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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 幻の金正日暗殺計画
2008-12-19 Fri 12:21
 朝鮮中央通信によると、きのう(18日)、北朝鮮の国家安全保衛部スポークスマンは、金正日労働党総書記を標的にしたテロ計画を摘発し、暗殺を未然に阻止したと発表したそうです。というわけで、今日はこんな1枚をもってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 朝鮮人民軍創建60周年慶祝閲兵式

 これは、1993年7月、北朝鮮が発行した“祖国解放戦争(北朝鮮における朝鮮戦争の呼称)勝利40周年”の記念切手で、前年の1992年4月25日、朝鮮人民軍の創建60周年を記念して平壌中心部で行われた大規模軍事パレードの写真が取り上げられています。

 北朝鮮の国軍に相当する朝鮮人民軍が実際に創立されたのは1948年2月8日ですが、1978年以降、北朝鮮当局は、朝鮮人民軍のルーツは抗日闘争の時期の“朝鮮人民革命軍”であると主張し、朝鮮人民革命軍が結成された(と北朝鮮が主張する)1932年4月25日を朝鮮人民軍創建の日としています。切手の写真の閲兵式もこの日付から起算して60周年の記念日に行われたもので、当日は朝鮮人民軍創建60周年の記念切手も発行されました。

 さて、式典は1992年4月25日午前10時に始まった。まず、閲兵式開始の報告を受け、4月21日に元帥称号を授与されたばかりの金正日が「英雄的朝鮮人民軍将兵諸君に栄光あれ!」と応答。その後、徒歩部隊の行進に続き、各種車両部隊が金日成・金正日父子の閲兵を受けています。なお、パレードに参加した陸戦車両の大半は、兵器図鑑などには掲載されていない“主体的な工夫”が施された国産兵器でした。

 ところで、このパレードの機会をとらえて、朝鮮人民軍副参謀総長だった安鐘鎬らは、首都保衛司令部戦車師団を動員して金日成・正日父子の暗殺とクーデターを計画しています。しかし、閲兵式の直前、人民武力部(国防省に相当)戦車教導指導局長の朴基西(金日成の従弟)が、首都保衛司令部戦車師団のパレード参加に異議を唱え、みずからの隷下の戦車師団を出動させるよう主張し、この主張が容れられたため、クーデター計画は未遂に終わりました。

 その後、計画は闇に葬られていましたが、1993年3月ごろ、旧ソ連時代の情報関係者筋から発覚し、計画に関与した将校はすべて逮捕・処刑されています。ちなみに、計画参加者は、全員、モスクワのフルンゼ総合軍事大学への留学経験のあるエリート将校だったため、事件はフルンゼ事件と呼ばれることもあります。

 ちなみに、この切手の発行の名目となった1993年7月の“祖国解放戦争勝利40周年”に際しては、金日成から金正日への権力世襲の総仕上げとして、「金正日最高司令官を最高主権者として推戴する大軍事パレード」も企画されています。

 ただし、こちらのパレードは、直前になって、急遽、軍事パレードではなく“平和的市民パレード”に変更されました。これは、当時の金正日がいわゆる“瀬戸際外交”を展開し、極東情勢が極度に緊張したことを懸念した金日成の指示によるものとされています。じっさい、パレード当日、主席壇上に姿を見せた金日成の両脇には、シアヌーク・カンボジア国王とアラファトPLO議長が並んでいましたが、これは、当時、国連・アメリカの意向を受けて和平推進路線を採っていた2人の指導者を招待することによって、金日成みずから国際社会への強調・和平の意思を明らかにしたものとして注目されました。

 なお、1994年7月に金日成が亡くなる直前の朝鮮半島の緊迫した情勢については、拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』でもいろいろと解説していますので、機会がありましたら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。


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