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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ラ・マルセイエーズ
2008-10-17 Fri 09:31
 14日にパリで行われたサッカーのフランス対チュニジアの親善試合(3-1で仏勝利)で、試合前の「ラ・マルセイエーズ」の斉唱に対し、チュニジアのサポーターから口笛などが吹かれたことに対して、フランスのバシュロナルカン保健・青少年・スポーツ相が、サッカーなどの国際スポーツ試合でフランスの国歌斉唱が口笛などよって侮辱された場合、「即刻、試合を中止する」と発表しました。というわけで、きょうはこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

 ラ・マルセイエーズ

 これは、第1次大戦中の1917年、フランスが発行した戦災孤児救済のための寄附金つき切手の1種で、パリの凱旋門に飾られている彫刻“ラ・マルセイエーズ“が取り上げられています。このセットの5フラン(+寄付金5フラン)の切手は、青と黒の2色刷りで、デザイン的にはそちらの方がずっと格好良いのですが、はるかに“良いお値段”なので、僕の懐具合ではなかなか手が出ません。なお、寄付金が高額すぎたためか、1922年には寄附金の金額を下げる加刷が施された切手も発行されているのですが、こちらの方が無加刷のものよりもカタログ評価は低いので、ニセ加刷が存在しえないという点でも興味深い切手です。

 ナポレオンが凱旋門の建設を始めたのは1806年のことでしたが、その際、メインのアーチを飾る彫刻の依頼を受けたのはフランソワ・リュードでした。

 1792年、リュードはプロイセンのフランス侵攻を食い止めた義勇軍を記念する群像彫刻を制作しました。その上部には擬人化された“自由”が翼をつけて兵士たちを鼓舞し、裸のまま、あるいは古代ローマの甲冑姿を身につけた義勇軍の兵士たちが突撃する場面が表現されています。この彫刻はフランス人の愛国心を大いに掻き立てたことから、同じく1792年に作られた国歌「ラ・マルセイエーズ」の名で知られるようになりました。

 凱旋門は、ナポレオンの存命中には完成せず、彼の死とともに第一帝政時代の“忌まわしい過去”を連想させるものとして建設が一時中止されます。しかし、1830年にルイ・フィリップの7月王制がスタートすると工事は再開され、1836年に完成。“ラ・マルセイエーズ”の彫刻も、凱旋門に飾られることになったというわけです。

 さて、フランスの刑法では国旗や国歌を集団で侮辱した場合、6カ月の禁固刑および7500ユーロ(約100万円)の罰金刑に処せられるとの規定がしっかりあります。実際、今回の事件を受けて、スタジアムを管轄するパリ郊外のボビニー検察庁は、アリヨマリ内相の指令を受け、「国歌侮辱」で捜査を開始しており、もはや、単なる“悪ふざけ”では済まなくなっています。

 さて、日本では、入学式や卒業式で生徒や保護者に国歌斉唱での不起立を呼びかける公立学校の教師がいて、処分された(といっても、たいていは懲戒処分の中では一番軽い“戒告”ですが)という話が、ときどき、新聞沙汰になります。

 個人の好みとして「君が代」が嫌いだという人がいてもそれは否定されるべきではないのでしょうが、自ら「君が代」を歌い、生徒にも歌わせることが仕事の一部になっている職業(=公立学校の教師)を自分の意志で選んだ人間が、その職務をまっとうせず、妨害行動を取れば、相応のペナルティを受けるのは当然のことです。

 国歌を侮辱するという行為は、国によっては、逮捕・投獄の危険もあるわけですから、彼らだって、それなりのリスクを背負って「君が代」反対を唱えているんでしょう。きっと。だったら、彼らの名誉のためにも、戒告をなんてちんけな処分ではなく、堂々と懲戒免職にしてあげるくらいの“温情”があってもいいように思うんですがねぇ。


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 10月17日(金) 在日本大韓民国民団記者懇談会
  「韓国現代史:切手でたどる60年」(福村出版)をめぐって
  18:30~ 於・在日本大韓民国民団中央会館8階会議室
  (地図などはこちらをご覧ください)

 激動の韓国現代史は、切手や郵便物にもさまざまな痕跡を残しています。切手や郵便物を通じて国家と歴史、時代や社会を読み解く“郵便学者”内藤陽介が、今年7月に刊行した『韓国現代史:切手でたどる60年』を題材に、切手というモノから見える韓国現代史のリアルな諸断面についてお話しします。参加は無料で、どなたでもご参加いただけます。なお、会の終了後、懇親会(会費5000円)を実施予定。


