内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 男か女か
2008-08-14 Thu 12:30
 北京からは連日、日本人のメダル獲得のニュースが届き喜ばしい限りですが、それに連動して、このブログのメダル獲得競技シリーズも第4弾です。昨日の午後から今日の午前中までの日本人選手の獲得メダルは、柔道女子70キロ級の上野雅恵が五輪2連覇の金、フェンシング男子フルーレの太田雄貴が日本人としてこの種目初の銀、競泳男子200メートル平泳ぎの北島康介が2大会連続の2種目連覇となる金、という結果ですが、ここはやはり初ものということで、この切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 東京五輪募金(フェンシング)

 これは、1962年10月10日、東京オリンピックの資金を集めるための寄付金つき切手(第3次)の1枚として発行されたフェンシングの切手です。

 日本でフェンシングの切手が発行されたのは、1959年10月の第14回国体の記念切手が最初のことで、この切手は日本のフェンシング切手としては第2号ということになります。ただし、切手の制作に際しては、第14回国体の記念切手の制作時に撮影された資料写真が使われました。切手のモデルとなったのは慶応義塾大学の女子選手です。注意深く切手を見ると、マスクの後ろから長い髪が出ているので女性であることがわかるのですが、素人がパッと見た限りでは男女どちらか瞬時に判断するのは難しいんじゃないでしょうか。

 ところで、この切手が発行された当時は、東京オリンピックを控えた好景気の中で、空前の切手ブームが日本全体を覆っていました。このため、この切手に関しても、値上がりを見越した業者筋による買占めがあいつぎ、多くの局では発行初日に切手は完売となっています。

 こうした状況のなかで、日本郵趣協会(以下、郵趣協会)の機関誌『郵趣』は、切手発行後の1962年12月号で「記念切手はナゼ買えない? 制限発行をみんなで打ち破ろう」と題する特集を組み、日本の経済成長率や各種消費財の延びから推計して、記念・特殊切手の発行枚数は平均1400万組(この切手の実際の発行数は500万組)が妥当であるとの提案し、それに賛同する各界著名人の声を掲載しています。

 さらに、『郵趣』1963年1月号の巻頭には、「全郵普の買占めを許すな!! 五輪切手の配給数5分の1を独占」と題する記事が掲載され、波紋を呼びます。

 記事によると、通常、切手普及課は、1000万枚程度発行される記念切手の場合、郵趣協会に1万2000組(このほか、郵趣協会では各局に手配して、合計2万組を確保していたという)、全日本郵便切手普及協会(全郵普)に1万組弱となっていました。このため、400万組の発行となった第1次の募金切手については、郵趣協会への切手普及課からの割当は、通常よりも少ない1万組とされました。

 ところが、全郵普に対する割当量は、通常よりも減らされるどころか、大幅に増やされて8万組にも上っています。東京中央局への配給が40万組ですから、実に、その2割が全郵普に回された勘定です。

 それでも、この全郵普への配給分が市場に放出されていれば良かったのですが、『郵趣』によると、全郵普は、郵政省の関係者が切手を横流しして個人的な利益を得るために、切手をストックとして抱え込んでおり、「新橋のガード下のTというキャバレーで、切手係の某が頭文字だけでよばれて大金を使って遊んでいる」事実を挙げ、募金切手をめぐる全郵普のやり方には「利権と汚職の臭いがプンプンしています」とのことです。

 いずれにせよ、募金切手の品薄状態は深刻で市価も暴騰しています。たとえば、第3次の募金切手が発行されてまもなくの業者間の取引では、発行されたばかりの切手3種のシートには、一時、1750円(郵便局の窓口売価は、寄付金分を入れても3種シートで600円)の値がつけられたとの報告もあったほどで、当時の『読売新聞』朝刊には、「切手業者への優先横流しを摘発:東京中郵普及課の慣行を読売暴露」と題する記事も掲載されたほどです。

 もっとも、それだけ人気を集めた五輪の募金切手ですが、日本の切手マーケットの規模からすると、500万組の発行でも決して少なくなかったというのが実情でした。このため、多くの切手が未使用のまま退蔵され続けた結果、現在では、未使用の切手には額面相当の価値しかなく、換金しようとすれば手数料分を差し引かれて額面以下にしかならないのが現実ですから、郵便に使うのがベストでしょう。

 ただし、この時代の記念切手に関しては、ほとんどが未使用で退蔵された結果、発行当時の消印が押されている使用済みは、かえって希少価値が出てそれなりの値段で取引されていますので、押し入れの中などに、この時代の記念切手が貼られたはがきや封筒が眠っていたら、捨ててしまわず、大事に保管されるなり、ヤフオクあたりで処分されることをお勧めします。

 なお、そうした東京オリンピック前後の切手バブルの状況については、拙著『切手バブルの時代』でも詳しく取り上げておりますので、機会がありましたら、ご一読いただけると幸いです。(アマゾンでは古書として高値が付いていますが、発売元にはまだ在庫がありますので、定価でお求めになれます)

 もう一度切手を集めてみたくなったら 
 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。
スポンサーサイト

別窓 | 日本:昭和・1961~1966 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< 大韓民国60年 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  体操切手(吊輪)>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/