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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 満洲・東北切手展
2008-11-01 Sat 00:05
 きょうからいよいよ<JAPEX>が始まります。今回の目玉は、なんといっても、、リニューアルされた旧水原コレクションをはじめ、日本国内はもとより、台湾・香港から満洲・東北地域に関する超一流のコレクションが一堂に会する満洲・東北切手展です。僕も、「満洲国の歴史」という作品でその末席を汚していますが、そのなかから、“前史”として展示したこんなカバーをご紹介しましょう。

 張作霖カバー

 これは、1928年3月17日、ハルビンから差し出されたカバーで、張作霖の陸海軍大元帥就任記念の切手が合計2角(20分)相当貼られています。

 袁世凱亡き後の中国は、各地に軍閥が割拠し四分五裂状態になっていました。このため、広東で成立した国民政府は、軍閥を打倒し、国家の統一を実現するため、国民革命と称して統一戦争を発動。北上していきます。

 これに対して、国民革命軍という共通の敵を前に、軍閥諸派は大同団結し、1927年6月、奉天派の張作霖を大元帥に推戴して対抗します。今回ご紹介したカバーの切手は、張作霖が大元帥に就任したことを記念して、翌年の張の誕生日である1928年3月1日に発行されたものです。

 しばしば誤解されることですが、当時、中国の正統政権として国際的に認知されていたのは、軍閥支配下の北京政府であり、孫文系の南方政権ではありません。この切手には、国民革命を呼号する蒋介石ではなく、北京政府を率いる張作霖こそが、中華民国の国家元首であることを、あらためて内外にアピールする意図が込められているのは言うまでもありません。

 なお、当時の中国では統一された通貨が使われておらず、地域によっては、大きな為替差が存在したため、切手にも使用地域を限定する加刷が施されたものがありますが、この切手の“吉黒貼用”とは、この切手の使用地域が吉黒(直接には吉林省と黒竜江省の意味だが、東北部全般を指す)に限定されていたことを示すものです。

 こうして、軍閥の北京政府は国民革命を迎え撃つ姿勢を明らかにしましたが、勢いに勝る国民革命軍の前に各地の軍閥は相次いで敗北。済南が陥落するにいたって、ついに張も敗北を覚悟し、北京を退去して本拠地の奉天への撤退を決意します。しかし、まさにその途上にあった6月4日、張は関東軍大佐の河本大作によって移動途中の列車ごと爆殺されてしまうのです。

 当時、日本政府は張作霖を満洲に撤退させ、蒋介石による中国本土の支配を認める代わりに、日露戦争以来の特殊権益が集中する満州については張が日本の権益を保護するのが良いと考えていたのですが、現実に国民革命軍が迫りくる中で、張が“寝返る”ことを恐れた関東軍は張を抹殺したのです。

 結局、張の爆殺後、国民革命軍は北京に入城し、(名目的なものであるにせよ)中華民国の統一が達せられました。その結果、国民革命軍から見れば敵将である張の肖像を描いた切手は、1928年6月末で使用禁止になります。

 一方、満州では、張作霖の死後、息子の張学良が東三省保安総司令官となり、実権を掌握。1928年12月、関東州と満鉄付属地を除く満洲全域に、それまで用いてきた満州五色旗を下げ、国民党の青天白日旗を一斉に掲げさせ、東三省の主席と連名で国民党に服従することを発表しました。いわゆる“満洲易幟”です。

 父親を日本人に殺された張学良としては、排日と満蒙の権益回収を目指す蒋介石の南京政府に合流するのは当然の選択でしたが、日露戦争の多大な犠牲の上に満蒙の“特殊権益”を獲得した日本にしてみれば、張学良の行動は従来の経緯を無視した暴挙としか映りませんでした。そうした危機感が、権益を維持するためには満蒙を中国から切り離さなくてはならないという焦慮をうみ、彼らを満州事変へと駆り立てていくことになります。

 なお、2006年に刊行の拙著『満洲切手』では、今回ご紹介の内容も含め、切手や郵便物から見た満洲・東北の歴史をまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。


 イベントのご案内

 11月1日(土)-3日(月・祝) 全国切手展<JAPEX>

 ことしも、東京・池袋のサンシャインシティ文化会館と目白の切手の博物館の2ヶ所で開催します。今年の目玉は、何といっても“満洲・東北切手展”ですが、トーク関係での僕の出番は、以下のとおりです。

 11月1日(土)
  13:00 “満洲・東北切手展”特別シンポジウム(池袋会場)
  16:00 特別対談「満洲における写真、絵葉書、郵趣」(池袋会場)
 11月2日(日)
  13:00 “戦後日本切手展”ギャラリー・トーク(目白会場)
  15:00 中公新書ラクレ presents 『大統領になりそこなった男たち』刊行記念トーク(池袋会場)
 11月3日(月・祝)
  11:00 “戦後日本切手展”ギャラリー・トーク(目白会場)

 トークそのものの参加費は無料ですが、<JAPEX>への入場料として、両会場共通・3日間有効のチケット(500円)が必要となります。あしからずご了承ください。皆様のお越しを心よりお待ち申しております。


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 アメリカ史に燦然と輝く偉大な「敗者たち」の物語    
 『大統領になりそこなった男たち』 中公新書ラクレ(本体定価760円+税)
 
 出馬しなかった「合衆国生みの親」、リンカーンに敗れた男、第二次世界大戦の英雄、兄と同じく銃弾に倒れた男……。ひとりのアメリカ大統領が誕生するまでには、落選者の累々たる屍が築かれる。そのなかから、切手に描かれて、アメリカ史の教科書に載るほどの功績をあげた8人を選び、彼らの生涯を追った「偉大な敗者たち」の物語。本書は、敗者の側からみることで、もう一つのアメリカの姿を明らかにした、異色の歴史ノンフィクション。好評発売中!

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