内藤陽介 Yosuke NAITO
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 I have a dream から45年
2008-08-30 Sat 10:47
 アメリカの民主党大会は、昨日(29日)、大統領候補に正式に指名されたバラク・オバマの受諾演説で幕を閉じました。なんでも、昨日はマーチン・ルーサー・キングが人種を超えた社会を訴える“I have a dream.”の歴史的演説を行った日から45周年の記念日だったそうで、そういうことなら、というわけでこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 キング牧師

 これは、1979年1月13日に“ブラック・ヘリテージ”シリーズの1枚として発行されたマーチン・ルーサー・キングJr牧師の切手です。アメリカでは、前年の1978年から、歴史に名を残した偉大なアフリカ系アメリカ人(黒人)たちを顕彰するため、毎年、“ブラック・ヘリテージ”(直訳すれば、黒人の遺産、ということになりましょうか)と題する切手を発行していますが、これはその2回目の切手になります。

 南北戦争中の1863年に発せられた奴隷解放宣言により、黒人奴隷は制度的には消滅しましたが、南部の旧奴隷州では、奴隷解放宣言の後も黒人差別は解消されず、19世紀末になると、交通機関やレストラン、学校などで白人と黒人を分離する人種分離政策が進められ、黒人は居住地域も制限されていました。

 このため、全米黒人地位向上協会は、こうした差別の撤廃を求めて活動し、第2次世界大戦では多数の黒人が志願して米兵として戦い、犠牲になっています。しかし、それにもかかわらず、南部では黒人に対する差別は改められませんでした。

 こうした状況の中で、1955年12月、アラバマ州モンゴメリーで、バスで白人に席を譲らなかった黒人女性のローザ・パークスが州法違反で逮捕された事件に抗議し、キング牧師らが一年におよんでバス・ボイコット運動を展開。翌1956年に連邦最高裁がバス車内での人種分離を違憲とする判決を下すと、これを機に、黒人をはじめとする有色人種がアメリカ市民(公民)として法律上の平等な地位を求める運動が全米に拡大することになります。

 これが、いわゆる公民権運動で、日本では、指導者であるキング牧師のイメージが強いせいか、黒人の反差別運動と同一視されることも少なくないのですが、実際には、アメリカ先住民(いわゆるアメリカ・インディアン)やアジア系の人々の運動も含まれているほか、彼らに賛同した白人も個人としてさまざまな活動に参加しており、一口に公民権運動といってもその内容は実に多種多様なものとなっています。

 その後、キング牧師は大統領選挙戦さなかの1960年10月19日、ジョージア州アトランタのリッチ百貨店の食堂の白人専用席に座り、立ち退かなかった容疑で逮捕されていますが、このとき、共和党候補で現職副大統領のニクソンが事態を静観していたのに対して、ケネディ陣営は牧師の釈放に向けて積極的に動いており、そのことが、ボビーは、黒人票を取り込むうえで絶大な効果を発揮したことは広く知られています。

 切手で肖像の下に描かれているのは、1963年8月、人種差別撤廃を訴えて行われた20万人のワシントン大行進のイメージで、有名な“I have a dream.”演説はこのときに行われました。

 リンカーン記念堂の前で行われた演説は、「私には夢がある(I have a dream) ある日、ジョージアのレッドヒルの上で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟愛というテーブルをともにすることを。 私には夢がある。ある日、不正と抑圧という熱で苦しんでいる不毛の州、ミシシッピーでさえ、自由と正義というオアシスに変わることを。 私には夢がある。私の4人の子ども達がある日、肌の色ではなく人物の内容によって判断される国に住むことを…」といった具合に、“I have a dream”のフレーズを何度も繰り返す印象的なもので、J.F.ケネディの就任演説と並んで、20世紀のアメリカを代表する名演説として知られています。

 今回の選挙戦において、オバマの指名受諾演説が“I have a dream”演説にゆかりの日に行われたのは、もちろん、アメリカの2大政党として初の黒人大統領候補という点を最大限に強調するためのもので、オバマの演説も「一人一人が夢を追いながら一つのアメリカの家族として団結することは可能だ」として、人種や党派を超えた「一つのアメリカ」を訴えるなど、キング牧師の“I have a dream”演説の本歌取りのようなスタイルとなっています。

 なお、9月10日に中公新書ラクレの1冊として刊行予定の拙著『大統領になりそこなった男たち』では、ロバート・ケネディを中心に、公民権運動とベトナム戦争に翻弄された1960年代のアメリカについても書いてみましたので、刊行の暁には、ぜひ、お手にとってご覧いただけると幸いです。

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