内藤陽介 Yosuke NAITO
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 アフガニスタンの農村
2008-08-28 Thu 16:55
 アフガニスタン東部ジャララバード近郊で武装勢力に拉致された日本人・農業ボランティアの伊藤和也さんが、昨日(27日)、遺体で発見されました。というわけで、およそ5年にわたり、乾いたアフガンの大地に水と緑を与えてきた伊藤さんのご冥福を謹んでお祈りするとともに、哀悼の意を表するため、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 アフガン・化学肥料

 これは、アフガニスタンがソ連軍侵攻時の左翼政権の支配下にあった1983年、パキスタンのペシャワルあてに差し出された書留便です。左翼政権時代の航空書簡には、アフガニスタンの風景や人々の写真を余白にあしらったものが何種類か発行されていますが、これもその一種で、化学肥料を使った農業の様子が取り上げられています。航空書簡を発行した左翼政権としては、自分たちのもたらした社会主義的政策により、農村でも化学肥料が使われるようになり、収穫が増加していると主張したかったのでしょう。

 もともとアフガニスタンは決して農業に適した国ではなかったのですが、1970年代半ばには食糧の自給が達成され、綿花栽培も盛んに行われていました。

 1978年4月、ソ連の支援を受けたアフガニスタン人民民主党(共産党)による反政府クーデタ(4月革命)が発生。同年12月、人民民主党の党首で革命評議会議長兼首相のヌール・ムハンマド・タラキーがモスクワを訪問してソ連=アフガニスタン友好善隣協力条約を締結し、アフガニスタンは完全にソ連の勢力圏内に組み込まれることになりました。

 ところで、4月革命の結果、1747年以来のパシュトゥン人支配体制は終結し、パシュトゥン人、タジク人、ウズベク人、ハザラ人のアフガニスタン主要4民族の参加する政治体制が樹立されることになりますが、人民民主党の指導部は、長年にわたってアフガニスタンの支配層を構成してきたパシュトゥン人のドッラーニー族ではなく、ギルザイ族の出身者で構成されていた。それゆえ、従来は民族的に傍流であった勢力がヘゲモニーを握り、旧支配層の粛清に躍起になっているという構図は、複雑で保守的な部族社会から構成される地方において、新政権への嫌悪感を抜きがたいものとすることになります。もちろん、イスラムの信仰に基づく伝統的なアフガニスタン社会では、共産主義(=無神論)が悪魔の思想として嫌悪されていることはいうまでもありません。

 そうした新政権が、“土地改革”と称して、部族の族長を地主ないしは反動派と決め付けて彼らの土地を強制的に接収し、勝手に他の人々に分配していったことで農村での不満が爆発。1978年10月以降、各地でムスリムの抵抗運動が頻発し、翌1979年3月、ヘラートでイスラム原理主義者による大規模な武装デモが展開され、5000人もの死者が発生したことで、アフガニスタン全土は実質的な内戦に突入していきます。

 このため、1979年12月、ソ連はソ連=アフガニスタン友好善隣協力条約の内乱条項(アフガニスタンで内乱やクーデターが発生し、政府が危機的な状況になった場合には、政府の要請がなくてもソ連軍がアフガニスタンの秩序回復のため、アフガニスタンに軍事介入できるという条項)に基づき、アフガニスタンに軍事進攻を行い、これに対抗するムジャーヒディーン(イスラム戦士)の反ソ闘争が展開されます。その後、ソ連軍は撤退し、左翼政権は崩壊すると、今度は、それまで反左翼連合を形成していたムジャーヒディーン諸派の内紛が勃発。いったんはタリバンがアフガニスタンの大半を征圧したものの、911同時多発テロ事件に絡んでアメリカがタリバン政権の攻撃に踏み切り、カルザイ政権がつくられますが、同政権は首都とその周辺しか掌握できず、アフガニスタンは再び軍閥割拠の混迷状態に陥っていることは広く知れられている通りです。

 今回、犠牲となった伊藤さんは、長年の戦乱で荒廃したアフガニスタンの農業の復興を支援するために現地で活動し、地元の人たちの信頼を得ていたわけですが、その彼を外国人だからというだけの理由で殺害してしまうような連中が、はたして、一般のアフガニスタン国民の支持を得られるのかどうか、大いに疑問です。われわれ外国人はアフガニスタンの復興支援をサポートすることはできるかもしれませんが、何よりもまず、彼ら自身が自国の復興のためには何が必要なのか、冷静に考え、しかるべき環境を整える努力をしてもらわないと、どうしようもありません。

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