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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 『反米の世界史』予告編(5)
2005-06-10 Fri 01:07
 アジアがらみのネタが続きましたから、今日は毛色の変わったところで、南米キューバのカバー(封筒)をご紹介します。
 
キューバ・プロパガンダ

 このカバーは、1959年12月、キューバのサンチャゴ・デ・クーバからアメリカ・オハイオ州宛に差し出されました。1959年といえば、カストロの革命が成就しバティスタ政権が打倒された年です。

 バティスタ政権下のキューバは、中南米の独裁政権にありがちな腐敗と汚職に満ち溢れていました。カストロの革命は、独裁政権下でのあまりにも不平等な社会システムや極端な富の偏在を是正することを目的として始まったもので、当初は、必ずしも社会主義政権の樹立を目指したものではありませんでした。

 しかし、1959年5月、革命政府が、小作人への土地分与を目的とした土地改革と不正蓄財の没収を実施すると、アメリカは猛反発します。バティスタ政権下では、アメリカ系の資本が政府と結びついて巨額の利益を上げており、カストロの改革は、そのトラの尾を踏む結果となったからです。このため、革命政権の方向性を見極めようとしていたアメリカは、カストロの革命を“アカ”と認定し、経済制裁や空爆などを行い、革命を頓挫させることを目論むようになりました。

 さて、そうした背景事情を頭に入れた上で、カバーに貼られている横長で緑色のラベルにご注目ください。

 ラベルには、次のように書かれています。

 我々の革命は共産主義者(によるもの)ではない。
 我々の革命は人道主義者(によるもの)である。
 キューバ人はただ、教育の権利、労働の権利、不安なく食べる権利、平和・正義・自由の権利を望むだけである。

 当時のキューバ人たちは、このようなラベルを外国宛の郵便物に貼って、自分たちの革命に対する国際社会、なかでもアメリカ国民の理解を得ようとしたのでした。郵便物が宛先に届くまでの間に多くの人の手を経ることに注目し、郵便物そのものをメディアとして活用しようとしたのです。

 しかし、キューバの革命を赤色革命であると信じて疑わないアメリカは、カストロ個人の暗殺計画を含め、革命政権の転覆を画策し続けます。そして、その結果、カストロは“敵の敵”であるソ連と急速に接近していくことになり、それがまた、アメリカとの対立を激化させていくという悪循環に陥っていくのです。

 6月16日に刊行予定の『反米の世界史』(講談社現代新書)では、そうしたキューバとアメリカの関係についても、切手や郵便物を通じて歴史的にたどっていきます。そして、キューバ危機がもたらした“反米勢力”の亀裂についても、当時の共産圏諸国のさまざまな切手を分析することで明らかにしようとしました。

 是非、ご一読いただきますよう、よろしくお願いいたします。
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