内藤陽介 Yosuke NAITO
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 キューバの米軍
2009-01-23 Fri 18:37
 アメリカのオバマ大統領が、就任早々の22日、キューバ島・グアンタナモ米海軍基地の収容所について、1年以内の閉鎖を命じる大統領令に署名しました。というわけで、キューバがらみのものとして、こんな切手を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

 キューバ・アメリカ軍政加刷

 これは、米西戦争中の1899年、アメリカ軍政下のキューバで発行された切手です。

 スペインの支配下にあったキューバでは、1895年4月、ホセ・マルティを指導者とする独立戦争が勃発。これに対して、アメリカ国内では、ハースト系およびピュリッツァー系の新聞社は、スペインの暴政をセンセーショナルに取り上げ、自由を求めて戦うキューバ人を救い、アメリカの権益(アメリカはキューバの砂糖農場に莫大な投資をしていました)を擁護するためにも、スペインを討つべしとの世論を誘導します。

 こうした状況の中で、1898年2月、ハバナ港に停泊中のアメリカの戦艦メイン号が爆発し、将兵ら266名が死亡。現在では、爆発はメイン号の内部機関のトラブルによるものとの説が有力ですが、ハースト系の新聞社は、事件をきっかけに、より強烈な反スペイン・キャンペーンを展開。キャンペーン報道に煽られたアメリカの国内世論は「メーン号を忘れるな」のスローガンとともに沸騰し、4月25日、アメリカは、ついに、スペインに対して宣戦を布告しました。米西戦争の勃発です。

 米西戦争は、キューバの独立闘争を支援することが大義名分でしたから、開戦にあたっては、戦後は独立派の革命政府を承認し、キューバを植民地化しないことを条件として(テラー付帯決議)、アメリカ議会はマッキンレー大統領に宣戦を承認していました。

 こうして、米軍は1898年6月にキューバ島に上陸し、スペイン軍を駆逐しましたが、参戦の大義名分であったキューバの独立は、同年10月、独立軍の頭越しに結ばれたパリ条約(アメリカとスペイン政府の和平条約)によって、米軍による軍政が開始されたことで、事実上、反故にされてしまいます。

 こうした状況の下、アメリカの軍政当局は、アメリカ本国の切手を持ち込んで、今回ご紹介するような“CUBA”の文字や現地通貨の額面などを加刷した切手を使用しはじめました。

 さらに1902年、キューバは“独立”を達成するが、これに先立つ憲法制定の過程で、アメリカは、キューバ制憲議会に対して、①キューバの独立が脅かされたり、アメリカ人の生命・財産が危険にさらされたりした場合にはアメリカは介入できる、②キューバは(アメリカ以外の)外国から資金を借りてはいけない、③キューバ政府は(アメリカ以外の)外国に軍事基地を提供したりしてはいけない、③キューバ政府はアメリカに軍事基地を提供する義務を負う、など8項目から付帯事項(提案した米議員の名前から、“プラット修正条項”と呼ばれている)を押し付けています。

 当然のことながら、キューバ側はこれに抵抗したが、アメリカの強硬な姿勢の前に、最終的に、プラット修正条項を無条件で受けいれざるをえず、キューバは実質的にアメリカの支配下に置かれ、砂糖やタバコなどの主要産品はアメリカ資本が独占するようになりました。

 今回、問題になったグアンタナモ米軍基地は、プラット修正条項に基づき、1903年の条約で、年2000ドルでアメリカが無期限租借することとなり、1934年の条約改正を経て、「主権を持つのはキューバだが、アメリカが完全な司法管轄、行政支配権を持つ」地域とされました。

 1959年の革命後、カストロ政権は当然のことながら基地の返還を求めましたが、アメリカはこれを拒否。このため、1964年以降、キューバ側は基地への給水を停止するとともに周辺に地雷を敷設しました。これに対してアメリカは海水の淡水化施設を建設し、基地の“自給自足”体制を確立して対抗。この結果、グアンタナモ基地周辺は地雷原で脱走が不可能な上に、マスメディアにも実態が見えない海外基地、さらにはキューバ国内でもアメリカ国内でもなく軍法のみが適用される治外法権区域として、収容所にはおあつらえ向きの条件が整うことになりました。2001年のアフガニスタン戦争以来、アルカーイダやタリバンなどイスラム過激派のテロリスト容疑者が収容されるようになったのは、こうした事情によるものです。

 さて、今回のオバマ政権の決定は、グアンタナモ基地内の収容所での相次ぐ拷問などの発覚によりブッシュ前政権下で傷ついたアメリカの威信回復を急ぎ、道徳的再生に取り組む姿勢を示したものと評価されていますが、そもそも、道義的云々と言い出したら、上述のような事情でキューバに米軍基地があることじたいが問題になるような気もするのですが…。


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