内藤陽介 Yosuke NAITO
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 スパイに注意せよ!
2008-08-29 Fri 16:14
 脱北者を装って韓国に侵入し、軍関係者に近づいて情報収集を行っていた北朝鮮の女スパイが摘発されました。というわけで、今日はこんな1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 防諜と勝共の月

 これは、1971年3月、韓国で発行された“防諜(スパイ防止)と勝共(反共産主義)の月”のキャンペーン切手で、共産主義者たちの国際スパイ活動をクモの巣で表現し、それを打ち破る松明が描かれています。韓国側としては、北朝鮮国家の存在を大っぴらに認めるわけにはいかないので、切手上の地図では、朝鮮半島はすべて非共産圏の黄色になっていますが、いまも昔も、韓国にとって最も警戒すべきは北朝鮮のスパイであるわけで、“防諜と勝共”の最大の敵が切手に書き込まれていないのは違和感がないわけではありません。

 ちなみに、韓国では、翌1972年5月にも“防諜と勝共の月”のキャンペーン切手が発行されています。1971年と1972年で“防諜と勝共の月”が異なっているのは、おそらく、このキャンペーンが毎年決まった月に行われるものというよりも、その時々の政治的・社会的状況に応じて、適宜、政府が設定していたためなのでしょう。

 1967年、大統領として再選を果たした朴正熙は、1969年10月、李承晩独裁の反省から3選を禁じていた憲法を改正し、3選に向けて動き出します。

 さて、大統領選挙の日程は1971年4月27日に設定されましたが、この選挙の政策上の争点は安保論争にありました。

 論争の発端は、1970年10月16日、野党・新民党の大統領候補に指名された金大中が、候補者としての初の記者会見の席上、①郷土予備軍の廃止、②労使共同委員会の設置、③非政治的な南北交流、④朝鮮半島の4大国共同安全保障案、を打ち出したことにあります。

 このうちの最大の争点は、④の四大国共同安全保障案で、金大中は、まず、米・ソ・日・中の4大国の共同合意によって、朝鮮半島の戦争を抑制することを主張。その後の選挙戦の過程で、南北間の人道的・文化的交流の推進を公約として掲げていくことになります。

 すでに1970年8月15日、現職大統領の朴は、①北朝鮮側が挑発と武力による共産化の野望を捨てることを条件に、南北の人為的障壁を段階的に除去する、②北朝鮮が国連の権威と権能を認めれば国連で同席することに反対しない、③北朝鮮は韓国と善意の競争をすべきである、とする8・15宣言を発し、従来の韓国の対北朝鮮政策からすると、相当、柔軟な姿勢を示していましたが、金大中の提案は、さらに北朝鮮に対して融和的な姿勢を示したもので、当時、その実現の可能性とは別に、多くの国民の関心を集めるものとなりました。

 これに対して、与党側は「韓国と敵対関係にある中共・ソ連等を含む4大国に国家の安全保障を委託するということは国の基礎を危うくするものであり、発案者の真意を疑わざるをえない」との批判を展開。それを補強するかのように、選挙戦終盤の1971年3月を“防諜と勝共の月”とし、その初日にあたる1日にそのキャンペーン切手を発行したというわけです。

 それにしても、朴正熙時代の強圧的な政府が良いとは言いませんが、北朝鮮国家の本質は、その当時からほとんど変わっていないわけで、その意味では、今回の女スパイ事件も、韓国側の緊張感の欠如が一因と言ったら言い過ぎでしょうかねぇ。

 なお、今回ご紹介の切手が発行された当時の時代背景などについては、拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』でもいろいろとご説明しておりますので、よろしかったら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。

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この記事のコメント
#1222
この切手、ハングルを読まなければ、
「インターネットは世界を覆う」と解釈できてしまいますね。
2008-08-31 Sun 11:07 | URL | muromav #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
#1223
日本もこのような切手を発行すべきである。日本の左傾化現象はこれ以上看過できない。
2008-09-01 Mon 10:34 | URL | ダイナマイト九州 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 皆様、コメントありがとうございます。

・muromav様
 なるほど、そういう風にも見えますね。クモもスパイダーマンの影響で、ネガティブ・イメージは薄れているようですし。

・ダイナマイト九州様
 まぁ、日本は民主主義国家で言論の自由を保障していますから、露骨に反共をいうことを掲げた切手を出すのは難しいでしょうが、日本の伝統的な文化なり精神なりをきちんと表現することで、自然な祖国愛をはぐくむような切手は出してもらいたいですね。
2008-09-13 Sat 00:31 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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