 10月18日(土)  「大統領になりそこなった男たち」刊行記念トーク
  18:00~ 於・日本郵便文化振興機構(東京・用賀)
  資料代として500円(ワイン・ソフトドリンク・軽食含む)を申し受けます。あしからずご了承ください。
  詳しくは、主催者の告知ページをご覧ください。


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この記事のコメント
#1240 私だけ?
こういう内容の記事を見て切手収集家がみんな過激な考えを持っているように思われると正直言って困る。何で、ここまで書けるのだろうか?こう思うのは、わたしだけ?
2008-10-17 Fri 23:29 | URL | 切手収集家 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
#1241 温情
懲戒免職ではなく死刑のほうがより"温情"ですよ
2008-10-18 Sat 02:00 | URL | sm #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
#1242 言論の自由
 公立学校の教師のしごとが生徒にも歌わせることが仕事の一部になっている職業かどうかはべつとして、こうした意見がまかり通る日本という国は、一応言論の自由が保障されているのかな?
2008-10-18 Sat 08:17 | URL | IT #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 皆様、コメントありがとうございます。

・切手収集家様
 そんなに過激なことを言っているとは思えないのですがねぇ。まぁ、雑誌でも“正論”は過激だと言われればそれまでですが。

・sm様
 死刑にしてしまうということは、彼らを“英雄”に祭り上げることになりますからねぇ。

・IT様
 日本の言論の自由度は、世界的に見て、非常に高いと思いことは間違いないでしょうね。

 なお、コメントを一度、間違って削除してしまい、復元しました。問題があれば、ご指摘ください。(特に問題がなければ、ご連絡いただく必要はありません)
2008-10-19 Sun 09:40 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
#1247  期待
 まあ、こういった意見を好む人も世の中にいるので、意見としてはすばらしいのかもしれない。また、個人のブログなので何を言うかも自由。ただし、切手の面白さと何の関係があるのかがわからないので、関係のない人が見れば、引いてしまうように思うのですが。最後の部分のコメントについては、違和感があります。おそらくこのブログの購読者の多くは賛否は別として、切手のことよりこういう意見を期待しているように思うのですが。
2008-10-19 Sun 22:14 | URL | 切手収集家 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 切手収集家様

 まぁ、期待にこたえるのも物書きの務めですから…。
2008-11-04 Tue 21:33 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
自分が君が代大好き国歌主義者だからって、偏向記事を書くのはどうかと思います。
大半の読者はフランス=国歌尊重 日本=国歌に関心がない というように感じるのではないでしょうか。
確かにフランスで国歌侮辱は犯罪ですが、個人が歌わないことに関しては完全に自由です。公教育の場での斉唱は無いですし、国際試合で選手が国歌を歌わない自由も容認されています(サッカーで、国歌不斉唱を公言した選手がおり、あのジダンも共鳴したという話があるくらいです)
こういう対比を書かずに、日本の教師批判だけしても説得力がありません。

まあ国歌ごときで死刑とか言っている愛国厨は納得するかもしれませんが
2008-11-17 Mon 19:40 | URL | あ #cMwuxlEM[ 内容変更] | ∧top | under∨
 あ様
 どこが偏向記事なのか、僕にはまったく理解できないのですが、僕自身は、個人としての教師が日の丸に反対し、君が代を歌わないということまで否定しているわけではありませんし、その旨、本文中にははっきりと書いています。ただ、そうした教師が、生徒には君が代を歌わせるという、学校側の指導方針に反して、子どもに国歌斉唱時の不起立を事実上強要しているのは、明らかに、おかしなことであり、許容すべきではないというのが今回の文章の主旨です。ご本人が嫌いだからといって、生徒にもそうした考えを押し付けたり、ましてや、学校行事の円滑な進行を妨げるようなことは、国旗や国歌がどうのこうのという以前に、社会人として失格ではないでしょうか。

 たとえば、民間企業で明らかに組織の方針に反する行動をとり、自分の部下にも自分と同じ行動をとるように要求したり、イベントなどの進行を妨害すれば、おとがめなしで済むはずはありません。公務員としての公立学校の教師だけが、どうして、特別扱いをされなければならないのか、僕には大いに疑問です。

 公教育の場での国歌斉唱がおかしいというのであれば、その廃止を求めて署名活動を行うなり、そうした公約を掲げて選挙に打って出て一定以上の議席を獲得するなりすればよいわけですし、国歌という概念はよいが、楽曲としての「君が代」がけしからんというのなら、「君が代」に代わる国歌を提案するのが筋というものでしょう。“悪法もまた法”である以上、従わなければなりません。しかし、法である以上、その改正の余地はあるわけで、そのために必要な手続きを経ずに、日の丸・君が代に反対する教師たちの主張には、全く説得力を感じません。
2008-11-19 Wed 21:29 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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