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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 試験問題の解説(2009年1月)-1
2009-01-30 Fri 15:26
 僕の本業はモノ書きですが、そのほかに、現在、都内の大学で週に何度か、パートタイム講師をしています。講義の題目は学校によってさまざまですが、基本的には“切手”から歴史や社会を読み解くという話をしています。 そのうち、「中東郵便学」と題する授業の前期試験を本日(1月30日)行いましたので、これから毎日1問ずつ、試験問題の解説をしてみたいと思います。しばし、お付き合いください。

 まず最初は、「この切手と消印(画像はクリックで拡大されます)について説明せよ」という問題を取り上げてみましょう。

 クネイトラ

 これは、1974年5月31日、シリア=イスラエル間の休戦協定が調印されたことを受けて、イスラエルの切手に両国の国境の街であるクネイトラの消印を押したものです。

 1973年10月の第4次中東戦争は、イスラエル敗北の既成事実を作った上で停戦協定を結び、1967年の第3次中東戦争で失った領土を回復することを目的として、エジプトのサダト主導の下、シリアもこれに加わって行われました。

 はたして、10月6日の開戦当初、イスラエル=シリア国境のゴラン高原では、シリア軍が快進撃を続け、アラブに対するイスラエルの不敗神話は崩壊します。ただし、エジプト・シリア両軍の優勢は長続きはせず、はやくも10月11日にはイスラエルはゴラン高原での大反攻を開始し、シリア領内に突入。さらに、シナイ半島方面でも、同月16日にはスエズ運河の逆渡河に成功し、形勢は逆転してしまいました。

 こうした事態を受けて、米ソ両国による停戦の調停が本格化し、10月22日の国連安保理において、関係諸国に対する停戦決議(決議第三三八号)が採択されます。さらに、12月22日、米ソ両国の主導により、ジュネーブで開催された中東和平会議の席上、キッシンジャーはスエズ運河周辺とゴラン高原でアラブ、イスラエル両軍の兵力を引き離すための協定締結に向けて合同委員会を設置することを提案。これを受けて、停戦協定の調印に向けて当事国の話し合いが開始され、1974年5月31日、シリアとイスラエルの停戦協定が調印されたというわけです。

 停戦協定は、シリア、イスラエル両国の兵力分離と国連監視下の緩衝地帯設置を決めていましたが、この緩衝地帯の設置により、第3次中東戦争の結果、イスラエルに占領されていたクネイトラはシリアに返還されることになりました。今回の切手は、クネイトラがシリアに返還された5月31日、すなわち、イスラエル領として最後の日に、イスラエルの切手を貼り、イスラエルの設置したクネイトラ局の消印を押したもので、イスラエルによるクネイトラ占領の終焉を記録するために作られました。

 試験の答案としては、イスラエルによるクネイトラ占領の最終日の消印であることを示したうえで、第4次中東戦争を発動したアラブ側の意図とその結果について、きちんとまとめられているかどうかがポイントとなります。


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