をパキスタン領「アーザード・カシミール州」(北部地区)として分割されましたが、その後も、カシミールの帰属をめぐる両国の対立が続いていることは周知のとおりです。

 もっとも、インド・パキスタンの両国とも、本音ではカシミール問題は現状維持のままがベストと考えているともいわれています。その背景としては、カシミール問題の存在が、巨額の軍事支出を正当化する最大の根拠となっていることに加え、国民の不満が高まった場合にガス抜きの手段として有効な材料となっていることなどが指摘されています。この解釈が正しいとすると、今回の両国の紛争も、一種の“なれあい”のようなものと見ることができるのかもしれません。
 
 ただし、そうはいっても、両国ともに、中央の思惑とは別に、ひょんなことから事態が急展開するということもありえない話ではありません。現に、カシミールの停戦ラインをめぐる緊張は今年春以降、急速に高まっており、5月以降、少なくとも4回の交戦が起きているわけで、ちょっと気になるところではあります。

 トーク・イベントのご案内
 8月2・3日(土・日)に東京・大手町のていぱーくで開催のサマーペックス会場内にて、拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』の刊行を記念したトーク・イベントを行います。2日は14:00から、いわゆる“竹島切手“についての話題を中心に、3日は14:30から、韓国切手に見る日本時代の“遺産”についての話題を中心に、お話しする予定です。サマーペックスのHPにアクセスしていただくと、無料の招待チケットをプリントアウトしていただくことができます。当日は、会場ならではの特典もご用意しておりますので、よろしかったら、ぜひ、遊びに来てください。

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この記事のコメント
#1283
はじめまして!また、遊びに来ますね。
2008-11-20 Thu 20:10 | URL | ミカン #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 ミカン様
 こちらこそはじめまして。これからもよろしくお付き合いください。
2008-11-29 Sat 22:34 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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